-No.0544-
★2015年03月19日(木曜日)
★《3.11》フクシマから → 1470日
(高倉健没から → 129日
★オリンピック東京まで → 1954日
◆それはまさしく「ぽっぺん」と鳴る
「むこうから呼ばれちゃうのよねぇ」
ショッピング・マニアの小母さまが仰る。
ぼくがそんな真似をしようものなら、とっくに破算だ。
…でも(おっ)という感じで、たしかにぼくにも、「むこうから呼ばれた」ように感じることが、たまぁに、ある。
平和公園の、みやげもの屋を覗いたときがそれだった。
並んだ陳列棚のひとつに、ふと目が吸い寄せられた。
(ぽっぺん)だった。
高二の春のときにも、これを見つけて懐かしかった覚えがある…たしか…。
そうだ、学科の美術で習った、歌麿の美人画の一枚に『ポッピンを吹く女(ビードロを吹く女)』というのがあったな、しかし記憶の奥はもっともっとふかい…ということは…。
小学校の友だちに医者の子がいて、女の子で、この子の家に遊びに行くと、珍しいものにお目にかかれることが多かったから、そのひとつだったかも知れない。
とにかく「ポッピン」なんかではなくて、それはボクたちに「ぽっぺん」と呼ばれ親しまれた。
名前からもわかるように、鳴りものの玩具。
細い管のついたフラスコのような形のガラス製で、底のところが極く薄いガラス膜になっており、管の先っぽを咥えて息を吹いたり吸ったりすると、音がする。
弾力のある薄いガラス膜が、呼吸による気圧差で凹凸するわけだ。
調べてみると、「ぽぴん」「ぽんぴん」「ぽっぴん」またガラス製であることから「びーどろ」などとも呼ばれるとあったが、うんにゃ、あれは音の鳴り方からして、やっぱり「ぽっぺん」以外のなにものでもなかった。
なにを隠そう、ぼくは若き日の文通相手(いうまでもない女子高生)に、歌麿の浮世絵の絵柄を脳裡に描きつつ、送り届けたことまで、想いだしてしまって。
(やれやれ)頭にやった手を振って、かみさんに声をかけた。
「どう、ひとつ買ってあげようか」
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*ものの本によれば、この玩具は厄祓いの願かけに鳴らされることもあったとのこと、筥崎宮(福岡県)の放生会では「ちゃんぽん」と呼ばれ頒布されている、という。もちろん長崎名物の麺料理とは関係ないそうだが、ボクにはとても興味深い*