-No.0767-
★2015年10月28日(水曜日)
★《3.11》フクシマから → 1693日
高倉健没から → 352日
★ オリンピック東京まで → 1731日
衝撃であった、その″実験″が…。
◆映画『草原の実験』を観た
モンゴルを想わせる、広い広い草原なのである。
文明の外れの、その不思議に充たされた世界、ポツンと小さな家に、父と娘が暮らしている。
丹念に、タップリとした質感で切りとられ、縫いつけられていく映像が、ふと眠気を誘われるほど普遍に美しい。
台詞はない、音楽もおとなしく、効果音の領域に席をゆずっている。
淡々と、しかし意外性をふくんだ日常が、くりかえされていく。
羽化したばかりの美しい少女に、ふたりの青年が恋している。
生きる…それだけで不条理の萌芽をいっぱい、草原の風に吹きはこばせる人間世界。
まるで、半世紀ぶりに「ヌーヴェルバーグ」の波にあらわれた気分にひたった、けれど。
映像も、少女に心うばわれながら、耽美には耽らない澄明でありつづけた。
……そうして……
結末の轟音と衝撃波。
旧ソヴィエト連邦時代に、カザフスタンで実際にあったできごとに触発されて生まれた作品という。
監督は新鋭のアレクサンドル・コットという人、彼は新藤兼人『裸の島』が意識の裡にあった、ともいう。
草原の家の、風にたわんだシンボリックな一本の樹。
なるほどに、ファンタジックな現代の黙示録…。
観ておきたい映画。
ついでなから。
この作品は、第27回東京国際映画祭の最優秀芸術貢献賞というのを受賞している。