-No.0818-
★2015年12月18日(金曜日)
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★ オリンピック東京まで → 1680日
生きものにとって、旅とはなにか。
生きものが、旅するのはなぜか。
生きることが旅、にはちがいないけれど。
動き移ろうことが旅の、主要なモチーフにちがいない。
旅しなければ、生きられないものがいる。
生きものの旅を、考えてみたい。
◆お魚だいすきスタミナ海鳥
きのうは、セグロアジサシに想いをはせた。
きょうは、カツオドリのスタミナに憧憬する。
ペリカン目カツオドリ科。
いかにも、お魚だいすき、大喰らい。
セグロアジサシとおなじく、新鮮な、生きたものしか食べない。
ぼくは、もう何度も、カツオドリの脅威的な狩りを、ネイチャーな海洋ドキュメントで観ている。
いつも、生唾ゴクリとなるのも忘れて見入り、観おわってからゴックンだ。
インド洋、大西洋、太平洋、地中海の亜熱帯海面に生き、繁殖期をのぞいて地上に降りることはない、彼らカツオドリたち。
海の表層に生きる小魚の群れを狙って、こちらは(セグロアジサシとちがって)果敢なダイビングを決行するのだが。ただやみくもに突っ込むのではない。
海面上を水平に飛び、羽ばたいて空中に静止(ホバリング)、獲物を探し、見つければすかさず急降下、潜水して捕らえる。
空中にいるときはたしかに鳥だ、けれど、海中にダイビングするときには瞬息の戦闘機に変身している。
その姿まるで『スターウォーズ』の宇宙戦闘さながら、編隊になると迫力も凄い。
しかも、無駄がない、一撃で捕らえた獲物は、すべてわが身の血肉となる。殺すだけ、みたいな殺生はしない。
たとえばアオアシカツオドリの、海中に降下するスピードはおよそ時速100Km。衝撃の少ない斜角で海面に突っ込み(このとき海水が入らないように鼻孔はふさがれているという)、魚を捕らえ、海面に浮き上がるあいだに獲物を食べおえる。
長く強大な嘴の先端には、ノコギリ状の突起があって咥えた獲物を逃さず、喰い溜め用だろうか喉に嚢までもっている。
もちろん、いつも完璧とはいかず、仕損じることもあるが、そんなときには泳いで潜り、25~30mの深さに達することもあるという。
シロカツオドリの年間漁獲量というのを計算した学者さんがいて、この鳥の仲間たちだけで推計8000トンにのぼるとか。
すばらしいスタミナ、あっぱれみごとエネルギー変換、スカッときもちいい効率のよさ。
ひとむかし前のドライブイン。
長距離トラックの運転手さんたちの、どんぶり飯にどんぶり汁の、めざましい喰らいっぷりを想いだす。
それでいて、ドライバーたちにくらべて体形はスマート。
体長60~80センチくらいで、長い翼を広げると150センチくらいになり、くさびのような尾羽も長い。
ただし、脚はちょっと短いけれど、これは愛嬌ってやつ。
渡りは、しない。
繁殖期だけ、絶海の孤島に巣づくりをする彼ら、その多くが集団営巣するが、なかにはコロニーをもたない種もあって。
アオアシカツオドリは、ひと番〔つがい〕の雌雄で独居、だれにも邪魔させない。
求愛のとき、雄は鮮やかな青色の脚(短いのが可愛い)を交互に持ち上げ、雌のまわりをダンスして魅せる。
プレゼントのつもりか、雄が小石や小枝を雌にさしだすこともあるそうで。これは現在は巣を作らないけれど、過去には作っていた頃がある、そのなごりではないか、と。 めちゃ、かわゆい。
このように大海原いっぽんの生涯でありながら。
人には、ひとときコロニー生活でたくわえた恩恵をほどこす。
彼らの糞が堆積したグアノは、貴重な天然の肥料、学校の地理で習った。
カツオドリ、日本近海では鳥島、小笠原諸島、硫黄列島などにいて。
漁業者には、下に魚の群れがいることを知らせる役にもたっている。
だから、この和名はきっと、鰹漁師の呼び名からきたものだろう。