どこゆきカウントダウンー2020ー

2020年7月24日、東京オリンピック開会のファンファーレが鳴りわたるとき…には、《3.11》震災大津波からの復興を讃える高らかな大合唱が付いていてほしい。

「餌魚」と実名では呼ばれないサカナの哀しみ / それでも親しまれていはいる「メンハーデン」

-No.2487-
★2020年07月13日(月曜日)
★11.3.11フクシマから → 3413日
★延期…オリンピック東京まで → 376日
★旧暦5月23日
(月齢21.9、月出23:49、月没11:58)






◆なんじゃ、それ!?…

 「メンハーデン」という名の「餌魚」がいる…というのダ。

 お魚だい好き…でも、外語名には疎〔うと〕いボクは、「餌魚」の方に頭をめぐらせて考えた。
 「餌魚」と呼ばれるからには小魚、さればイワシ(鰯)の類いか…いや待て…あるいはニシン(鰊)の仲間だろうか。

 見当をつけて調べてみたら(やっぱり!)…ニシン科。
 この魚「メンハーデン」を初めて知った出典は、動物行動学者でアメリカ人道協会に所属するジョナサン・バルコムさんの著書『魚たちの愛すべき知的生活』(桃井緑美子訳、白揚社刊)

 本の内容は、書名で明らか。
 さらに第1章「誤解されている魚たち」で推察されるとおり、「もっと知ってよフィッシュ・ワールド」「魚たちに秘められた驚くべき能力」を語っている。
 その魚たち世界のゆたかな生態のあれこれ、詳しい話しは、これからも折々に本欄で紹介していくことになるだろう、と思う。
 
 この本で人道主義?(…というより生命愛主義!)の、ジョナサンは言う。
「名も知られぬ餌魚のうち最も特筆すべきは、おそらくあなたが見たことも聞いたこともないだろうし、ましてや食べたことなどはほぼまちがいなくない魚だ」と。
 しかも、さらに強調して「世界で獲れた魚の三分の一がそうだが、メンハーデンを人間は食べない」、とまで断言しているのだ。

 …すると…
 ぼくが、この魚の名を知らなかったのは、まぁ、言ってみればトウゼン。
 だって、著者みずからが住み暮らすアメリカでもほとんどの人は知らない、名も姿も、さらには鮮魚としての味わいさえも知られない…魚!?

  ……………

 日本にも、「餌魚」と呼ばれる存在の、たくさん獲れて安価な小魚なら、前述のとおりイワシ・ニシンなどがあって…しかし、このへんが彼吾の文化の違い、か。
 日本では、これらの「餌魚」だって、鮮魚でも美味しく賞味するのに。アメリカでは、よほどのことがないかぎり食卓とは無縁である、らしい。

 日本には、むかし「猫またぎ(=ネコも喰わない)」というコトバがあったけれども。ひょっとすると、アメリカには「犬もそっぽを向く」ような事情があるのやも知れない……

 その「大西洋にも太平洋にも生息する地味な魚」メンハーデンは、「体長約三〇センチ、よくある楕円形の体形、Y字型に分かれた尾びれ、白銀色のうろこ(鰓蓋の後ろに黒い斑点)、そして(プランクトン類を)濾過摂食する」、「図鑑に〝魚〟の代表として例示されるのにぴったりだ」と。

 そう言われて上掲写真を見れば、なるほど、ちょいとポッチャリ系の、脂のノリもよさそうな。三枚におろして、揚げるか炙るかしたら旨そうなお魚ちゃん。

 しからば、その生態は…
 人間に捕獲される数の多さから、アメリカでは「海で最も重要な魚」と呼ばれるほどの資源とされるのが、このメンハーデン。
 いうまでもなく、もとより海では、大型魚の餌になっている存在に違いなく。

 しかし、凄まじいばかりのその漁獲量、大西洋においては、なんと12億匹(2012年)という!
 そのため、翌年には漁獲量の上限が定められることになった結果、約25%(3億匹)ほど減った、とか。

 これほどに獲られるわけは、もちろん、(人間にとっての)有用性が高いから。
 メンハーデンは、その名の由来からして「アメリカ先住民の言葉で〝肥料〟を意味した」というほどだから、はじめからヒトの営みによってそのように宿命づけられていたことになり、なんとも痛ましい。

 (商業)用途をあげれば、主に魚油・固形物・魚粉に加工。
 乾燥させた魚体を圧搾して得られる魚油(油分が多い!)は、化粧品・リノリウム健康補助食品・潤滑油・マーガリン・石鹸・殺虫剤・塗料などに。
 粉砕された魚粉はペレット加工、主に工場飼育される家禽(ニワトリなど)や豚の餌、また、一部はペットフードや養殖魚の餌にもされる…と。
 つまり、ヒトの高度文明社会にとっては、じつに有用、きわめて便利。
 (ちなみに、メンハーデン油に含まれる脂肪の35%は不飽和脂肪酸で、うち80%以上がオメガ3だ!)
 名前や姿など関係ない…ということになる。

 メンハーデンで稼ぐ有名会社は、2010年現在でそのために、61隻の船と32機の観測用飛行機と、5ヶ所の生産設備を持っているそうな。
 (まさしく海を空っぽにしそうな勢い…)

  ……………

 なお
 この「餌魚」の話しは、本の最終7章「水を失った魚」に出てきたのだ、が。
 あとで索引を頼りに読みなおしてみると…
 こんな別の、驚きの事実もあらためて知ることになった(最初は気づかずにヨミとばしていたらしい)。

「魚のなかには、ある点で人間よりも聴力のすぐれたものがいる」
 コウモリの聴力の上限とされる超音波も感知できる魚として、メンハーデンが挙げられ。
「18万ヘルツ、これは人間の聴力の限界のはるか上」だと!
 (きっと、か弱い存在の海の小魚に、生きのこる術として備わった能力にチガイない!)

  ……………

 なおなお、ちなみに。
 命名の由来こそ詳〔つまび〕らかではないものの。
 たかが「餌魚」とは言え、日本の大衆魚イワシ(鰯)と同様、アメリカ庶民の人気者であった証拠に。
 この「メンハーデン」はアメリカ海軍の潜水艦名に採用されて、第二次世界大戦(太平洋戦争)にも参戦。
 戦後は、横須賀に配備されたこともある…という。

 日本だったら、潜水艦「イワシ」とか「ニシン」なんて名付けは、まず、ありえないし。
 これもアメリカという、不可思議な二重人格のお国ぶり、ということになるのだろうか……