-No.2096-
★2018年06月18日(火曜日)
★11.3.11フクシマから → 3022日
★ オリンピックTOKYOまで → 402日
★旧暦5月16日
(月齢14.7、月出19:48、月没04:57)
◆台風一過…下風呂温泉の朝
ぼくたちは、六ケ所村を後に一路ひたすら、(津軽)〝海峡の湯処〟下風呂温泉を目指した。
青函トンネルが海峡を掘り抜け、国鉄の青函連絡船が姿を消してからは、本州と北海道を結ぶ海峡航路は民間フェリーの2つだけ。
ふだんなら、便数も多く便利な青森-函館便を利用。
下北半島を経由するときには、大間-函館便に身をあずける。
そうして、《11.3.11》東日本大震災・被災地東北、ぼくたち二人旅の訪問地に北海道伊達市(宮城県亘理町のいちご農家が移住して生産)が加わってからは、津軽海峡越えのルートが定番となり。
しかも、福島第一原発・爆発事故後の将来を考えるとき、六ケ所村と東通村と大間町3つの関連施設を立地させる下北半島は、避けて通ることができなくなった。
したがって、下風呂温泉も定宿地となり、このたびの宿「おおぎや旅館」もこれで2度目の投宿。
しかし…こんなに差し迫った状況での宿りは、さすがに、これまでになかった。
四国高知に上陸した台風は、いつものようにスピードをあげて日本海沿いに北上、今夜半あたりに最接近、通過するだろう予報であった。
強酸性硫黄泉、乳白に濁った湯に旅の汗を流し、サッシの小窓を小さく開けてみたら、海峡からの風がドッときた。港には、もちろん人影ひとつない。
海峡の宿の名物料理は、いうまでもないイカに、近年はアンコウ料理が加わり、いずれにしても、いうまでもない海の幸ばかり。
こんな状況にはあっても…いや…こんな状況なればこそ、あれこれ案じたところで、どうにもならない。
運を天にまかせて、酒を友に箸をとる。
旅人にとって、港町でなによりコワイのは船便の欠航だったけれど、これも心配したからどうなるものでもなかった。
布団に入ってから、いちど海峡側の窓から海を覗いて見たけれど。
ただ、烈しい雨脚が岸壁の街灯に浮き上がって強調されるばかり。
……………
翌早暁。
窓の外が、妙にシンと感じられて目が覚めた。
どうやら台風は、海峡の日本海側入口を掠めて過ぎ去ったとみえる。
明るむのを待って窓を開けると、海峡の空には、黒雲の帯の間から薄い陽ざしがのぞいていた。
- 状況はいちおう…台風一過 -
しかし
ふだんなら見られない光景は、外洋航路の大型船が、風除けで沖合に船足をやすめる姿。
岸から見たのではわからないけれども、沖の方はまだ波が荒れているらしく、港には漁船のうごきも人のうごきも、いっさいない。
念のため、大間の港に問いあわせてみる…が、やっぱりフェリーは休航中。
ぼくらが乗る予定だった午後便も出ない、という。
やむをえず、翌朝便に予約変更(同時に函館泊予定のホテルもキャンセル)して、宿を出る。
早朝便に乗るには、大間港に宿をとっておいた方がいい。
つまり、宿替えのメンドウはあるものの。
さて
きょう1日は、オヤスミだ!
◆尻屋崎の寒立馬たち
海峡の沖の大型船は、まだ動かない…けれども天気の快復傾向は明らかだった。
太平洋側、東の青空を目指して尻屋崎へ。
そのカタチから「斧」に譬えられる下北半島、その斧の頭部エッジと言えばいいのか。
ともあれ、左車窓にずっと津軽海峡を眺めて、50kmほどの好天潮風ドライブは〝爽快〟の一語に尽きる。
いうまでもない、寒立馬〔かんだちめ〕に逢いに行く。
寒立馬の名は、つよい風吹きつのる岬にふさわしく、風景としても天然記念物に値する…が。
野生馬ではなく南部馬系の農用馬で、ずんぐりした体型と短くがっしりした脚とが、そこはかとない〝郷愁〟を誘う。
草を食〔は〕む場所を選ぶ自由は馬たちにあるから、訪れる行楽客たちの方が馬を追うことになり、ときたまには<欠席>もあるが、それも<無断>であるところがワイルドだった。
きょうは、馬たちが道路に近く群れて、岬への車路をふさいでおり。
ぼくたちは<おウマ優先>とこころえ、車を路側に寄せて、風情を愉しむ。
その脇を、後から来た車が通りすぎ、馬たちを追い退けるようにして走り去る。
寒立馬も馬体は大きく、性格は優しいとはいえ、いわゆる〝馬力〟の持ち主である。
(なにしに来たのやら)と思いつつ、ぼくたちは、そのクソ度胸のよさにも呆れた。
尻屋崎からは、いつもより、いっそう濃い藍色の海の向こうに北海道、恵山岬の山影まではっきり見とおすことができた。
……………
ここ東通村には、しばらく南に走れば東京電力東通原発がある。
まだ建設中だった原発自体は、〝フクシマ〟のことがあって中断しているが、村には、新しくなった役場と交流センターや小学校など、電源立地交付金にうるおう様子が見られるのだ…けれども。
そのほかには、これといって見るべきものとてない。
それに、このたびは、どうも2~3日前から、旅中たよりのスマホの動作がオカシイ。
陸奥湾岸の半島中心地、むつ市に行けばサービス・ショップがあって、いまどきは大都会と同様のサービスやメンテナンスが受けられるので、カーナビにはそちらを目的地に指示。
むつ市街には、おどろくべきことに(市民の皆さんにはシツレイながら…)車の渋滞が見られ。
この半島内の原発に万が一のことがあれば、避難に難渋するにちがいないことは、前にも報告したとおり。
市内に抱える使用済み核燃料、中間貯蔵施設の運用をめぐる心配もつきない。
ただ、最近の町のうごき〔・・・〕には、ホッとこころ和むものもあって。
それは、いちご栽培。
ぼくも、じつは、ソレ(農業なら付加価値ハウス栽培)を待っていた。
ハウス栽培とはいえ、ほんらい涼気を好む作物のイチゴは、夏場に品不足する。
それが、ここ下北半島の気象条件では、逆に有利に働く。つまり、品薄になる夏場に出荷できるメリットが生かせる。
いま、下北では、むつ市を中心に、いちご栽培の機運が盛り上がりつつあるという。
キタイ、したい。