-No.0558-
★2015年04月02日(木曜日)
★《3.11》フクシマから → 1484日
(高倉健没から → 143日
★オリンピック東京まで → 1940日
◆ソメイヨシノはなぜ色白
東京の”桜満開”が報じられた30日、花見の散歩にでた。
わが家の近所には、こどもの国や恩田川岸など桜の名所が少なくない。
陽気に誘われ、あわてて這い出してきた感がつよい人の波。
かんじんの桜は、よくてまだ七~八分咲きといったところ…と思ったら、それくらいの時に満開を宣言するのだという。
果物を完熟前に収穫するような、ことになっているらしい。
花見どきを見のがさないための配慮は、わかる。
桜花の季節には、きまって、春の嵐と呼びたいほどのつよい風が吹き荒れ、雨がまじることも少なくない。花見日和は稀少なのだ。
桜花のだいいちは、ソメイヨシノ。
「近ごろは花が白っぽくなっている気がする」
どこぞのニュース・キャスターがいっていた。
専門家によれば、蕾から開花までの間が短いとピンクが白に近くなる、とか。
また眼科のセンセイにいわせると、花が白っぽくなっているのではなく、見る人の眼が白っぽく感じてしまうのだ、そうな。その証拠に、白く感じる人の多くは高齢者、だとおっしゃる。
じつはボクも(近ごろの桜は色気がたりない)と思っていたのダ。
そこで、この春は桜花をしげしげと観察してみた。
そうしてワカッタことは、ソメイヨシノは蕾のピンクが濃く、これが開花した花びらにも映っているのだった。
つまり花そのものは、蕾の濃いピンクから陽に透けて白く淡くなる。
もうひとつ、あらためて気づかされるのは、桜ってのはけっこう無茶苦茶な樹だってこと。
「サクラ伐るばかウメ伐らぬばか」
なんていうけれど、気をつけて整枝してやらないと、けっしていい枝ぶりにはならない。じつに、呆れかえるばかりに、あっちゃこっちゃから、てんでんばらばらに枝が伸び放題をきわめて、収拾がつかない。
諺にいわれることも、たしかに一理はある…が。
サクラとウメ、じつは正反対どころか、似たところが多い。
どちらも”枝ぶり”を愉しむたちの樹ではなく、木肌も美しくはない。
どちらも、〈植物には無駄な枝の一本も無駄な葉の一枚もない〉という説に、ウソだと異をとなえたくなる種類の樹。
いってみれば欠点だらけの”損質”を、咲く花の美しさ、これだけで一挙に名誉挽回してしまうのであった。
人はみな、大きな枝に群れ咲く花々に気を魅かれるのだけれど、ぼくは、”胴吹き”というべき幹から直接に咲いた花に、乙女の可憐を見る。
老樹の根元から、地を這って伸びる根っこのようなところからも、健気に咲きほころぶ花があって、驚かされたりもする。
ひっくるめて、桜花、愛すべし。
散る花の、桜吹雪も潔く、美しい。
この花を見ると(日本に生まれてよかった)と思う人も少なくない。
けれども…。
その美しさゆえ、潔さゆえに、失ったもののおおきな悲しみゆえに、どうしても桜花を愛でることのできない人もいる。
桜の花は、軍歌の歌詞でも愛された。
『同期の桜』
きさまと おれとは…
同じ兵学校の 庭に咲く
咲いた花なら 散るのは覚悟
『若鷲の歌』
若い血潮の予科練の 七つボタンは 桜に錨
戦後70年。
美しい桜花ゆえに愛でることのできない人は、少なくなった。
さらに10年後、戦後80年には、のこりわずかになっているだろう。
さらに30年後、戦後100年ともなれば、きっともう、いない…。