-No.0681-
★2015年08月03日(月曜日)
★《3.11》フクシマから → 1607日
(高倉健没から → 266日
★オリンピック東京まで → 1817日
*文空座の俳優、加藤武さんが亡くなった。硬派の、いわゆる〈噛みごたえ〉のある役者さんであった。役者は体が資本といっていた言葉どおり、トレーニングジムで倒れたという、さすがの86歳というべきか。ご冥福を祈りたい*
◆カンヌ映画祭パルム・ドール大賞の
大作映画を観た。
前評判どおり、大いに草臥れさせられたけれど、あとの余韻はわるくなかった。
けっして入りがいいとはいえない客席だったけれど、一人も途中で席を立つ者がなかった、監督の力量はさすが。
トルコ、カッパドキアの冬、雪という、舞台設定からして秀逸。
富める者と貧しき者、イスラム世界とそのほかの世界、男と女、愛と憎しみと赦しと、老いと若気と、エゴとプライドと…さまざまな人生の対峙をとおして描きだされ、うつろってゆく人生模様…というわけだ。
雪に閉ざされた感情が抑えきれずに曝けだされる、たがいに自我をぶつけあう登場人物たちの葛藤のおかしさ。
監督は、この映画で、ばかばかしくも憎みきれない、人間というものの滑稽な存在を笑ってほしかったようだが…。
ぼくの笑いは苦かった、ほかの席からも笑いの伝播はなかった。
シーン・シーンをつなぐのは、シューベルトのピアノソナタ第20番…。
解説によれば、監督はこの作品で賞獲りをねらった、という。
なるほど、そうか。
賞というものも、考えてみると、存外にねらわれやすい(傾向と対策のとれる)もの…かもしれなかった。
…としても、ねらって獲れるんだから、たいしたものだが。
『雪の轍〔わだち〕』
この邦題は、雪に隠されぬかるんだ轍の深さに、嵌りこんだら脱け出しがたい人生行路を、託したものか。
少なくとも、英題の『Winter Sleep』より気がきいている。
…と思うのは、ひょっとして、ぼくも泥濘の轍に嵌ったか。