-No.1992-
★2018年03月06日(水曜日)
★11.3.11フクシマから → 2918日
★ オリンピックTOKYOまで → 506日
★旧暦1月30日、新月へ1日・晦日月
(月齢29.6、月出06:03、月没17:13)
※きょうは、二十四節気の「啓蟄〔けいちつ〕」。七十二候では「蟄虫啓戸(すごもりむしとをひらく)」といって、「冬ごもりの虫が出て来る」頃のこと。折もよく明日は<新月>、つまり、旧暦ではこの日で1月もおしまい(晦日)。明日からは2月がはじまる。
ぼくの、包丁の師匠ってひとは、ね。
「三社(浅草の三社祭のこと)」神輿の先棒をとるのがなによりの楽しみッてぇ。
まだ若い、出は田舎〔ざい〕の方でしたが、気風〔きっぷ〕じゃマケてない江戸っ子肌。
この人が、ときたま。
ぼくがまだ若かった頃、ひょんなことから、あずからせてもらっていたお店の板場に、手みやげ持って来てくれたもんでした。
経木に包んだのを、紙でくるんで、紐かけて。
「これ、いいとこ、おすそわけ」って。
それが、いちど、極上の「ねぎとろ」だったことがありましてね。
濃いめのピンクのたたき身に、緑に分葱〔わけぎ〕がざっと散らしてあった。
(やっ!)ウマかったのなんのって、(ばかうま!)ってヤツ。
師匠が、たのみにしている仲卸さんから「わけてもらった」の。
「ねぎとろ」って、そういうもんでした。
まえは、店内〔たなうち〕の「まかない」とか、ごく親しい常連さんの口に入るくらいのもん。
だってね
「ねぎとろ」ってのは、マグロをおろしたとき、骨や皮からとれる身(なかおち、そぎ身)をたたいて、ペーストにするもんですから、たくさんはできない。
それが、「軍艦巻」や「ねぎとろ巻」の寿司ネタに人気がでてから、しょうがない、あれこれ掻き集めたマグロのたたき身に、脂やなんかで味つけしてこさえたのが、いまよくある「ねぎとろ」ってやつ。
ですから、ほんとの「ねぎとろ」に出逢えることは、まぁ、少ないですよね。
ぼくなんかも、いまは、ごく偶〔たま〕にしか口にできません。
だって、ふつうに売ってる「ねぎとろ」、あれは(うまいこと作ってある)けど(旨かぁない)ですもん。
いぇ、ぼくだって美食家じゃなし、別に「ニセモノなんか喰えるか」ってわけでもない…けど、やっぱ「ちがう」もの。
そう。
たとえば「かにあしかまぼこ」って、あるでしょ。
あれなんかもね、(ホントよくできてる)し、お弁当とか、寄り合いの席なんかで出されれば、いただきますよ。
でも、じぶん好みで食べるときは、手を出しません、そういうもんでしょ。
この間、どっかのテレビ局の<うんちく噺>で、「ネギトロはじつ〝トロ〟に〝ネギ〟ってことじゃない」と、おもしろおかしくやってましたっけ。
……でもね。
「ねぎとろ」元祖の寿司屋さんが、じつは「むぎとろ」が好物だった、とか。
「なかおち」や「そぎ身」を「そぎ(こそげ)とる」ことを、むかしは「ねぎとる」と言った(そんなことダレがいいましたっけネ)からだ、とか。
ヤメにしましょうや。
いきさつはどうあれ、じっさい「ねぎとろ」にはネギ(ほんとはワケギ)がよく似あうんですから、それでイイじゃないですか。
(葱鮪〔ねぎま〕って鍋があるくらいですからね…ただ、こっちのときはネギです、ワケギじゃありません)
べつに、うん…目くじら立てるほどのこっちゃないデスよ。