-No.1942-
★2018年01月15日(火曜日)
★11.3.11フクシマから → 2868日
★ オリンピックTOKYOまで → 556日
★旧暦12月10日 → ☆十三夜月へ4日
(月齢9.4、月出11:58、月没00:14)
◆市原悦子さんが亡くなりました…
1月12日の訃報です。
心不全で、行年82でした。
市原さんといえば、新劇、もとは俳優座の、すてきな女優さん。
いろいろ、ひっくるめて観て、あらためて<お芝居のために生まれてきたような>方でした…けれども。
なんといっても一般には、テレビドラマ『家政婦は見た』(1975年=昭和58)で、思わず(ウフッ…)と、ほほえましく記憶されている方が多いのではないでしょうか。
ほんとに、あれは秀逸。
視聴者もおおいに楽しませてもらいましたが、市原さん自身も愉しんで演じていたと思うのです。
いや……
ぼくにとっては、もうひとつ。
忘れられない声の出演作品がありました。
はぃ、そうです、『まんが日本昔ばなし』(1975年=昭和50年放送開始)。
常田富士夫さんと、ずっと二人だけで、すべての声を分担(ときには男女入れ替わったりも)して、(お噺によって絵の作者は変わったんですが)どんな絵柄にも合わせた…というより、いつでもシックリ合ってしまうのでした。
こんな番組ほかにないですよ、いまだって。
これはイイ、放送だけですませちゃもったいないよね。
子どもたちのための本をつくろう…ってことになって、お話しの再構成から編集までの仕事を、ぼくのプロダクションでさせてもらいました。
文庫版、1話1冊の32ページ仕立て、5冊で1巻のシリーズが、おかげさまで気に入られて。
アニメの原画を借りてつくったので、なかには絵が手に入らないお噺もあったりしましたが、たしか50冊の箱入り版が、上・下2箱にもなりましたっけ。
……………
追悼番組では、『鶴の恩返し』が映されていました、けれど。
ぼくの、これが一番とっておきは『牛方と山姥』。
臆病者の牛方の声が常田さんで、あっけらかんと喰いしんぼな山姥が市原さん。
絶妙の掛け合いドラマはサイコー傑作でしたね。
それからというもの『牛方と山姥』は、子どもたちにお話しをするときの、ぼくの十八番演目になっています。
……………
…で、ごめんなさい。
いまになってハッと気がつきました、すっかり忘れていました。
市原悦子さんと、常田富士夫さん。
このお二人こそ、元祖<声のお芝居>名人。
つい、このあいだ発表させてもらったばかりの。
「クリア・ボイス大賞」から、はずしとくわけにはいかない大御所さんだったことに。
申し添えれば、常田富士夫さんも先に昨年夏、脳内出血で亡くなっています、行年81でした。
……………
ここに、あらためて。
お二人に「クリアボイス大賞・特別賞」をさしあげ。
1月9日掲載の記事を訂正の上、再掲させていただきます。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
◆「クリア・ボイス大賞」
これは、「すてきな音の空間をもとめる会」によるものです。
ざんねんながら、会員はまだ私(浅生忠克)ひとり。
なので、わたしの「聞こえ」の判断で決めさせていただきました。
聴覚障害と呼ばれる、(疾患にはちがいない…けれども)なかでは程度のかるい、と思われている領域に、「難聴」があります。
わたしは、大学病院の耳鼻科で検査をうけた結果、「中程度の難聴(ふつうの人の70~80%くらいしか聞こえていない)」と診断され。
いま現在、補聴器とつきあっています。
症状をわかりやすく説明すれば、日常の会話で相手の言葉が<聞きとりにくい>ことが少なからずあり。小鳥のさえずり、風鈴や電子通知音に気づけない。
高音で小さな声の女性の甘いささやきなどは…(いまはもう)ふんいきだけでしか、あじわえません。
しかも
そんな「不幸」な境遇が、私だけじゃなかった。
じつは、難聴は子どもたちにも少なくないし、近ごろは若者たちの間にもふえてきている。
全人類の10~20%には「なんらかの耳の障害」があり、65歳以上の高齢者になればほぼ半数が「難聴」の身、といわれます。
また、聴力に問題はないとされる人たちにも、じつは「聞きとりにくい」あるいは「聞こえていないけど前後関係で対処している」、状況があります。
それにしては
「音」に対する注意、「聞こえ」に対する配慮がなさすぎる、いまの世の中。
「難聴」者は、みずからの「聞こえ」を改善する努力をしながら、もう少し、世の中が「音」や「聞こえ」にやさしくあってほしい、と願っています。
アナウンサーや俳優・声優さんなど、声でコミュニケーションをとる職業のプロには、「クリアに聞こえる」話法の研鑽につとめてもらいたいし、音響や録音関係の技術者の方々には、「迫力」より「透る(通じる)」音を追求してほしい。
そんなきっかけづくりのム-ブメントとして
「クリア・ボイス大賞」をノミネートしたい
では、発表します。
栄えある第1回「クリア・ボイス大賞」は…
【特別賞】
☆女声 / 市原悦子〔いちはら えつこ〕
★男声 / 常田富士男〔ときた ふじお〕
【大 賞】
☆女声 / 相武紗季〔あいぶ さき〕
★男声 / 中井貴一〔なかい きいち〕
※【特別賞】女声の市原悦子さんと、男声の常田富士男さんは、1970年代から静かに一世を風靡した『まんが日本昔ばなし』の、ついに二人っきりの声を演じきりました。その声を表現すれば<究極かわいくて、味わいのある、懐かしい声>でした。市原さん19年1月没82歳、常田さん18年7月没、81歳。合掌。
※【大賞】女声の相武紗季さん(33)は、主にテレビドラマ・映画・CMで活躍する女優さんですが、<声優>の素質も群を抜いています。愛らしい表情をもったやさしい声音、それでいて女声にありがちな<語尾の消える>こともなく、なにしろ癒されます。最近ではNHK『岩合光昭の世界ネコ歩き』の語りが秀逸。
※男声の中井貴一さん(57)は、役者としてあたりまえのことながら。近ごろは安心感をもって観て・聞いていられる俳優さんが少ないなかにあって、<けれん味のない王道>とも言える<台詞まわし>は、さすが。血筋(父=佐田啓二、姉=中井貴恵)を思わせます。その透る声は『雲霧仁左衛門』でも健在。
……………
以上
「すてきな音の空間をもとめる会」の「クリア・ボイス大賞」に賛同くださる方。
どうぞ、ひと声かけてください。
来年、第2回の発表にはぜひ、幅広い合議の結果をおとどけたしたい、と思います。
相武さん、中井さん、に親しい方がおられましたら、ご本人にお伝え願えれば幸いです。
できれば、コメントなどいただければ……
※おしまいに、ドイツの哲学者カントの言葉
「目が見えないことは人と物を切り離す。
耳が聞こえないことは人と人を切り離す」