-No.1888-
★2018年11月22日(木曜日)
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渋の抜けた「渋柿」の代表品種、刀根早生柿(奈良県天理市産)
★柿…さまざまな…柿★
この噺。
[其の壱]は、いわばボクの「想いでの柿」だった。
この項では、柿(カキノキという植物)のもつ「本質」を愛でておきたい。
前回、柿は<渋柿>が<本家>で、<甘柿>は<分家>とお伝えした。
そうしていま、<渋柿>産地は<寒冷地>、<甘柿>の産地は<温暖地>になっている。
いや
その前に、そもそも「柿」の素性は? どこから来たのか?
学名にも「Kaki」が入っているところをみると原産は日本か…というと、さにあらず、東アジアの固有種で、ニッポンには大陸から栽培種として渡来した、という。
もちろんかなり「古い」ことにはチガイない。
なるほど柿は大陸的だな…と思わせる、まず一番が渋柿が原型ということ。
「渋柿」といっても腐って落果するまで「渋い」ままではない、実が熟しても固いうちは「渋がのこる」。
つまり、いずれ甘くはなるが、なかなかの頑固者である。
まことに大陸的。
第二に、品種が多い(現在1000種を超えるという)。
種の展開、改良しやすさも含めて、繁殖力旺盛と見える。
ただし、ひとすじ縄ではいかない気むずかしさもあって、たとえば甘柿同士を交配しても渋柿になる、こともあるそうな。
「禅寺丸」という、なにやら武家の幼名めいた品種がある。
発祥の川崎市麻生区王禅寺は、ぼくの住む町田市からも近く、そこに住む人の庭でとれた実をいただいたことがあった。
渋柿から突然変異で生まれた、日本で最初の甘柿品種といわれるが。たしかに味わい古風なものがあった。
甘柿にも二派あって、熟せばカンペキに甘くなる<完全甘柿>と、成熟しても渋みののこる<不完全甘柿>とがあり、<完全甘柿派>には「富有」柿や「次郎」柿、<不完全甘柿派>には前記「禅寺丸」や「筆柿」がある。
なお追記しておくと、「干し柿」にして甘いのが「あんぽ柿(福島県)」・「市田柿(長野県)」・「枯露柿(山梨県)」など。
このへんの〝素直〟でない(〝個性的〟の意、くれぐれも誤解のないように願いたい)ところも、大陸的といっていい。
……………
ところで
これは、まことにニッポンらしい、風物詩というか風景がある。
日本一の柿産地(市町村)で、「富有」柿で知られる五條市。
その生産農家は、「富有」柿の畑の真ん中に、まったく別種のカキノキを1株植えている。
これは、柿の実を甘くするためには他品種の花粉による必要がある(自家受粉では充分に甘くならない)からで。柿の場合も実りをよくするための摘果はかかせないが、授粉用のカキノキだけは摘果をしない。
それは、すべて受粉のため。
たくさんの柿の受粉に働いてもらうため、農家は蜜蜂の手を借りている。
近ごろはまた、ちょと、ざんねんな話もあって。
それは、過疎化の進む農村で収穫されずにのこる柿の実がふえ、それを食べにやってくる野生動物、サルやシカやクマの被害に悩まされているのだ、そうな。
(う~む)