-No.1023-
★2016年07月10日(日曜日)
★《3.11》フクシマから → 1949日
★ オリンピック東京まで → 1475日
◆波照間ブルー
ランチタイムがすんで。
マイクロ観光バスで、最南端の島、波照間周遊。
海岸から一段高い一周道路からは、とうぜん、いつも目の前いっぱいに、海がゆるい弧を描いて広がっている。
「〇〇ブルー」と地名を冠した呼び名は、なるほど蠱惑的だけれど。
じつは、陽光の角度やあたりかたなど条件が微妙で、ましてや広大な海景にはなかなかなじまない。
陽の高い南方の海は、半透明に光り輝くばかり。
北には、西表の島影が幻想的なばかり。
その海景をときどきさえぎるのは、サトウキビ畑の「ざわわ」な緑だけ。
昨年の沖縄行は、ついに離島まであしをのばすことができずに、石垣や西表がずいぶん遠く思えた。
ついに生涯、目にすることのない風景かも知れない気がしたほどに。
けれども、このたび、「行く」ときめてしまったら、なんのことはなかった。
心理的に高いハードルもあれば、意志ひとつで超えられてしまうハードルもあるのが、ふとオカシイ……
「はてるま」の語源に「果てのうるま」とする説がある。
「うるま」は「琉球」、また「珊瑚礁」のことをもさす。
本島の中部東にも「うるま市」がある。
人気のない建物ひとつとに、短い滑走路が一本の、波照間空港があった。
2007年から翌年までのごく短かい期間、ここに石垣空港からの空便があったが、絶えた。
路線が復活することも、おそらくナイのだろう。
星空観測タワーがある。
日本国内では南十字星を好条件で観測できる数少ない島であり、いうまでもなく星降る島でもある。
最南端の海と星空に招かれて観光客の数も大幅に増えた…といっても、離れ小島のかなしさ、石垣や西表の客数とはくらべものにならない。
高那崎の海食崖上には、台風の荒波で打ち上げられたという、大きな珊瑚礁の岩がゴロゴロ、海景……茫漠。
ほど遠からぬところに、駐車場のある見どころは、日本最南端の碑。
旅の学生の手づくりという素朴な碑の横に、日の丸を据えただけの義理々々の碑。
近くにもうひとつ、こっちの方が立派な、日本最南端平和の碑。
さらに、測量標識のごとき、波照間之碑。
最南端の碑から海をめざして、地面には石敷きの、二匹の蛇がからまるかたちの、沖縄本土復帰記念(1972年)のモニュメント。
沖縄と本土とが二度と離れることのないように、との祈りをこめた造形が、無情の風に吹かれていた。
海へと歩くと、
「これが波照間ブルー」
潮吹き岩から覗ける海の水が、陽の光を懸命に沈ませていた。
ここから、北緯23度27分の北回帰線(夏至の太陽がこの真上を通る)まで、わずか66㎞という。
ニシ(沖縄の方言で北のこと)の砂浜に珊瑚礁の海を見おさめ。
樹陰のカフェで黒糖シロップのかき氷にひと息つけば。
日帰りツアーの、長い一日もこれでおしまい。
港の売店で、最上と評判の黒糖と、島外に出たら「まぼろし」といわれる泡盛「泡波」のミニチュアを土産に。
三度、高速船。
蹴散らす波しぶきの向こうに夕陽を透かして、すぎゆく南の島のひとつひとつを、ぼくは瞼の裡にやきつけようとしていた……