-No.1158-
★2016年11月22日(火曜日)
★《3.11》フクシマから → 2084日
★ オリンピック東京まで → 1340日
◆夢をみた……
紅葉の大雪山の岩陰からひょっこり、また顔をみせたナキウサギが、せっかちにいう。
「…で、ナニがほしかったって…」
「だからさ、努力賞」
ぼくは、ボソッとした声でこたえる。
〈がんばったで賞〉とか、平仮名の〈どりょく賞〉とかじゃなくて、カチッと音がするような太い墨文字の「努力賞」ってやつ。
「一等賞じゃいけないわけ」
ナキウサギが、めんどくさそうに高い声をはりあげる。
「こまるんだよねぇ、この忙しいときにさ」
なんじゃアラレちゃんみたいに、でかい丸メガネなんかかけて、そのなかにアーモンドそっくりの黒目ひからせて。
「ここにはネ、一等賞とか努力賞とか、そういうのはないの」
ナキウサギは、いじわるく言って…つぎの瞬間。 不意にとくいの高い声をはりあげると、灌木の翳りに萎みかけた草の実をひとつめっけ。
そそくさと岩陰の奥へと運びこんでから、また、しかたなく律儀に、もどってくる。
「知ってるだろ、ぼくたちは冬眠しないからさ、ぐずぐずしないもの勝ち、さぼったやつはペケ」
やわらかそうな草をあつめて干し草の山にして、たっぷり食べて、ふかふかのベッドに寝る、これでぜんぶさ。
それだけいうと、ナキウサギのやつ、またひとこえ高く鳴いて、いなくなる。
おいてけぼりにされたボクに、うんざり、あからさまにぼやく声がある。
「きみもさぁ、やればできるんだよねぇ…ってか、ヨセやい!」