-No.0965-
★2016年05月13日(金曜日)
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◆木造の大工技ならニッポンのものとばかり…
NHKに「凄ワザ」なる番組がある。
いずれにしてもエンタメ系の番組、ふだんは関心の外だけれど。
「大工ワザ世界頂上決戦~日本VSドイツ」というタイトルが気になって録画、夕食後のくつろぎタイムに観た。
どちらの国からも、文化財修復にすぐれた実績をもつ、トップクラスの木工技術者が代表に選ばれ、たがいの技を競うというもの。
競技は2つ。
ひとつは、ノコギリとノミの技の、精度とスピード勝負。
もうひとつは、継手の強度を競う。
まず、ノコギリ。
ご存知の向きもあろう、日本のやり方は「引き切り」で、欧米流は「押し切り」。
そのワケは……。
日本の木材には、ヒノキなどやわらかい材質のものが多く、省エネで効率も優れた(あまり力が要らない)切り方が採用された。
いっぽう欧米には、オーク(樫)に代表される硬い材質の木が多く、恵まれた体力・腕力を生かして押し切る。
予想どおり、これはドイツが勝った。さすがの精度で、スピードが早い。
しかし、次のノミ仕事にかかると、〈精度〉がより〈細密〉な、大工というより細工に近い日本の技が逆転。
これも予想どおり。
〆の「継手」で勝負はキマリ…つまり「これはやっぱり日本のものでしょう」と、ぼくは高を括っていた。
だって、継手とか組手とかは、それこそがまさに日本的、他国の追従などゆるすまいと思われたからだが。
継手は、種類の選択も自由。
日本は「金輪継ぎ」を選んだ。
とうぜんだろう。これは日本伝統の継手のなかでも最強、あらゆる方向の強度が得られるところから、柱や梁に用いられるものだ。
(ボク自身は手がけたことがないし、やってみようと思ったところで、誰ぞ名手の手ほどきなければ無理だろうと思われる)
いかなるものなりや…の説明こまごまとしてみても、はじまるまいから、ざっと言ってしまえば。
同じ形の部材を二つ、口にT字型の目違いを加工して組み合わせ、仕上げに「栓」という楔状の材を差し込んで固定する。
唯一といってもいい弱点をあげるとすれば「曲げ」にやや弱い。
ところが、ドイツが選んだ継手もそっくり同じようなもの(名称は覚えていない)。
彼の地にも似た工夫があったことに驚き、ぼくは(これは手強そうな)と認識をあらためた。
そうして、耐荷重のテスト結果は。
なんと……ドイツの方が勝った。しかも、その決め手になったのが「栓」だったことにも、ぼくは愕然とした。
みなさんに理解してもらえるか、ワカラナイが。
カギは「繊維方向」。日本の栓は順目、繊維方向に沿った木取り。ほとんど、どんな場合でもこの木取りになっている。とうぜん縦方向につよく、横方向は弱い。
ドイツが選んだ栓は、敢えて逆目、繊維方向に対して直角の木取り。ふつうは考えられないやり方だが、「横方向に強い木取りを選んだ」という。
耐荷重テストは、継手にかかる横からの曲げ負荷である、そこをヨンだ。
あっぱれな科学的思考、これには日本も唖然、であった。
勝負は引き分けだった。
けれどもボクは、大工技ならニッポンが上と、はじめから思い決めていたから、そのショックの方が大きかった。
きっと気分は日本代表の大工さんも同じではなかったか。
思いこみはコワい……