-No.2063-
★2018年05月16日(木曜日)
★11.3.11フクシマから → 2989日
★ オリンピックTOKYOまで → 435日
★旧暦4月12日
(月齢11.6、月出15:45、月没03:03)
※きょうは、七十二候の「竹笋生(タケノコが生えてくる頃)」。竹林があったら覗いてみましょうか! すでに八百屋の店頭には、南の方からのタケノコ便りあり、もうこっちでも出てきていい頃です。
左党(呑兵衛)であるボクは、菓子については無関心、こまかいことは言わない…かというと、なかなか、そうでない。
好みもあるし、じつをいえば、もともと酒と甘味には芯から親しみかようところがある。
「バウムクーヘン」
直訳すれば「木のケーキ」だけれど、いうまでもない「年輪に恋した菓子」。
はじめてこの菓子に出逢ったとき、ぼくの心臓はドクンとひとつ息を呑んだ。
菓子の名も知らないうちから、それは大きな切り株の年輪を連想させ……
そればかりか、この菓子をどう作るか、までを想像させたのは、バウムクーヘンが初めてだった。
後日、菓子職人がこれをつくるところを見たときには、吾が想像とのあまりの合致にビックリしたくらいだ。
ごく簡単にいってしまえば、それ専用の太めのバーに、生地を塗りかさねながらバーナーで焼き、薄い層の積み重ねを〝年輪〟らしく見せるところが職人技。
焼きあがった棒状の菓子を輪切りにして出来上がる。
ぼくの父が、むかし魚河岸があった頃からの日本橋、砂糖屋の末裔であることは前にも話した。
そのせいか「一流どこ」にヨワかった父は、けっこう当時のモボ(モダン・ボーイ)だったわけだが、食は和風、江戸好みであった。
わが家に洋風を吹き込んだのは、母方の叔父さん。
シェル石油(いまの昭和シェル石油)に勤務して、出張すればあちこちの名産を、ふだんは都心の名店品を土産に訪ねてきた。
かなり父への対抗心があったとみえる。
ぼくたち、ふだん和菓子系の姉弟は、この叔父さんから洋菓子のあれこれを知らされた。
代表的なのがモロゾフのチョコレートであり、ユーハイムのバウムクーヘンであった。
いまは、小分け個包装の製品がよろこばれているようだ、けれど。
バウムクーヘンの真髄は、輪切りの〝年輪〟をみずから切り分けて味わうことにある。
★第一次世界大戦の置土産★
そもそも、このバウムクーヘンを初めて訪日させることになったのが、ドイツのパティシェ(菓子職人)、カール・ユーハイムという人。
話しはふるく、19世紀初頭あたりまで遡る。
1919(大正8)年3月4日、広島物産陳列館(のちの〝原爆ドーム〟である)で開催された「俘虜製作品展覧会」で販売されたのが最初であり、これを記念して3月4日は「バウムクーヘンの日」。
*以下、すこし補足しておきます。
それまでドイツの租借地であった中国の青島(チンタオ)で、カールは洋菓子店を営んでいました。が、第一次世界大戦で青島は日本軍に占領され。カールは青島から日本へ、俘虜(捕虜)の一人として広島市の似島検疫所へ連行され、ここで終戦を迎えています*
カール・ユーハイムは戦後、紆余曲折を経て神戸で開業。
それからもなお、歴史の風浪にもてあそばれながらの紆余曲折があって、カールは第二次世界大戦終結直前に他界したが、社業は後世に引き継がれて現在にいたっている。
このあたりまでは、まぁ、ドイツ菓子「ユーハイム」の店の栞かなにかを読んだ記憶がある…が。
その「ユーハイム」の「バウムクーヘン」が、ことし100周年を迎えるとは、とんと気がつかないことだった。
世の中には、なにかと気くばりの部局や人士があるもので、そのスジから高校時代からの友人に取材が入ったという。
後日、彼から送られてきた新聞記事を見ると、上記のようなこと、100周年(と〝原爆ドーム〟)にまつわる回顧譚であった。
その友は、高知大学の名誉教授(ドイツ文学)であり、カフカの研究者だが、著書に『青島(チンタオ)から来た兵士たち-第一次大戦とドイツ兵俘虜の実像-』(2006年)がある。
……………
とまれ
ぼくの好きなケーキは、モンブランとバウムクーヘンである。
ほかは、どうでもいい、(子どもだましみたいなものだ)と思っている。
ところが、世の中わからないもので、この「バウムクーヘン」。
日本では、(〝年輪〟をかさねる)めでたい贈りものとして人気を博してきたけれど、本国のドイツではそれほど一般的な菓子ではなく、どちらかといえば珍しいくらいの存在だという。
この話しは、ぼくも大学では第二外国語がドイツ語必修であったことから、講師からそんな「じつは…」話しを聞いている。
そういわれてみれば、なるほど、「年輪をかたどった菓子」というのは日本人の感性にじつにフィットしやすいことに、思いいたるのだ……

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