-No.1403-
★2017年07月25日(火曜日)
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◆野菜と油
野菜に興味をもつようになったのは、それに含まれるほのかな油分を味覚できるようになってからだった。
野菜も、それぞれの栽培農家、いろいろなお百姓さんに取材させてもらって、教えられることが多かった。
ジャガイモの機械化自動収穫では、動くベルトコンベア選別台から、これは人手で、出荷に不適なものたちが次々と抛り捨てられていく。その数が半端じゃない(気がした)、もったいない。
「いいですか、拾ってきて」
ことわって、落ちこぼれたイモたちを拾っていったら、たちまち手籠がいっぱいになった。
作物は品質や大きさによって、いくつかの等級に分けられるものだが、これはその前段階、下選別される出荷できないイモたちだった。
小さすぎるわけじゃない、腐れてもいない、ただ表面がゴツゴツ不格好でツルンとイケメンじゃない、それだけだ…けれど。
「だって誰も買ってくれないよ、皮が剥きにくいから…それ持って帰って食べてみて、味はいいんだけどネ」
ぼくがナットクできない顔をしていたからだろう、そう言われた。
言われたとおり、手ずから料理して味わった。旨かった。
でも、たしかに皮むきには手をやかされた。売れない理由はワカッタ。
キュウリ農家で、育ち始めた実の曲がりかけたのに、ひとつひとつ錘〔おもり〕をつけているお百姓さんがいた。
「真っ直ぐのでないとダメなんだもの、スーパーのトレイに入らなきゃいけないからね」
曲ったキュウリは末成〔うらなり〕なんだと、ぼくなんかも半可通に信じてきたけれど、「それだけでもないんだ、研究してるよ育てながらさぁ」と彼はニヤッと笑った。
「あまり野菜は好きじゃない、美味しいと思ったことがないからだと思う」
ぼくが正直に告白したら、心底、気の毒そうな顔をして、まず自分のところで育てた野菜をナマで齧らせ、 それからしばらくの間、季節々々の収穫を届けてくださったお百姓さんがあった。
「いい油がちょこっとあるの、ワカるでしょ…野菜の味だってきめては油分、もちろん水分もだいじだけど、てきとうに油っ気がないとね、パッサパサじゃいけない」
その〝野菜の油っ気〟が舌に味わえるようになって、ごくいたずらにだが、ボクも野菜づくりを真似るようになった。
油といちばんに相性がいいのは、水もたっぷり欲しがるナス。じぶんの持ち油と、いい料理油とがハイタッチして、味わい躍り上がる。
キュウリは「水っぽい」のが軽んじられる。なるほど、ほとんどが水分(95%以上)で栄養価は低いが、あの歯ごたえ舌ざわりにはバカにできないものがある。底力というか地力というか……
ぼくん家の、短冊みたいな痩せ小畑では1株を育てるのが精々だけれど、キュウリはめげずによく育つ。朝採りを怠けたりするとたちまちお化けキュウリになる。曲るやつもあるが、錘はつけない。
梅雨から初夏のこの季節は、毎日キュウリ。サラダでも重要な脇をかためる役(けして主役ではない)にたち、叩きキュウリほか、さまざまな皿のにぎわい。胡麻とも、油とも相性がいい。
◆乾性油が好き
ぼくは、油が好き。
ぼくの性格は、とかく〝いきすぎ〟る。ついでに言えば、サッパリしたのが好き、ネチネチしたのは苦手だ。
揚げ物に目がなくて、ダイエットのため交際を控えめに慎んでいる、〝油っ気〟がなくなってしまわない程度に。
食の世界ばかりではない、住環境にも油脂はかかせない。
いまの塗料は、接着剤と並んでさまざまな化学物質の活躍する舞台。
人やほかの生物環境に、よくないものも多い。
ぼくが好む植物由来の塗料に、亜麻仁油・桐油・荏胡麻油などがある。
リノール酸、リノレン酸など、不飽和脂肪酸を成分とする油。〝乾性油〟と呼ばれるもので、薄い膜状に塗っておくと乾いて(酸素を吸収し透明な樹脂状になって)固まる。
植物由来の油には〝不乾性油〟というのもあって、オリーブ油・落花生油・椰子油・椿油・菜種油など。
乾性油と違って乾きにくいのは、脂肪が成分の油だからで、食世界にはいいが、ベタついて塗料には向かない。
人の身体の組成を見ると、15%くらいが油だそうだ。
油は必要なのである、たりないといけない、摂りすぎてもいけない。
油分をとるなら不飽和脂肪酸の油が佳い、知識は一般にかなり普及した。
植物由来では、アマニ油、エゴマ油。魚では青魚に含まれ、魚油も不飽和脂肪酸だ。
なかでも不飽和脂肪酸を多分に含むのがαリノレン酸(ω3脂肪酸)で、1日にスプーン1杯くらい摂れればいい。
なににかけてもいいのだが、ぼくのところではもっぱら野菜の〝おひたし〟にかけている。相性がバツグンにいい。
ところが、アマニ油やエゴマ油は、酸化しやすいから冷蔵保存が必要で、熱にも弱いから加熱料理にはつかえない。
そこで、加熱にもつよいαリノレン酸系の植物油、グリーンナッツオイルに補ってもらう。
これは熱帯ペルー、アマゾン原産のインカグリーンナッツ(サチャインチとも、トウダイグサ科の蔓草)、星形の莢からとれる実を搾ったもの。
ビタミンEも豊富に含んで、老化をふせぐ抗酸化作用があって、血行もよくしてくれる、という。
この油で揚げる天麩羅は魅力だが、油分の摂りすぎが懸念されるボクは、とりあえず、おとなしく炒め物でいただいている。
この油が、ぼく好みのサッパリ娘みたいな、ほっぺをチョンとつついてやりたいような……
溺愛しないように、控えめに付きあっていかなければならない。
*写真、(上左)はアマニ油とグリーンナッツオイル、(上右)は家で獲れた水分に油っ気も香るキュウリ、(下左)はインカグリーンナッツの実の莢、(下右)は亜麻の畑*