-No.1239-
★2017年02月11日(土曜日、建国記念の日)
★《3.11》フクシマから → 2165日
★ オリンピック東京まで → 1259日
◆「デブリ」という言葉は
登山用語として、少なくとも日本では、おもに山屋(登山者)やハイカー周辺に知られた、どちらかといえば特殊な用語だった。
英和辞典に「debris」と見出しがあるが、もとは「フランス語」とある。
日本に、近代登山というか、洋風登山の風を紹介したのはウォルター・ウェストン(1861~1940)、イギリスの宣教師でもあった人だが。彼の人が登山に励んだのはアルプス。
アルプスから生まれた(といってもよかろう)登山用語の多くはドイツ語だったと思うだけれど……
とまれ。
「デブリ」は「破片」の意。
登山用語では、雪崩落ちて積もった「雪の塊」や「氷の塊」のこと。また、それらによって運ばれた「岩屑」や「岩屑の小山」をも意味するようになり、さらに後には「残骸」の意味にまで敷衍されることになったらしい。
ぼくは、早くに山靴に黴をはやしたような男だから、エラそうなことを言う資格はないが。
「デブリ」は注意を要するところであっても、嫌悪されたり忌避されたりするものではなかった。
いやむしろ、大自然の営みに対する畏敬の念の対象であった。
それが、時うつっていま。
衛星やロケットの破片・残骸を指す「スペース・デブリ=宇宙ごみ」の世となり。
ついには、原子炉炉心内の核燃料が過熱・融解・破損、炉心溶融して生成するもの「炉心溶融物=核燃料デブリ=核の堆積物、ごみ」騒ぎに晒される始末となった。
「デブリ」もぜんぜんピュアなものではなくなっちまって。
「汚れっちまった哀しみに……」
ぼくは(中原)中也の詩句を想いうかべる。
「核燃料デブリ」という概念が生まれたのは、たしか1979年アメリカのスリーマイル島原発事故のあったときで。ただし、このときのデブリは上図の4の位置にとどまり、原子炉圧力容器の底を突き破ることはなくてすんだのだが……
こんど1月30日、福島第一原発2号機内のカメラ調査映像に移っていたのは、圧力容器下に溶け落ちたと見られる核燃料デブリ(と思われる)だった。
しかも、サソリ型ロボットを差し入れ調べたところ、これまでの最高濃度650ミリシーベルトという手のつけられない汚染度を突きつけられ、ついでにロボットまで使いものにならなくされてしまった……
山岳世界の「デブリ」も、ずいぶんイメージを損なわれたもので、「イメージ被害」損害賠償を請求したいくらいのものである。
「デブリ」は「残骸」から「瓦礫」の意味をも、もたされるにいたっているいま。
《11.3.11》被災東北3県のうち、岩手・宮城の2県と、福島県に負わされた負担の違い。
これまでは、岩手・宮城が「震災・津波」の被害だったのに、対して福島には「+原発重大事故」の被害が加わった…といってきた、けれど。
さらに、あらためて、つけ加えておかなければならない。
瓦礫にしても福島にだけ、「核燃料デブリ」という破天荒に厭らしいものが負わされている。