-No.2018-
★2018年04月01日(月曜日)
★11.3.11フクシマから → 2944日
★ オリンピックTOKYOまで → 480日
★旧暦2月26日、有明の月
(月齢25.8、月出03:30、月没14:10)
※きのう3月31日(旧暦2月25日)は、七十二候の「雷乃発声(遠くで雷の音がし始める)」。たしかに<雪おこし>の雷より<春雷>のほうが目覚ましい。そして、きょうは、改元名の発表される日。なにやらスグにもコメントしなければならないような、そんなことになりそうな予感がしますが、さて……
◆「わらび餅」の里へ
雨の大船渡をあとに、霧たちのぼる山間を抜けて釜石自動車道。
さらに、花巻JCTから東北自動車道に乗り入れ、北上JCTから岐れて秋田自動車道……
このたび(昨年晩夏)の<2018さんりく巡礼>、2度目の〝寄り道〟は<かまくら>で知られる横手市の北、〝湧水〟の三郷〔みさと〕町を目指す。
途中のサービスエリアで、〝寄り道〟の〝寄り道〟地へ問い合わせの電話を入れ、「どうぞ」の返事をもらって湯田インターで下りる。
ここは、まだ岩手県。
秋田との県境、西和賀〔にしわが〕町である。
「湯田温泉」といえば山口…と思われる方がほとんどだろう、が、ここ西和賀町にも湯田温泉郷がある。
…と言っても、ぼくはまだ訪れたことがなく。
はじめての訪問も、温泉入浴が目的ではない。
じつは、呑兵衛夫婦が酔狂にも「菓子」をもとめて行く。
(図らずも「かもめの玉子」につづく菓子づくしの展開になった…)
山あいの道を辿って温泉郷のある湯本、工藤菓子店の暖簾をくぐる。
「いらっしゃいませ、どちらから…」
「東京です」
「まぁ」
と、表情ほどに声は驚いていない。
どうやら、わざわざ遠方からやってくる好事家も少なくないらしい。
……………
「わらび餅」という和菓子がある。
近ごろは都会でも、あちこちで見かけるようになった。
ぼくたちは夫婦そろって、この「わらび餅」が好物。
その、なんとも和やかな舌ざわりと、くすぐるようなのどごしが、たまらない。
あちら洋もののゼリーやプリンなんぞとは、くらべる気にもなれない……
甘党のなかにも、「わらび餅」を名前だけのものと思っている方が少なくない。
「だって、でんぷん(が原料)のお菓子でしょ…」と。
蕨の根っこから澱粉がとれるなんて(やだぁホントに!)思ってもみなかった、らしい。
ま…無理もないのダ。
ワラビはシダ植物の仲間で、この地球上に現れたもっとも古い植物群に含まれ、仲間内には丈高く繁茂する木生シダさえある。
そのアクのつよさも、うっかりすると中毒をおこさせるほどのもの、と知らされている。
だから、ぼくなんかも蕨の若芽(スプラウト)を「おひたし」でいただくときなど、ソッと丸く閉じた葉先を撫でて〝原始〟に想いを馳せることがあるくらい。
そんなシダ植物から、あの「わらび餅」が生まれようとは、とても思えないし。
根っこから採れる澱粉といっても、ごく希少にすぎない(事実ワラビ10kgからわずか500gくらい…だそうな)だろうから、あとは混ぜものにチガイない…とふんでいた。
実際、たいがいの「わらび餅」の原材料表示は「でんぷん」でしかない。
ところが、そんな希少な「わらび粉」100%の「わらび餅」があるという。
それが、西和賀町の「わらび餅」。
この町は「わらび餅」の里という。
これはぜひ、チャンスがあれば訪れて、その地の空気もともに味わってみたい…と思っていた。
……ところへ、追っかけ、さらに吃驚情報がとびこんできた。
「畑で蕨が栽培されている」という、まさか…そんなのありか!?
映像で紹介された「わらび畑」というのは、まさに田園に出現した原始の藪。
詳しい栽培法はわからない…けれども、なにしろ山菜採りの名人と呼ばれる人がくふうした、いうまでもない無農薬栽培。
畑は「ほだ」と呼ばれる丈高く茂った蕨の葎〔むぐら〕だが、その下生えとして若い蕨の芽が、雪の消える頃、早い春の低温で次々に生え育つ。
それを収穫すればいいから「なんぼか助かる」というのダ……
なお、ちなみに、蕨は地下茎で繁殖(種子をつくらない)、その地下茎(根っこ)から澱粉が採れる。
「わらび粉」から製される「餅」は飴色。
いっぽう、やがて枯れた「ほだ」は自然の堆肥となって循環する。
……………
いうまでもないことだが、ぼくたち人間(ヒト)は、ほかの生命体の栄養をえて(食べて)生きている。
だから、とうぜんに、吾が身の栄養となる生命体の〝生命力〟に関心が向く。
〝原始〟に近いワラビの生命力が、ぼくを肚の底からつきうごかした。
(汝〔なんじ〕みずからを知れ…然〔しか〕して、その真実を食すべし)
……………
西和賀町には「わらび餅の里づくり協議会」があり、町の特産で国内随一のこの〝本わらび粉〟に「西わらびねっ粉」の名を付け。
100%本わらび粉(澱粉)づくりの「わらび餅」を、わずか3軒の菓子屋にのみ認めており。
その1軒が、この工藤菓子店なのであった。
……………
さて
(食したのは、宿に着いて風呂を浴び、熱い茶を淹れてからだったが…)
その〝本わらび粉〟の「わらび餅」。
極々上の、とろりと上品な感触ここちよく、気がつくとたちまち箱から消えていた……そう、春の淡雪のごとくに……!!!
※なお、取り寄せ情報に付記しておけば、このとき工藤菓子店で買い求めたもう一品「およね饅頭」という、地元の民謡『沢内甚句』にちなむ薄皮にクルミをのせたつぶし餡、しっとり焼きまんじゅうの味わいも、まぁ、えがったなす。
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