-No.1201-
★2017年01月04日(水曜日)
★《3.11》フクシマから → 2127日
★ オリンピック東京まで → 1297日
*昨年末(12月30日)で中断になっていた「ちょこっと暮らし体験」リポートを、きょうから再開します*
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
(左の写真は31年前、1985年11月「世界一」当時のロングベンチ)
◆11月13日(日)、400メートル(世界一)のロングベンチ
6時半起床。朝方は東大雪連峰が望まれたが、のち曇り、ときどき雨。
今朝もツルが3羽、東から西へと渡って?いった、この前のときはたしか西から東へ…だったが。
(まぁ…いいかぁ)
……………
十勝らしさ、とはなにか。
上士幌に来て、「ちょこっと暮らし体験」をしながら、ずっと考えていた。
いろいろあるなかで、決定打はなにかを、探っていたのだけれど。
立ち去る日が近づいて、(やっぱりこれだな)と思いきわめた。
そこ、帯広市の緑ヶ丘公園を訪れる。
”十勝の首都”ともいうべき、帯広というところ。
街のでき、そのものはさほどにも思えないが、なにより〈空間〉がいい。
ひろやかに、のびやかに、悠揚せまらないものがある。
緑の公園も多い、好印象がある。
緑ヶ丘公園は、街の中心部。
帯広駅から南西に延びる公園大通の先。
明治の世にあった帯広監獄の跡地を整備した公園は、春は桜の名所、池があり、野外ステージや多目的広場、遊具をそなえた児童遊園もある、立地環境に恵まれた総合公園といっていい。
広さ50,5ヘクタール。
メインは、そのうちの2割ほど、およそ8ヘクタールの広さをしめるグリーンパーク。
いちめん緑の芝生がさえぎるものない空を仰いでおり。
背後のカラマツ林を背にズイッと「真っつぐ」、歩くと端まで5分はかかる……
この都市公園の目玉として、1981(昭和56)年にできたのが、全長400メートルのロングベンチ。
かつては「世界一」の冠がつき、ギネスブックにも載ったそうだが、じつは、それはどうでもいい。
たいせつなのは、そのありようだ。
とにかく広い、訪れる人にもし屈託があっても、それを忘れさせ、なくさせてしまう底力のようなものが、たしかにある。
「これはいい…なんてもんじゃない…つきぬけちゃってる」
当時、完成して間もないときに、市の方に案内してもらったボクは、目を瞠ったまんま、しばらくうごけなかった。
〈ここにこそ、ふさわしい〉それだけで、ほかに評言のしようがない、ゆたかに幸せなめぐりあわせ……
〈これほど十勝らしい〉ものがほかにあるだろうか。
かつて洋酒のサントリーに、こんなすぐれたコマーシャルメッセージがあった。
「なにもたさない、なにもひかない」
自信があって、いやみがない。
いまも、あいかわらず。
誘客のため、各地でおこなわれている〈魅力づくりの画一的なたくらみ〉を思うにつけ。
ぼくが、チャンスがあればお話してきた〈観光の原点〉が、まさしくコレだった。
カネをかければいい、というものでも、他所の成功例にマネればいい、というものでもない、はっきりいえば〈気づき〉の勝負。
ひとつ帯広市にかぎらず、こぞって十勝圏の町村にはぜひ〈気づいてほしい〉と思う。
十勝の原点はなにか……
情感だけでなく、こころ(思想)から……
なお、ちなみに、この「世界一のロングベンチ」後日談。
帯広のことが話題になったとたんに、「なるほど、その手があったか」とばかり、それなら追い越せ目指せ世界一奪取、とばかりに意気ごみ、やってのけたところがある。
能登半島、富来町、増保浦海岸。
「サンセットヒルイン増保」のロングベンチは全長460.9メートル、もちろんその時点で世界一(奪取)。
帯広の世界一から6年後1987年のことだった。
能登も好きなボクは、こちら日本海のサンセットポイント・ロングベンチも訪れている、が。
正直、(あきれるほど海好きなボクが)あまり感心できなかった覚えがある。
ギネスブックのような競いモノがあるかぎり、「追い越せ」意識はやむをえないのだろう…けれど。
先例の〈気づき〉にどれくらいの敬意をはらったものかは、知らないが、その対抗意識、露骨にすぎるのはどうか、と思う。
そうして。
いまは、能登とおなじ富山県、砺波平野南砺市瑞泉寺前653.02メートルのベンチが世界一(あるいは日本一にすぎないかも知れない)だという。
(もう、どうでもいい、世界一もギネスも、いっときのお遊び…)
十勝は十勝じゃ!
あとで聞いた話しでは、能登の増保浦に世界一の座を奪われたとき、帯広でもベンチの延長の意見があったという。
でも、(抜けば、また、抜かれる)だけだ、ヤメようということになった、と。
それでこそ、おとなの十勝じゃ!
◆真鍋庭園
この日。
市街の東を流れる札内川の畔、真鍋庭園も訪れてみた。
いうまでもない冬眠のシーズン、どこも早々に閉園になったなかで、ここだけが12月上旬まで開いており。
雪見の散策としゃれてみたかったから。
出入り口のところで、犬を連れて散歩のご夫婦と出逢う。
25,000坪の園内はペット連れもオーケーだった。
ここの庭造りは、日本庭園・西洋風庭園・風景式庭園の3つで構成され、明治の開拓期から営々と積みかさねられてきたもの。
現在は、個人の樹木生産者が運営する「植物のモデルルーム」ということで、上から目線の格式ばったところのないのがうれしい。
自然を手なずけようとするのではなしに、いいところをいただきましょうか、という姿勢。
雪のなかを歩いて戻ると、テラス前の餌台に、シジュウカラとエゾリスが姿を見せていた。
丸い大きな黒目と仕草が愛らしい、が……。
ぼくは、おなじように愛らして、そのありかたもっとピュアな、エゾモモンガのほうがもっと好き。
エゾリスの絵葉書を選びながら、ぼくが「モモンガのはないの」と尋ねたら、
「ここに尻尾だけありますけど」
若い女の子の係員がひょうきんにこたえて、ストラップによさそうなモフモフ尻尾を見せてくれる。
「どうしたのコレ」
「かわいそうに食べられちゃったんでしょうねぇ、尻尾はきっと食べるところがないから…落ちてたんだと思いますでけど」
いい話しを聞かせてもらって、みちたりた気分で、写真を撮らせてもらうのも忘れて帰ってきてしまった……
◆スーパームーン
帰り道。
月が…ほぼ「満月」に思える月が、つよく、あかるく、存在感をましていた。
しばらく前から、注目をひく月になっていた。
十勝は星空のきれいなところだったが、その星たちの輝きをおしのけて夜々、その存在感を、迫力をましていく月だった。
もっといえば、昨年の秋あたりから目立ってきていた記憶が、ぼくにはある。
「スーパームーン」
新聞によれば、約70年ぶりのことになるという。
月が地球に最接近したときに満月や新月にむかえる現象で。
こんどのは、いつにもまして(14%も大きく30%も明るい)、今世紀最大規模なのだとか。
これをうけ、例によって「スーパームーン鑑賞ツアー」が企画されるなど大盛りあがりだそうだが。
いっぽうネットでは「大地震の前兆」騒ぎもおきているとか……
ぼくはこのたび、ネットを離れての旅先だから無縁だった。
そのせいか、ナニやら〈偏見の都会人〉のたわごと、としか思えず。
結果、現実に目立ったことはナニもなかった。
「スーパームーン」本番は、ぼくたちが十勝を去る翌日14日とのことだったが。
太平洋上の満月は、しずかに冴えた輝きをたたえていた……