-No.1538-
★2017年12月07日(木曜日)
★11.3.11フクシマから → 2464日
★ オリンピックTOKYOまで → 960日
◆9月6日(水)、十府ヶ浦
国道45号(浜街道)が、北山崎の断崖丘に阻まれ、北上高地寄りに避けて通ったあと<浜街道>らしさをとりもどすのが、普代村をすぎ野田村に至るあたりから。
景勝の十府ヶ浦に迎えられ、茫とした<みちのく>の海の広がりに旅人はため息をつく…のでした、が。
そのため息が、大津波被害の惨状にかわって6年半。
《11.3.11》その年の夏からはじまったボクたちの<遍路巡訪>の旅は。
壊滅した海岸部を遠巻きに逃れた復興道路を走って、ようやくに辿りつく高台、陸中野田の集落と駅とに駆け上がって…なぜか…ホッと来し方をふりかえる気分にさせられるのでした。
(この気分は、震災大津波から3年ほどの間、ここを通るたびに葬送の列と出逢ってきたせいかも知れません)
十府ヶ浦の大防潮堤工事も、さきゆき完成のときが見えるようになり。
道路もようやく海沿いに復活してきました。
◆九戸〔くのへ〕村
岩手県から青森県へのアプローチは、そのまま<浜街道>を海沿いに走って行くか、それとも陸路、八戸自動車道に迂回して時間をかせぐか。
このたび、きょうは下北半島に入って六ケ所村を訪れてのち、宿りは津軽海峡の潮流にのぞむ下風呂温泉。
行程150kmほどの長距離走りになりますから、山まわりの高速コースをチョイス。
久慈の街から国道281号で久慈渓流沿いに遡り、山中を行く県道に折れて九戸インターを目指しました。
八戸自動車道のインターがある九戸村は、純農村地帯。
ボクがこの村を知ったのは、「南部箒」と呼ばれる草箒の産地情報から。
干したほうき草の茎を束ねて作る箒は、「埃をたてずに埃をのがさい」といわれて、子どもの頃、母が重宝していたのを覚えています。
いまは、わずかに九戸村の高倉工芸で作られているこの箒。
かつては庶民の味方でしたが、聞けば現在は1本10万円からするという<高値の花>。
注文してから品物が手に入るまでに、少なくとも数カ月はかかる、とのこと。したがって何処かのお店で見かけるなんてことも、まずありえない。
ほうき草を自家栽培するところから、すべて手づくり、すべてが手間のかかる仕事となれば、まぁ、やむをえないのでしょうが。
(それにしても箒1本がねぇ…)と思うと、心中フクザツなものがあるのでした。
◆民話「オドデさま」
かわりに、奥深い里山のむかし話をひとつ。
じつは高速道にのる前にひと休み、立ち寄った九戸村の道の駅「おりつめ」に。
風変わりなフクロウの容〔かたち〕をした神さまらしきものが飾られて「オドデ様」とあり、またレストランの名も「オドデ館」になっていました。
ふしぎに思って、田楽屋台のお母さんに訊ねたら、「言い伝えです、村のね」と。
そうして、由来を記した刷り物をくれました。
読んでみますと。
ちょっとホンワカ、ゆるキャラめいたお話し。
すこ~しボクの脚色をくわえさせてもらって、ざっとご紹介しておきましょう。
むか~し。
村の、折爪〔おりつめ〕岳の麓の草刈り場で、ひとりの若者が働いておりました。
夕方になって、ふと若者は、藪のなかに妖しく光る目ん玉に気がつきました。
なんとそこには、大きさは魔法瓶くらいの、上半身はフクロウ、下半身は人のような者がいて。
なんと、それが、足をそろえてビョンビョンと跳ねて近づいてきたのです。
若者は、(あれっ…なんだべ妙な、鳥だべか、それとも人間だべか)と思いましたと。
すると、怪しいことに、その者は。
若者が思ったとおりのことを、オウム返しに声にだして言いました。
「鳥だべか、人間だべか、と思ったな」
そうして、「ドデン、ドデン」と叫んだのです。
若者が、怖ろしくなって逃げだすと。
その者は、ビョンビョン跳ねて追いかけてきながら、また叫びました。
「おっかなくなんかないぞ、ドデン、ドデン」
村に逃げ帰った若者は、欲ばりな名主さまに、「オドデさま」の不思議を語ります。
すると、欲に目がくらんだ名主さまは、「オドデさま」で金もうけをたくらんだのです。
名主さまは、神棚に「オドデさま」をまつりあげて、村人たちに拝ませました。
すると、また不思議なことに、「オドデさま」は村人たちに予言しましたと。
「あしたの朝は晴れになるドデン、ドデン…それからな、晩方は雨になるぞ、ドデン、ドデン」
それが、なんとまぁ、ホントのことになりましたから、村人たちはおおよろこび。
それからは、じぶんの運勢や失せもの、縁談、病気のことなど、たずねる村人たちがワンさと押しかけ。
たちまち、名主さまがちゃっかり用意した賽銭箱は、お金でいっぱいになりましたと。
これにすっかり呆れてしまったのが、ほかでもない「オドデさま」で。
不意にプイっとそっぽを向くと。
「もう知らん、知らん、ドデン、ドデン」
怒って、声高く叫びながら森の方へ飛び去ってしまいましたと。
それからというもの、「オドデさま」は二度と姿を見せなくなりました、が。
いまでも、ときおり、折爪の森の奥深くからは「オドデさま」の、それらしい声が聞こえる、といいます。
……………