どこゆきカウントダウンー2020ー

2020年7月24日、東京オリンピック開会のファンファーレが鳴りわたるとき…には、《3.11》震災大津波からの復興を讃える高らかな大合唱が付いていてほしい。

色も柄も派手やかな…サンゴ海の〝かぶきもの〟猛者/ モンハナシャコ

-No.2436
★2020年05月23日(土曜日)
★11.3.11フクシマから → 3362日
★延期…オリンピック東京まで → 427日
★旧暦4月1日、新月
(月齢0.4、月出04:50、月没19:12)





★シャコツメ★

 贔屓にしていた寿司屋で、〈つきだし〉にコロンと〈お遊び〉ふう、紡錘ツブツブの一品、酢の物で供されたことがあって…
(なんです、これ?)
 と訊ねる目に、大将も目顔で(まず召し上がれ)とこたえる…ので。

 食べてみるとコレが、小さいにもかかわらず、案外なほどの弾力…「筋肉」を感じさせ。
「シャコの爪の実(身)です」
 大将、すかさずスラリとタネを明かす。
 (ジツに〝身〟でありながら〝実〟でもあった!)

 聞けば、シャコの産地で下働きのおばちゃんたちが、セッセと鎌のようなカタチをした捕脚(爪)から、苦労して身(肉)をとりだし集めたものだ、という。
 拝みたくなるほどに芸の細かい、これぞまさに〝珍味〟であった。

 寿司ネタとしてのシャコの身も、ほどよい弾力をもつ、あっさりした味わいの、柔らかさが身上だけれど、この「爪の実」は、さらにその上をいって、真を打つものがある。

  ……………

 といっても、ぼくがシャコの生態、その真実を知ったのは、(もうしわけもない)かなり寿司ネタで喰ってしまってからのこと。

 それまでは、「シャコエビ」の別名からして、変わり種のエビの仲間ぐらにした思っていなかったし。市場などでその姿を見かけることがあっても、「ガサエビ」の俗称がお似合いくらいの、まことに(ガサツ)な認識でしかなかった。

 その不見識を、うちやぶってくれたときの映像、いまも印象強烈にのこっている。
 海底の岩陰からプイと飛び出したシャコが、いきなり蟹に襲いかかったのだが、その捕脚による攻撃たるや、掴みかかるどころではない、鋭いパンチを叩きこむ、凄まじく強力なもの。平たい蟹の甲羅をほとんど真っ二つに叩き割って中の身肉をむさぼり喰った。

 二枚貝なども同じ手で、ほとんどバリバリと捕食する。
 そればかりか、タコやイカ、ハタなど天敵からの防御や、対抗威嚇の武器にもなる。その打撃で、飼育漕のガラスにヒビが入ることもあるくらいだ…と。これはナレーションがつぶやく……

 その後には東京湾の漁師から、「な~にしろ勢いよく暴れるうえに棘が多いんだもの、うっかり掴めば手に刺さるさ」と、コボされた。

 いっぽう、すし職人に言わせれば、「活きが身上で死ねばサッサと身が痩せるからね、新鮮なうちに茹でちゃわなきゃいけない」と、すこぶるつきの気っ風が好まれる。

 そういう、ちょいと異色系の生きものがシャコ。

  ……………

 仲間うちには、もっとスゲェやつがいる、という。
 名をモンハナシャコ。モンハナは「紋華」であろう、派手ないでたちで、種として奇抜、しかもそれぞれの個体によっても、鮮やかな青緑・赤など色柄ともに異なるという、派手な隈どり風も、見るからに傾奇(かぶき=歌舞伎)者。

 カラフルなのは、お魚ちゃんたちと同じく南洋系の特徴で、主に東南アジア・インド洋・ミクロネシア・台湾に棲息というから、ニッポンにはいないのかと思ったら、相模湾より南には分布するそうな。
 地球温暖化の波にのって縄張り拡張中なのかも知れない。

 浅い海のサンゴ礁や砂底に穴を掘って隠れ潜み、貝や蟹を好んで破壊&捕食する純肉食系の強者〔つわもの〕

 体長わずか15cmほど、ながら、その捕脚からくりだされるパンチのスピードは、海洋動物最速。およそ秒速80km(プロ・ボクサーの倍速)で、銃弾にも匹敵するそうな。
 まさしく「海のボクサー」で、その捕脚自体もしっかりグラブのかたちをしており、脱皮をくりかえす成長(寿命は5~6年とか)のたびに、この捕脚も再生するというのだから手に負えない。

 ついでに日本のシャコは、捕脚をカマキリの鎌のように使うのだ、が。
 モンハナシャコの場合は呆れたことに、ときと場合(魚を捕らえるときなど)によっては、この捕脚を同じように展開して鎌として使う術もこころえている、という。
 きわめつけの〝下手〔げて〕〟とするか、上手〔じょうて〕〟とするかも定かならぬ奴め!

 しかも性競暴、生まれついての喧嘩好き。
 天敵のタコや大型魚に対しても臆さず対抗し、多くの場合に撃退を勝ちとれば、仲間内での縄張り争いにも熱心という…サンゴの海に華麗に振る舞う敏捷猛者ぶり。

 実験で、水槽に鏡を入れたら、すぐに挑みかかって破砕した…そうな。
 オミソレしやした、大将!

 モンハナシャコは並はずれた視力(生物世界一)もすぐれた武器で、ヒトの10倍という10万色を識別して、なお、紫外線や赤外線はおろか、ほかの生物にはできない「円偏光(らせん状に回転しながら振動する光)」を見ることもできれば。
 なおかつ、突出して自在に回転する目の視界は360度…と。
 参りました、もうケッコー!

 泳ぎも、なかなかどうして達者で早いし。
 掘った巣穴をときどきに、サンゴの残骸砂で補強する知性もそなえているのデス。
 
 ぼくたちヒトは、やっと最近になっての研究成果から、じぶんたちが地球でもっとも優れているとはかぎらないらしい…ことを知ったわけだけれども。
 なかでも、地球表面積の70%強を占める海洋の生物界には、まだまだ多くの未知の謎が秘められているらしく、興味はつきまセヌ。

 そして、もうひとつ。 
 自然のドキュメント(記録)映像を見るたびに、いつも、ものたりなく思うこと…はたしてソヤツ喰えるものなりや否や(そして旨いか不味いか)の解説。
 このモンハナシャコについても、ふれられることはなかった…のだけれど。

 ぼくの感性は「旨いはずダ」と、舌なめずりせんばかり。

 ふつうのシャコだって、卵を抱いたメスの値は高いのだ…けれど。
 モンハナシャコのメスは1ヶ月の間、なにも喰わずに(パンチも繰り出すことなく)卵を暖めるというから、その筋肉質きっと、強靭なうちに優しさを秘めた、きわめつきの美味にちがいない!