-No.1879-
★2018年11月13日(火曜日)
★11.3.11フクシマから → 2805日
★ オリンピックTOKYOまで → 619日
★仔を巣穴に閉じ籠める★
ウサギにしては耳が短いし、四肢も短いので、どちらかというと「黒ネコのタンゴ」風である。
光沢のある暗褐色の体毛につつまれて、これだけはウサギらしい顔かたち、可愛らしく小さな眼をしている。
肢指には爪が発達してして、穴を掘るのが得意。
これがアマミノクロウサギの、夜行性で穴居という生活の基本を決定している。
ぼくは、ざんねんながら現場も現物も見てはいない。が…
ドキュメントの映像で観た、子育ての場面にジンときてしまった。
特別天然記念物で、絶滅危惧種でもあるアマミノクロウサギ。
その由来を訪ねると。
奄美大島をふくむ南西諸島が、まだ台湾と陸続きだった中新世の頃にやってきて棲みつき、その後の地殻変動によって島に隔離されたものといわれる。
大陸にのこった方の同属はすでに絶滅していることから、アマミノクロウサギが生きのこれたのは捕食者である大型哺乳動物がいなかったため、と考えられている。
とはいえ、それでも毒蛇ハブの天敵(ほかにマングース、野イヌなど)はいるから、子育てには脅威。
そこで、アマミノクロウサギの母親は、幼い仔のいる巣穴に立ち寄って乳を与え、授乳がすむと巣穴の入口を厳重に塞いでしまうのだ。
これはもちろんハブの攻撃から仔を守るためで、こうしておけば、食餌の存在をセンサーで探りあて襲撃するハブの毒牙から遮断できる。
しかし、それにしても……
いのちの母乳を呑みおえた仔が、うながされるまでもなく、みずから母に背を向けて穴ぐらに入って行く姿はいじらしく、よくできた芝居の「子別れ」場面もかくやと想わせる。
生きものが生きる、レゾンデートル(存在理由)と意味。
〝種の保存〟にとって〝子育て〟はいつも、重大かつ深淵なテーマであり、親世代は精魂こめて腐心する。
(危難を脱する術はどうあるべきか…)
魚類や両生類に見られる「マウスブルーダー」と呼ばれる習性、一定の期間オヤが仔を口の中で育てる〝子守り〟法が究極の一手段であろう、が。
アマミノクロウサギの親が仔を、巣穴の奥深く閉じ籠めるというのも、これに拮抗するくらいの思いきった〝子守り〟法かとボクには思える。
こうした一定期間の〝子守り〟術のあと、アマミノクロウサギの親はやっと、ものごころついた(かどうか)の仔を連れ歩くようになる、という……