-No.1753-
★2018年07月10日(火曜日)
★11.3.11フクシマから → 2679日
★ オリンピックTOKYOまで → 745日
*いよいよ夏。ぼくの好物に、井村屋の「あずきバー」という、固くしまった氷菓子(キャンデー)がある。頭のなかの脳の奥まで暑さに茹だるような気になったとき、冷凍庫からひっぱり出してきて、かぶりつく。アイスモナカなんかもわるくはない が こっちは暑気がまだ軽い頃のもの。猛暑の脳髄には「あずきバー」の固い歯ごたえと共に、ほどよい甘さの小豆味が効く。家では箱入りをひと夏にどれくらい買うだろう!…と追憶にふけっていたら、「ゴ-ルドあずきバー」ってのがあるの知ってる?…と友人から訊ねられた。高級な「あずきバー」らしいが、知らなかった。近所の店を探してみたが、見つからなかった。ついで付け加えておくと、固いので有名な「あずきバー」を削って「おかしなかき氷」にしたり、キャンデーを使ったレシピなんてのもいろいろあるらしいのダ…けれども、孫のないわが家では爺っちゃ婆っちゃでかぶりつくしか能がない。だから、まだ「ゴールド」味は経験できていない。webで注文するしかないのだろうか……*
◆「海の掃除屋さん」兼「皮膚科クリニック&セラピー」
ぼくは「片づけ屋」。
片づいて しかも 片づきすぎない…のが理想です。
ですから、海の「片づけ屋」にも興味津々。
ただ、「片づけ屋」にも<最終処理班>と<修正・再生班>があって。
死んだ遺骸を葬る<最終処理班>には、さまざまなバクテリアのほか、たとえば深海に沈んだクジラの遺骸なんか、すっかりキレイに食べ尽くし処理してくれるヌタウナギなんて掃除屋さんもいる……が。
こういうのは どうも 生唾ゴックン、気色はよくない。
ぼくが好きなのは、摂餌(食餌)というきわめて功利的な行為で、その対象になる相手にもヨロコばれる<修整・再生班>の方だ。
<修整・再生班>はもっぱら生体、つまり生存中の魚を相手に、体表や粘膜などの清掃にあたる。
だから「掃除屋」と呼ばれるわけだが、その不要物(ごみ)処理はすべて吾が腹中におさめるクリーン作戦、そこがいい。
◆「掃除魚」界のスター、ホンソメワケベラ
こちらのタイプにも、小型のエビ類などをふくむ生態的一グループが存在する。
なかでも、綺羅星スターはホンソメワケベラ(ベラ科)。
暖海の珊瑚礁や岩磯に棲み、体長12cmほどの小型魚で、頭を前に下げ気味に〝いそぎ脚〟ふうの泳ぎ方に特徴があり。
白地に黒帯ひとすじ(きわだった染め分け)の魚体は、純白一辺倒からデザイン的になって、クッキリ・ライン採用も珍しくなくなってきた医療スタッフ風…と言えなくもないし。
「便利屋・営業中」の看板を掲げて泳いでいる…とも見える。
この魚のユニーク行動は、かなり以前から研究者の注目のマトらしく、ダイバーではないボクは水族館でしかお目にかかったことはない…けれども知友になってすでに古い。
ホンソメワケベラの棲むところには、主に中型から大型の魚(したがって捕食魚も多い)が寄ってきて、魚体のメンテナンスをしてもらう。人気のあるところには、ときに順番待ちもある。
患者というより客…の珊瑚礁の魚たちは、その場にとどまってホンソメワケベラのなすがまま、身体に寄生した虫をとってもらい、鰓や口の中(口腔ケア)の歯間から粘膜まで診て(食べカスなどとって)もらって、いい気もちそうにウットリしている。
◆「マッサージ屋」も兼業
ただ、これまではただの「掃除屋(スキンクリニック)」と思われてきたのが、最近の調査・研究成果から「マッサージ・ケア」もするセラピストでもあることが知れた、という。
『ダーウィンが来た!』!(NHK,日曜夜7時半~)の映像を観ると、ナルホド…腹鰭で〝もみほぐす〟がごとき…これはアソビどころじゃない、あきらかな治療行為と目に映る。
本業(?)の「肌のお手入れ兼食餌」行為にしても、そこはホンソメワケベラなりに営業利益を考えていて。
どういうことかというと…寄生虫除去も仕事だからするが、食事としてホントにありがたいのは栄養豊富な皮膚や粒状の〝できもの〟とか鱗、あるいは分泌物類。だから、サルのノミとりみたいに、口先でチョイチョイ寄生虫をとってやりながら、美味しそうなところをスキをみてサッと盗み喰う。
客に気づかれなければいい……
しかし、オイシイところばっかり狙ったり、ヌキウチの技をしくじれば騒がれる。
「ナニすんじゃ、てめぇ」
「ごめんなさい」
大きな魚に追いかけられて必死に逃げ惑っている…のがオカシイ。
◆偽物にもクロウがあるのダ
医療行為で重宝がられる「掃除魚」、ホンソメワケベラ。
これだけの特異な特長で生存競争を生き抜いて来れば とうぜん ライバルというか…そのオコボレにあずかろうとするモノがでてくる。
ニセクロスジギンポ(イソギンポ科、*上の写真右)。
魚体の大きさいうまでもなく、体色も黒条〔すじ〕も同じなら、泳ぎ方まで似て生息域も同じ、巧妙な、これも一種の〝擬態〟。
ただ、自然の神意は皆までは許さず。
よく見ると、ホンソメワケベラの口は黒条のど真ん中にあるのに対して、ニセクロスジギンポのそれはやや下付き……
いや、それよりなにより、映像をよく見ていると、どうにも偽物らしい<挙動の不審>隠しようもなく。
ソッと近寄ったつもりでも、客の魚に逃げられたり、追っ払われたりしている。
それでも、大型魚の捕食から逃れながら、めげず、懸命に、鋭い歯で食い逃げを計りつづける。
戦略は姑息ながら生態系のなかで、これはこれで成功していることになるのだろう。
ニセクロスジギンポの英語名「False cleanerfish(ニセ掃除魚)」が立派なレゾンデートル(存在理由)になっている。(あなおかし…)