-No.1398-
★2017年07月20日(木曜日)
★《3.11》フクシマから → 2324日
★ オリンピック東京まで → 1100日
*梅雨が、関東地方では昨日、あけた。ザッとひと雨、驟雨のすぐ後に…といえばカラッと文句のつけようもない、ところなのだが、ことしはどうも様子が異なる。ジメつく梅雨の雨なんかキライさ…と言いつつも、あってあたりまえのものがナイのはヨクナイ気分なの。ほんと人間なんて勝手でどうにもしようのないもんダ*
◆〝ミステリーサークル〟の主
それは2012年の秋9月。
東北の被災地は《11.3.11》から1年余、まだ混乱のさなかにあって、ぼくたちもとりあえず夢中でいるしかなく、春・梅雨どき・夏と1年に都合3度の巡礼をかけまわった。
その余韻もようやくおさまってきた頃だった。
澄んだ海の底(といっても深いところではない陽の光が十分にとどいている)、砂地にパステル画か印象はふうの筆致に見える円形の模様が浮き上がり。
間もなくその空間に、小ぶりなフグ体型の魚が入って来る、パッチリした目に満足感がうかがえる。
なんとも愛らしく、ほほえましくて、つい微笑を誘われ、ジッと見入ってしまう。
番組はNHK『ダーウィンが来た! ~生きもの新伝説~』、「世紀の発見! 海底のミステリーサークル」。
日曜夜のニュースと大河ドラマの間という、ゴールデンタイム帯の人気放送だ、ご覧になった方も多かろう。
〝海底のナスカ絵〟 という見方もあったが、ぼくの連想イメージは「小鹿田〔おんだ〕焼き」に飛んだ。
愛好家も多い大分県日田市の民窯陶器、その「飛びカンナ」と呼ばれる独特の削り模様にそっくりに見えた。
魚にも造形感覚があることは、ぼくも知っていたけれど、これほどの芸の細かさは驚きだった。
ほぼ正確な円形をつくれること、放射状に約30本ほどの筋模様を、これも一定の角度での美観をもつこと。芸術家というより職人気質を思わせる。
この造形をするオスは、胸鰭や尾鰭をふるわせ、砂を掃くことで仕事を達成する。季節は春から夏にかけて、制作におよそ1週間。
円形の大きさは直径2メートルくらいあるらしい。
それは一徹に丹念な仕事ぶりであり、邪魔になるゴミのような存在も許さず、口に咥え円の外に排除する。
もちろん他者の闖入も断固としてこれを許さないのは、この劇場が巣であり、円形の中心部は着卵床だから。
オスは誘いにのったメスの首のあたりをやさしく噛んで、サークルの中心部へといざなう。メスが砂地に産んだ卵は砂粒に付着して流されることなく、1週間くらいで孵化するが、その間、新鮮な水を鰭で扇ぎ送るのはオスの役目。
オスはこの愛の巣にメスを誘い、卵を産んでもらわなければならない、そのためには美しくなければならず、したがって無事、繁殖がすめばその後は不要なもの、捨てて顧みられることもないのだった。
この不思議な海底模様は1990年代からダイバーたちに知られ、ただ、ナニモノがナンのために作ったのかが謎であったという。
それを伝え知ったNHKが、本種フグの仲間のオスが作る巣の撮影に成功したわけである。
この撮影に協力した国立科学博物館の松浦啓一博士(フグ目分類の第一人者)が〝新種〟と確信、論文を執筆して発表したのが2014年。
だから放送の時点では、これは「フグの一種」であって、まだ名はなかった。
アマミホシゾラフグ。
命名のこまかい経緯をぼくは知らないが、体長15cmほどの白く細かい水玉模様が特徴だから、いい名をもらったと言っていい。
研究者によると「白い斑点をもつフグで図形を形成する唯一の種」ということになるようだ。
その後、国際生物種探査研究所(ニューヨーク州立大学)が毎年発表する「珍しい生態などからとくに注目すべき新種トップ10」に選ばれた、という記事に接したのが2015年5月。
(ちなみに年間に報告される新種生物の数は1万8千種という…これも驚愕の数値だ)
日本から報告された新種がトップ10に選ばれるのは初めてで、しこもこの年にもう1種、ハナビラミノウミウシの仲間も選ばれたので、一気にダブル選出の快挙でもあった。
さて……
こうした感動的ないい話しのあとに、まことにキョウシュクながら、ぼくはの好奇心はすでに、つぎの興味の道を歩みはじめる。
アマミホシゾラフグには、毒があるのだろうか。
アマミホシゾラフグは、食べられるだろうか、どんな味わいであろうか。
すいません、ごめんなさい……
*なお、この項については、奄美大島南部、瀬月内町の「せとうちなんでも探検隊」ページにくわしい絵解きがあるのでご紹介しておきたい。アマミホシゾラフグの写真もそこから拝借させていただいた*
www.setouchi-bunkaisan.com