-No.2019-
★2018年04月02日(火曜日)
★11.3.11フクシマから → 2945日
★ オリンピックTOKYOまで → 479日
★旧暦2月27日、新月へ4日
(月齢26.8、月出04:04、月没15:05)
海棲動物の世界では、しばらく前から優美で豪快な「ホエール・ウォッチング」がブーム。
これは…ワカル。
いっぽう、同じクジラの仲間でもマイルカ科に属するシャチの方は……
南米アルゼンチンのバルデス半島から、アシカの仲間オタリアを襲撃する「オルカアタック」。しかも、みずから陸に乗り上げ(座礁し)て海に帰れなくなるリスクをおかしてまで、浜辺に突進して捕食するという、獰猛な狩りスタイルの衝撃映像が世界じゅうに広まって、ジョーズのごとく怖れられる存在だった。
これも…ワカル。
ところが、ナニがきっかけかは知らない。
気がついたら、世界遺産「知床」の海(北方領土、国後島との間の根室海峡など)で、「シャチ・ウォッチ」がたいへんな人気になっている、という。
どうやら、ワイルドな世界を観る人間の目…かつての、捕食動物は獰猛なワル、対して捕食される動物の方はカワイソウな弱者という、偏ったものではなくなってきた、ことが根本にはあるらしい。
それは…ケッコウなことで、じつは捕食動物というのも、一般に思われているほどトクでもなければラクでもなく、むしろ極めてシビアな世界とさえ言える。
それと、シャチにはクジラ族に共通する社会性とか、コミュニケーションの細やかさ、好奇心のつよさなど、人間性にも通じる資質が備わっていることも大きい、のだろう。
①数頭から数十頭の群れ(ポッド)をつくり、あるいは血縁で家族を構成するなど、社会的に生活。子育てにも熱心だ(捕らえたオタリアを空中に放り上げる一見残酷なシーンもじつは子どもに狩りを教えるため…といわれる)。
②コミュニケーション用の「コール」音と、行動指針のエコー・ロケーション(反響定位)用「クリック」音という、高度な情報手段と観察好きな好奇心とをもつ。もちろん知能も高い。
③活発な行動力をもち、哺乳類で最速といわれる泳ぐ速さは時速60~70km。餌をもとめて1日に100km以上を移動することもある。
④おそらく、パンダに似た白と黒、クッキリハッキリ体色の妙も好まれる。そうして、なにしろデカい(マイルカ科の仲間では最大)。平均して体長は5~7m、体重は1,300~5,500kg。最大級のオスは体長10m・体重10㌧、巨大な背鰭は2mにも達する。そのデカさは、畏敬の念を抱かせるに充分すぎるほどだ。
⑤食性は肉食だが、魚類・頭足類から海鳥類、オタリア・アザラシ・イルカ・クジラなど海棲哺乳類からホッキョクグマまで幅広く。その巨体を維持するための貪食で知られる。また、海棲哺乳類を主食にするグループと、魚類を主食にするグループとがあって、知床の海に暮らすシャチは後者の方らしい(これもシャチ・ウォッチャー人気のヒミツかも知れない)。
いずれにしても、そのイヤでも目立つ〝強者イメージ〟の存在が古くから愛好されてきたことは、「鯱」という漢字をあてられて城の天守の屋根を飾っていることからも知ることができる。
……………
ところが、その絶対〝強者イメージ〟のシャチが、いま。
今後30~50年で生息数半減、100年後にはほぼ絶滅するかも知れない、という。
原因は、あの強力な毒性で知られるポリ塩化ビフェニール(PCB)。
1970年代に環境汚染物質としてヤリ玉にあげられてからは世界的に生産や使用をヤメたはず、と思ったら、国際的に規制はされてもPCBを含む機器類はまだ残っており、それらが壊れて漏れ出し、川や海に流出したためという(ヤレヤレ……)。
アメリカの科学誌『サイエンス』に発表された研究チームの報告によれば、これは各海域のシャチ約350頭のPCB濃度(既存のデータ)を収集分析した結果。
一部の海域を除いて、検出されたPCB濃度はシャチの繁殖や免疫に影響する1kgあたり50ミリグラムを上まわった、という。
この傾向が今後もつづくと仮定した場合の、各海域にごとの死亡率などを予測すると。
日本やブラジル、イギリスの近海、北太平洋などで、30~50年後には生息数が半減。100年後には日本・ハワイ・西アフリカ沖などで、ほぼ絶滅する。
シャチの寿命は、最長で人間に匹敵する80歳くらいとされる。
なお、報告によればシャチへの脅威はPCBのみにとどまらず、過剰な<捕獲>や、人間活動にともなう<騒音>も無視できない、とのこと。
シャチの肩をもつわけではない、けれど。
どうも、<共生>を無視して身勝手な生きもの〝ヒト(人類)〟の、旗色はわるくなるばっかり……