-No.2134-
★2018年07月26日(金曜日)
★11.3.11フクシマから → 3060日
★ オリンピックTOKYOまで → 364日
★旧暦6月24日
(月齢23.7、月出....:....、月没12:59)
◆東京駅丸ノ内口
…といえば、いまもレトロなムードをただよわせるレンガ造りの駅舎。
いうまでもない、鉄道が花形の交通機関であった頃の、もじどおり首都東京の玄関口であった。
その丸ノ内でも「南口」といえば、東京遊覧「はとバス」の出発地(および終了地)として、ぼくの記憶にはインプットされている。
想えば幾たび、遥々と地方から上京する人たちを案内して、ここを訪れたことだろう。
そこは、いってみれば、むかしの上野駅を想わせるようなムードを漂わせており、在京者にとってはナゼか…ちと気恥ずかしいような気分の場所でもあった。
…しかし…
その人気は、いまも大したもの。
いちど〝冷やかし半分〟に乗って見たら、ナゼかソワソワしっぱなしだったことを、気恥ずかしく思い出す。
……………
その「はとバス」発着所の、すぐ目の前が「東京中央郵便局」だった。
…いや…
ほんとは順序が逆で、東京中央郵便局のすぐ目の前に「はとバス」の発着所があった…わけだけれど。
個々人の記憶レベルというのは、じつに、とりとめもなくさまざまもので…。
ぼくは、1度か2度は、所用で中央郵便局を訪れたことがあったけれど、そこは街の「郵便局」とはケタ違いの威厳に充ち充ちており、ぼくの連想は警視庁か裁判所へとフッとぶことになって。
以来、縁のない場所。
したがって、「丸ノ内南口」といえば、もう1も2もなく「はとバス」発着所なのであった。
……………
とまれ…そんな「丸の内」が、変貌を遂げはじめる、きっかけは1991年。
それまであった東京都庁舎が新宿副都心に移転したときからである。
旧都庁舎の跡地には、1997年に東京国際フォーラムができている。
10年ほど前から行われてきた丸の内地区の再開発にも、一区切りがついた。
そんな一連の動きのなかで、ぼくは、いつのまにか、東京中央郵便局もどこかへ引越ししたものとばかり、勝手に思いきめてしまっていた。
「はとバス」発着所も、また同様であろう…と。
人も、すぐれて感覚的な生きものである、けれども、自然界から遠ざかる一方の現在は、ちと分別が雑駁になりすぎてしまったようだ。
視覚ひとつをとってみても、〈見る気がなければ見ていても見えない〉ありさまである。
もちろん、すべての知覚に、おなじことがいえる。
……………
先日、漫然と。
大判の「東京23区」区分地図帖を眺めていて、ふと、そのことに気がついて。
詫び状でも一筆したためるような気分で、丸ノ内南口へ出かけた。
東京中央郵便局の、建物はガラス張りのシャレた「JPタワー」になり、地下道でつながった地下鉄の東京駅からも直にアプローチできる。
いったん地上に出て確認すると、「はとバス」の発着所も元どおりの場所にあった。
「JPタワー」には、日本郵政が初めて展開するハイ・クオリティーの商業施設「KITTE(キッテ)」が2013年にオープン(同様の施設はその後、名古屋・福岡にもできている)。
〝つながり〟を感じさせるタワー内、7フロアには。
全国各地のご当地食品店や、モノづくりへのこだわりと美意識に重点を置く物販店、地域の味覚や地元自慢の飲食店など、粒よりのワクワク感を伝えるショップ&レストラン98店舗を揃える。
たとえば…
書店とティールームがドッキングした「BOOK&CAFE」もあれば、ぬくもりの想いをつたえる木製ギフトの「Hacoaダイレクトストア」といったお店もある。
いずれも、オシャレ……
そんななかに、(へぇ!)とサプライズ感たっぷりに存在するのが。
JPタワー学術文化総合ミュージアム「インターメディアテク」。日本郵政と東京大学総合研究博物館の協働による入館無料のアカデミック・エリア。
そこに展覧される〝博物類〟は、1877年(明治10)の開学以来、東大に蓄積されつづけてきた学術標本や研究資料、デザイン・技術など。およそありとあらゆる文化・成果の間に橋わたしを目指す「間メディア実験館」というわけだ。
おもしろいのは、そんなアカデミックな空間が、オシャレなわくわく空間につながって存在することで、フシギな高揚感をかもしだしている…ということ。
〈博物館〉というのは、ほんとは、(けっして黴臭いところなんかじゃなくて)こうあるのが自然なんだよね…と思わせてくれる。
……………
(これは人生マジックの一種だな)と、ぼくは思う。
東大に進んだ高校同期の顔ぶれのいくつかが、脳裡に泛んだ。
うっかりすると彼らも、これら博物類のほとんどに、接したり間近に見たりしたことは、なかったのかも知れない。
学術の府も、専門分野がちがったりすれば、まるで〈別世界〉なのであった、少なくともこれまでは……
「インターメディアテク」のマジック空間を、週末のタウン・ウォーカーたち、老若男女が興味深げにそぞろ歩いていた。