-No.1186-
★2016年12月20日(火曜日)
★《3.11》フクシマから → 2112日
★ オリンピック東京まで → 1312日
◆11月6日(日)、積雪の「十勝晴れ」
6時、起床。
夜をこめて降りつづけたらしい雪。
地元紙はこの時期の大雪を「早すぎる冬将軍」「積雪、記録的」と報じていた。
朝方までは、まだ散ら散らしていたのがやむと、たちまち晴朗。
8時頃には、はじめて東大雪連峰がその全容をあらわす。
西のはずれがきっとニペソツ山、それから石狩岳・ユニ石狩岳とつづいて、三国峠をかかえる三国山…そこからさらに東へ、連なる山なみの間からひとつきわだって明瞭に輝く雪嶺は、あれが大雪連峰だろうか…。
外に出てみると、モデルハウスの周りに大胆なタイヤの轍。
どうやら除雪車を入れてくれたと見え、ありがたく感謝の念を抱きつつ、ここで冬を暮らす苦労が偲ばれる。
(町には高齢者宅向けに除雪費用の助成制度がある)
とりあえず、除雪車の助けに鼓舞されたかっこうで、こまかいところの雪除けをすませたら額に汗、身体にも汗。
下着を替えて出かける準備……
◆十勝の海へ
「ちょっと今日は”十勝の海”を見に行きたい」
ぼく言う、かみさん笑う。
これ、つまり、いい魚がほしい、ということ。
島国ニッポン、もちろん十勝にも沿岸があり、海もあるわけだが。
ことばとしての「十勝の海」にはまるで現実感がない…ほどに”平原”の十勝であった。
広尾町を目指す。
帯広を経て片道およそ100km。
(この距離は上士幌の町から三国峠まで約50kmの、ほぼ倍にあたる)
いずれにしても”北の大地”北海道では、これくらいは近距離の範囲だ。
音更帯広ICから道東道を少しもどって、帯広JCTから帯広広尾自動車道に入る。
東大雪の山並みも大きかったが、車窓右手に迫ってくる日高山脈の圧倒的なボリュームには、とてもかなわない。
国道236号に出て、近ごろは「宇宙〔そら〕の町」でうりだし中の大樹町。
この町には、浜大樹の漁港があったことを思いだし、道の駅「コスモール大樹」に寄ってみる。
「その勘のよさにはマケるわ」
かみさんも認める、ただ美味しいおサカナ食べたい一心。
併設のスーパーにとびこんで、ばっちり刺身用「ソイ」と、このあたりでは「タンタカ」の地方名をもつ高級カレイ「マツカワ」の半身を手に入れる。
さて、これで、この日の目的は達したわけだが。
予定どおり、さらに広尾の港まで30km弱を走ってみたのには、わけがある。
かつて、ずっと遠い若き日の1972(昭和47)年春。
ぼくは鹿児島の枕崎駅(指宿枕崎線)から、ここ北海道の広尾駅(いまはない広尾線)まで、日本列島を、当時の国鉄線区を乗り継いでの”一筆書き”
、総距離12,770kmあまりの「片道最長切符」の旅をしたことがある。
つまり、そのときのゴールの駅が広尾だったわけで、懐かしさのレベルずばぬけている。
広尾の十勝港で出逢った太平洋の碧い海は、変わりなかったが。
広尾線が廃止(1987年2月)になってからもうじき30年、町はすっかりさまがわりしており。
広尾駅のあとはいま「広尾線鉄道記念館」になっているのだけれども、あえてこのたび、ぼくは訪れなかった。
そのときはあらためて来よう…そのときがあるものかどうかも知れないが…まぁいってみれば”男の美学”みたいなものか……
◆六花の森
帰途、中札内村の「六花の森」に立ち寄る。
六花亭の包装紙といえば、スウィーツ好きでなくても知っている帯広の銘菓舗。
その十勝六花ほか、北海道の四季折々の山野草を集めて咲かせる個性派ガーデンだ。
ただし、開園は花期の春4月末から秋10月中旬まで。
とっくに閉まったあとの、いまは冬眠の季節。
そんな時季にしか見られないなにかがあるかも知れない、これも長年の勘というやつ。
その森は、思ったとおり、枯れていた。
これといって目を愉しませるものなどない、が。
なにもないのではなく、この季節にしかできない、おとなしく貯える仕事をしている。
凍える風景のなかで、明日にそなえ充実のときをすごしているのが、感じられる。
四季、手入れをかかさない名園もいいが、自然のうつろいにまかせて冬は眠りにつく庭園もまた、いいものだ。
訪れる人のない庭は、ふだんの表情でくつろいでおり、ぼくはそれで満足だった……
◆帯広競馬場
もうひとつ。
欲ばりな旅人になって、ぼくは帯広競馬場を訪ねる。
陽が西に傾いて(間にあうかどうか)だったが、週末、「ばんえい(輓曵)」のレースがあるかも知れない。
競馬場の駐車場は混んでおり、人があふれ、アナウンスの声がしていた。
馬場をのぞくと、マウンド(障害)の上をしんがりの馬橇が越えて行くところ。
この日、最後のレースに歓声がわいて、やがて鎮まった。
かみさんは、「馬がわいそう」だから、輓曵を好まない。
ぼくは、残酷とまでは思わないが馬には「酷」と感じるから、もっと負担重量を軽く、スピードを重視してほしいと思う派。
だから、競馬場の雰囲気があじわえれば、それでいい。
レースが終えて、アンニュイな空気がながれる競馬場も、わるくない。
日曜日。競馬場の空き地活用の食とショッピングの広場「とかちむら」の方が、家族連れで大賑わいの休日。
ぼくたちは、「都会と田舎」を考えながら、帰途につく。
いつも多くの人で賑わう都会は、便利だが、そのぶん人間らしさをスポイルするものがある、つまり毒だ。
それにくらべて田舎は、不便なことが多いかわりに、生活環境はそのまま薬草園のような、つまり癒しだ。
だから、田舎に暮らし、ときたま(そう遠くない)都会へ、刺激(毒)をもとめに行くのがいちばん、健康な生き方になるのであろう。
その間の距離感と、刺激のほどがムズカシイ……