-No.1673
★2018年04月21日(土曜日)
★11.3.11フクシマから → 2599日
★ オリンピックTOKYOまで → 825日
おはようございます、おげんきよう、<なっつまん>です。
*14日で熊本地震からはや2年…いまも4万人ちかくの人が仮設暮らし…ほど遠からぬ耶馬溪(大分県)ではまた大規模な土砂崩れ…災害列島やすむ間もありません…*
◆喫茶店チェーンはなぜか「ルノワール」
六本木の国立新美術館へ、『至上の印象派展 ビュールレ・コレクション』を桜花のさかり3月に、観に行ってきた。
中高時代の友人N君を誘ったのは…どう言ったらいいだろう…その頃の、たとえば美術の教科書的な、青春前期の匂いをフと嗅ぐような気分になったからだった。
「ビュールレ・コレクション」は、スイス、チューリヒ湖の畔にある印象派の美術館。武器商人として財を成したビュールレ氏の個人コレクションである。
こんどの展覧会では、ルノアールの『イレーヌ・カーン・ダンヴェール嬢(可愛いイレーヌ)』と、セザンヌの『赤いチョッキの少年』とに、徹底して広報のマトがしぼられたこともあり、その初々しさに誘われてヒット。
2月に始まった展覧会は、3月に入るとすでに来館者が10万人を突破、その1ヶ月後にには20万人を記録した。
この展覧会は火曜が休み。ぼくらが訪れたのが休み明けの水曜日。
春休みにも入っていたから学生の姿もめだって、観客のかずは予想どおり多かった。
ただ……
どういうものか、人だかりがしてゆっくりとは観ていられない作品は、いずれも世に知られた名作ばかり。いわば、画集などでもすでにお馴染み。
まぁ、だからこそ人気があるのだった、けれども印象として、どうしても〝教科書〟的な感がぬぐえない。
ほかにも、いい作品があるのに……
たとえば、ゴッホの『日没を背に種まく人』あり、カナールの『カナル・グランデ、ヴェネツィア』あり、モネもマティスもドラクロワも、ロートレックもシスレーもゴーギャンもドガもピカソもあったのに!
セザンヌにだってほかに『庭師ヴァリエ(老庭師)』があり、ルノワールにだってほかに『泉』もあって、マネの『ワシミミズク』とか、ブラックの『ヴァイオリニスト』なんかも佳かったのに……
そうしていま、ボクにも印象派の真味がわかってきたところなのに!
どうしてだろう、展覧会の人気とは裏腹に、トータルな〝印象〟に感動的なものは稀薄に思われたのだった。
(個人の趣味世界に没頭したい…コレクターの気分もワカル気がする…)
モネの『睡蓮の池、緑の反映』。
なぜか〝撮影許可〟になっていた大作を最後に会場を出ると、窓外にはしきりに桜の花吹雪がながれて、ぼくは、ふしぎにアンニュイになっていた。
「なんかね、やっぱり美術の教科書みたいな…」
ぼくが、気になっていた〝印象〟の告白をしたら、N君もうなずいていた。
ついでにボクの脳裡には、鑑賞の途中から、ひとつの雑念がちゃっかり居坐ってしまい、気になってしようがない。
それは、喫茶店チェーン「ルノアール」のことだった。
もう、ひとむかしも前…になるのだろうか。
ぼくらの青春時代は、コーヒー一杯で音楽を愉しみ、あるいはだべって時間をつぶし、また恋をささやきあったり…という喫茶店文化というものがあった。
そう、喫茶店もそれぞれに趣味・趣向をこらして、かずもかなり多かった。
時代が変わって、くつろぎの喫茶店は流行らないことになり、スマホ片手にひと息入れるだけのコーヒー屋にとってかわられた、いま。
チェーン店としてのこるゆったり喫茶室といえば「ルノアール」くらい。東京では、一部知識人・マスコミ関係者などにファンの多かった「談話室滝沢」があったが、これもすでに撤退している。
喫茶室「ルノアール」の、もとは煎餅屋さん。
創業当時は日本茶に煎餅のセットというメニューもあったとか、聞いたことがある、が。店名については由来を知らなかったことに、いまになって気がついた。
それくらい、喫茶室「ルノアール」はなんの不思議もなくそのまま、はじめから「ルノアール」でありつづけた。
(なんで!?)を放っておけないボクのことは、前にもお話したとおり。
…で、あとで調べてみたら。
なんでも創業者(小宮山正九郎)の親友のひとりが、「ゴッホ」「ドガ」など候補のなかから選んだのだ、と。
なんとも愛想のないことだったが、つまり、それほどに〝印象派〟がお好きだったということだろう。
それに、だいいち〝印象派〟の方々のお名前というのが、「ゴッホ」「ドガ」にかぎらず、「モネ」「マネ」「シスレー」「セザンヌ」…と、とんと喫茶店名にふさわしい愛らしさがない。
すると「ルノアール」は、ごく自然のなりゆきだったことになる。
ぼくは、また、ふとアンニュイだった。
N君とは、桜吹雪のミッドタウンでお茶を飲み、六本木にふるくからある蕎麦屋でざる蕎麦を啜って別れた。
ぼくは帰途、新宿まわりで小田急のロマンスカー、ひとりビールを飲みながらアンニュイに身をまかせた。
チューリヒにあった「ビュールレ・コレクション」は、2008年に武装強盗団に襲われ、『赤いチョッキの少年』をはじめとする4枚の絵を強奪され、その価値額はおよそ175億円とか。
さいわい作品はすべて発見、回収されたが、その影響によって閉館、20年にはチューリヒ美術館に移管される。
……………
その前に、コレクションの全体像を紹介する最後の機会として実現した、このたびの「ビュールレ・コレクション展」は、5月7日(月)まで。