-No.1015-
★2016年07月02日(土曜日)
★《3.11》フクシマから → 1941日
★ オリンピック東京まで → 1483日
◆かるい戸惑いの石垣島
島の北端、平久保崎からは一転、南下あるのみ。
同じ道すじに、すこしなれたきた目が、草原に牛の放牧風景を見送ったり。
眠気覚ましは、ひたすらフルオープンの窓からの風。
伊原間まで戻って、西海岸へ。
道端に、目を惹く白い花がつづく。
車を寄せて見ると、葉が夾竹桃に似ていた、プロペラみたいな花のかたちも、匂いも夾竹桃に似て。
しかしあくまでも花は白い、白い花ばっかり……
あとで土地の人に尋ねると、やっぱり「オキナワキョウチクトウ」。
種子に毒があって、実に触れた手で目をこすると腫れるという。
別名の「ミフクラギ」は、「目(まぶた)がふくれる」からだとも聞いた。
そういえば、都会でも庭木に歓迎されるキョウチクトウには毒があり、それで虫がつきにくいことを想いだした。
これと似た名の植物に、「フクギ」がある。
緑の葉が密生する常緑高木で、沖縄地方の防風林・防潮林、屋敷林にも重宝されている。
つよい陽ざしを遮る緑陰がありがたいばかりでなく、水分を多く含むこの木の緑は火事の延焼防止にも役立つとされ、また滅多に枯れることがない命の木としても愛されている。
ぼくは、このフクギでできた小鳥の呼び笛をもっているが、木目のつんだ木肌の美しい木の笛の音は、とてもやさしい。
野底崎あたりまで来て、ふと、ぼくは、都会っぽい匂いを嗅いだように思った。
地図を見ると、島の周囲を波紋の広がるようにとりまくサンゴ礁模様は、とぎれることなく、あいかわらずのブルーの新色づくりに余念なく。
垢抜けた、とまではいかないものの、これっぽっちも田舎じみたようすがないのだった。
その仄かに湯あがりの肌を想わせる匂いは、リゾ-ト地域にとくゆうのもの。
沖縄本島のどこよりも、ここ石垣島にリゾートの下地の濃いことに、ぼくはおどろき。
ぎゃくに、思いっきり古里、途方もなく原風景をもとめたくなったぼくは、米原の森へと向けてハンドルをきった。
於茂登岳の麓に、石垣島と西表島のみに分布するという、天然記念物のヤエヤマヤシに逢いに。
ギランイヌビワが大地に踏ん張るみごとな板根もふくめて鬱蒼たる密林、なかからスルスルと背丈を伸ばして天空を摩すヤエヤマヤシの群落は、いっきに熱帯、いっきに太古。
ガイドの説明に耳傾けながら、若い女性のグループが、たがいの肩につかまりあって頭上を仰ぎ見ていた。
大自然は、まだまだ、人為に屈してはいなかった。
午後4時をすぎても、まだまだ、陽はたかく。
そこはかとなく都会っぽい匂いは、その後も、川平湾・底地ビーチ辺りまで、断続的につづいた。
陽にやかれ、風にふかれて、ヒリッと喉がかわいた。
今宵ホテルのビールがぼくを呼んでいた。