-No.0418-
★2014年11月13日(木曜日)
★《3.11》フクシマから → 1344日
(高倉健没から → 3日)
★オリンピック東京まで → 2080日
◆刺身で“一本立ち”を祝う
「紅玉」の「焼きリンゴ」で味わった幸せに、うれしい追っかけがつづいた。
こんどの宅配便はデーンと、発泡スチロールの大長箱である。
「やぁ、来たな」
ボクは咄嗟に満悦の笑み。
送り状は、土佐から。
品名欄には、「魚」。
土佐の魚なら、まず「カツオ」だろう…と思う。
が、氷詰めのなかから顔を見せたのはマグロ系。
カンパチとかヒラマサの、ブリ系ともちがう。
早速に、お礼の電話を入れると、
「ぼくが釣ったキハダです」
活発な漁師声が返ってきた。
「カツオ送りたかったけど、今年はよくなくってね」
そうそう、そういえば今シーズンは、東京の魚屋なんかでもカツオはとんと景気がよくなかったナ。
彼、D君は、東京でのサラリーマン生活をし遂げてから、漁師になる決心をして故郷に帰った。
感激屋のボクは驚きもし、しかし、ピュアな一本気の、彼らしさが痛快でもあって、祝いの酒とともにエールを送ったのだった。
船舶の免許をとり、地元漁協に申請をし、先輩漁師の指導を仰ぎ、などなど…思ったよりもずっとたいへんな手続きを経て、この春にやっと“一本立ち”をした。
といっても彼の故郷がまた、半端ではなく不便なところで、宿毛の港から船で渡る沖の島の、そのまた離れ小島の鵜来島というところ。
土佐の釣り人たちの間でさえ、「あそこはタイヘンとこ」といわれている。
漁師としての試練も、すでにさまざまあったようで、「ヒヤリ」も怪我もたっぷり経験したらしい。
そんな彼の苦労話に、このところ酒疲れ気味だったぼくにも、ピーンといい感じの気合いが入った。
久しぶりに出刃(包丁)の大きなヤツと、大物さばき専用の俎板を引っ張り出して、体長50センチばかりのキハダを解体、三枚におろした。
キハダは「黄肌」と書いて、たしかに身質も黄色みを帯びて見えるのだが、他のマグロ類と区別しやすい特徴としては、第二背鰭と尻鰭が黄色いこと。
だから「黄旗」がいいのではないかと、ぼくは思っている。漁師の見方にも近いのではないか。
マグロ族のなかでもキハダは、成長の早い重要な食用魚で、中型のマグロとはいえ、大きくなれば近海ものでも1.5メートル、重さ70キロくらいにはなる。
「血の匂いを味わう」のがクロマグロとすれば、キハダマグロは頭から尾までほぼおなじ透明感のある赤身で、脂肪が少なく締って弾力のある食感が持ち味。
涼しい「秋のマグロ」といっても過言ではなく、どちらかというと西日本で人気の高い魚だ。
食用資源としては、ビンナガと共にツナ缶の材料で、漁獲量もわが国ではメバチに次いで多い(世界的には最多漁獲種)のである。
「魚好き、刺身派」のボクらは、その晩、とうぜん刺身三昧に酔う。
「幸せすぎるわねぇ、いいのかしら」と、かみさんはため息。
明くる日、運のいいときに訪ねてきた友人二人が、刺身とカルパッチョのおすそ分けにあずかった。 キハダのクセのない肉質は、焼いても、揚げても、イケルくち。洋風料理にも似合う。
ボクはD君の“一本立ち”祝いに、また酒を送ろうと思う。
こんどはダブル(2本)でいかねばなるまい。