-No.0817-
★2015年12月17日(木曜日)
★《3.11》フクシマから → 1743日
★ オリンピック東京まで → 1681日
生きものにとって、旅とはなにか。
生きものが、旅するのはなぜか。
生きることが旅、にはちがいないけれど。
動き移ろうことが旅の、主要なモチーフにちがいない。
旅しなければ、生きられないものがいる。
生きものの旅を、考えてみたい。
◆それでも地上に引力を感じつづけている
ぼくは、鳥たちに敬意と羨望をいだいている。
そして…畏怖も。
鳥族のなかでも、飛翔の能力に長けたものに、つよく魅かれる。
「4年も飛んだままでいられる鳥がいる」
大海原の上空を滑空する鳥影に、ナレーションが語りかけるのを聞いて、ぼくは感動した。
セグロアジサシが、溶けてしまいそうに速く空を翔けていた。
……………
アジサシ属は、チドリ目カモメ科。
なかでも大型のセグロアジサシは、名のとおり額・首・腹が白、背中側はほぼすべて濃い黒褐色。
体長45センチほど、翼を広げると90センチを超える。
翼と尾羽が燕のように細長く尖るスマートな外見どおり、かけはなれた飛翔能力にすぐれ、繁殖期以外の外洋にすごす間、そのほとんどを空中ですごすそうな。
飛びながら眠ることもできるらしい、というから、着地して休息をとる必要もないのであろう。
しかし…。
幼鳥は、巣立ってから繁殖できるようになるまでの約3年間をほとんど空中ですごす、とされたり。
成鳥の場合、4年ものあいだ空を飛んだままでいることができる、といわれたりすると、さすがに。
それを、だれが、どうやって確認したのか、羨望と嫉妬に彩られた疑念さえうかぶ。
食餌は。
カモメたちと違って、魚やイカの生きたものしか食べない。
狩りの仕方は、水面近くを飛びながら嘴でひろいあげるように捕食。
水面に降りたり、ダイビングすることは少ないそうだ。
それは、ワカル。
いかに水鳥とはいえ、海水に羽を濡らすこと、海中へのダイビングはエネルギーの消耗にちがいない。
それにしても…。
4時間でなく、4週間でも4ヶ月でもなくて、4年である。
そんなことが、なぜ、可能なのか。
(人なら、走りつづけることはおろか、歩きつづけることさえできまい)
セグロアジサシが進化の過程で、時間をかけ取得していった”生きる智慧”であろう。
あるいは、その生きる智慧さえも超越した、崇高な鳥族の美意識をつきつめたものでもあろうか。
ホッとするのは…。
そんなセグロアジサシたちも、けっして地上を遠離(厭離?)したわけではなく、じつはいつも地上からの引力は感じつづけており。
繁殖期になるば、離島などの草地にコロニー(集団繁殖地)をつくり、卵を産む。
ただし、それは大西洋、インド洋、太平洋(熱帯・亜熱帯の島嶼)、オーストラリア北岸で、そのほかの季節は周辺の外洋、あくまでも空に生きる。
日本には夏鳥として渡来、繁殖するといっても、小笠原諸島、南鳥島、沖縄県仲御神島〔なかのうがんじま〕などにかぎられ。
本土では稀に迷鳥として見られる程度というから、バードウォッチャーでも見た人は少ないだろう。
ぼくら、一般には遠い存在だけれど。
4年もやすまず空にいる…いつづける。