-No.1876-
★2018年11月10日(土曜日)
★11.3.11フクシマから → 2802日
★ オリンピックTOKYOまで → 622日
★カッコーは高原の鳥★
樹林も暗いほどには繁っていない、陽ざしの明かるい斜面に似合う。
緩やかに登る山の道を歩いていて、この鳥が鳴くと、しばしホッと休息の合図だ。
あまり見かけない姿より、だんぜん声の鳥だ。
「カッコー」の名も、まさにその(オスの)鳴き声に由来する。
外国での命名にも、鳴き声に由来するものが多いそうな。
いっぽうでカッコーには、(人には)奇妙に思える「托卵」という繁殖行動が知られている。
「托卵」による繁殖は、自前の巣を営まず、ほかの鳥の巣に、巣の持ち主の留守をねらって己が卵を産みつけ、巣の持ち主の親鳥に、代りに子育てさせてしまおうという、じつにムシのいい行動である。
それも「おねがします」と礼をつくして頼むのではない、親仔そろって、相手を騙して育てさせよう魂胆だ。
身勝手な「托卵」には、とうぜん巧妙な作戦がともなう。
ちゃっかり子育てを代わってもらうため、カッコーは己が産む卵の色や模様を、巣の持ち主鳥が産む卵に似せ。
卵の数あわせをするためには、<育ての親>鳥の卵を捨て落として減らしたり、食べてしまったりもする。
ぼくは、この「托卵」、カッコーのわがまま放題、手前勝手な行動だとばかり思っていたから。
(どうも根性曲りでよくないなぁ……声はいいのに……)
姿を見なければ、いっそ、そのほうがいいのかも知れない、と考えていた。
ところが、それは「とんでもない誤解だ」という、研究結果だそうな。
遺伝的に、カッコーはもはや、自らは巣を営むことのできない境遇になっているのだといわれ。それはどうやら、この鳥の体温変動が大きすぎること(卵を温めるのに不向き)と関係があるらしい。
ちなみに、カッコーが托卵の対象にするのは、オオヨシキリやホオジロ、モズ、オナガ、ジョービタキなど。
カッコーのヒナは、巣の持ち主の鳥のヒナより早く、卵から孵化・誕生するようになっており、そこで、後から生まれてくる巣の持ち主鳥のヒナを放り捨てたり、食べてしまったり…で、自分だけを育てさせるように仕向けるのだという。
これを専門用語では「片利片害共進化」というらしい。
が…もちろん、そう上手くいくことばかりではない。
托卵が遅れて企みが逆目にでることもあるそうな。
とうぜん、カッコー同士の間にだって縄張り争いが存在する。
それは肉食動物が、かならずしも食餌獲得に有利なわけではない、ことからも知れるわけだった。
たとえばヨシキリは、カッコーの卵を偽ものと見やぶって排除することがあるというし。自分の卵にはヒミツのサインを仕掛けたりもするとやら。
そりゃそうだろう、そもそもが、カッコーとヨシキリじゃ、体の大きさが(8倍も)違いすぎる。
どだい無理があるのを、なんとか押しとおしてきたカッコーなのだった……
世の中にはワカラナイことがあるもので、客商売が流行らないときなどに言う「閑古鳥が鳴く」の、「カンコ鳥」は「カッコー鳥」からきたものだそうな。
思わず(うむぅ)と唸ってしまいたくなるところ、だが…待てよ、晴天の似合うカッコーが黄昏時にでも鳴けば、たしかに(もの淋しい)風情かも知れないのだった。
もうひとつ。
有名なドイツ、シュヴァルツヴァルトの「鳩時計」、あれも、もともとは「カッコー」の声を模したものだ、と。これは、ぼくもそのとおりと認めますね。だって、あの時を告げる鳴き声は「鳩」じゃない、カッコーですもん。
カッコーは、夏の渡り鳥。
そういえば、春さきにカッコーの練習鳴きというのを聞いたことがない。
…というのは
日本では留鳥のウグイスは、春さきに野山を歩くと、まだ若い鳥たちが懸命に「鳴き声」のレッスンをする場面に遭遇するからだ。
「ホ~ホケキョ」とスムースにはまだいかずに、「ホ~ッ、ホッ…ケキョ…ケ…」なんぞと微笑ましい。
そこへいくとカッコーは、夏空に初めっから冴えた鳴き声を響かせる。
十勝の「小豆づくり名人」と呼ばれる人が言っていた。
「小豆はカッコウが鳴いたら植える」
もういいぞ…と、聞こえるんだそうな。