どこゆきカウントダウンー2020ー

2020年7月24日、東京オリンピック開会のファンファーレが鳴りわたるとき…には、《3.11》震災大津波からの復興を讃える高らかな大合唱が付いていてほしい。

 迫真は地元にあり、整いすぎの大都会  −東京・横浜で開かれた《3.11》写真展三つ−






◆見映えよく…することなのか


 《3・11》から二年…がたって、新聞やテレビの関連報道は予想どおり多彩をきわめた。
 ぼくは、その一つ一つを、テレビの録画・再生も駆使して、できるだけ努めて見た。
 それぞれの取り組み方の評価をするより、自らの記憶の襞をあらためて確認し、刻み直すためであった。
 正直、記憶は思ったよりずっと薄れていた。さらに、新たに刻みつけられたコトも、少なくなかった。


 写真展の企画もいろいろあったなかから、同じに「東日本大震災報道写真展」と「リメンバー大槌」の二つを見た。
 写真展をハシゴする気になったのは、両会場が歩いてすぐの近さにあったからだ。展示を見るのにも、けっこうエネルギーがいる。
 熱心な人たちがいて、食い入るように見つめ…しかし関心を持ちつづける人はすでに多くなかった…。


 「報道写真展」を見ているうちに、(ちょっと違うんじゃないか…)という思いがこみあげてきた。
 見た目すっきりスマートな展覧が、あまりにも都会的に整いすぎていたからだ。(なにをスマシてるんだぃ、まだ終えちゃいないんだぜ)だった。
 なかなか復興の進まない現地の状況とは、ギャップがおおきかった。

 
 もうひとつの「リメンバー大槌」の方には、撮った人にも、見る人にも、地元ならではの匂いがあった。
 けれどもやっぱり、展示の仕方はどこかヨソユキ…。
 過去の帳〔とばり〕の向うに追いやられることを拒否しつづける《3・11》。
 それを伝える展示にはそれなりの工夫が、たとえば「壁新聞」ふうの臨場感とか…が欲しかったな、と。


  *「東日本大震災報道写真展」有楽町朝日ギャラリー(有楽町マリオン11階)3月1日〜13日
  *写真・企画展「リメンバー大槌」交通会館2階(有楽町駅前)2月24日〜3月2日


◆ゆるぎなし、地元紙の熱き血潮


 前記、二つの写真展、会場に置かれてあった案内パンフのなかに(これも見ておかねば…)の催しがあった。
 「再生への道 −地元紙が伝える東日本大震災−」
 琴線にふれた…。
 場所は日本新聞博物館、横浜の日本大通り横浜情報文化センター内にある。


 全国紙がすべてのような大都会東京に居るぼくは、それだけに、いつも地元紙を意識してきた。《3.11》後も…。
 これは、ひとつには新聞学科というところを卒たせいだろう。
 もうひとつには、中央集権のイヤらしさが鼻につき、地虫の声が耳に恋しかったせいである。
 天命のように旅が好きで、旅先ではきまって真っ先に地元紙を手にする。
 国鉄時代の青春行脚「片道最長切符」の旅では、携えた父親ゆずりの皮のトランクに沿線各地元紙の社名を切り抜いてペタペタ貼り付けて行った。
 新毎(信濃毎日)の記者が名乗ったら「新米の記者と間違われた」なんて話が、その頃はあって…そういえば当時は“地方紙”と呼んで、そこにはやや差別的な語感もあった。
 “地元紙”の表現に出逢って、ぼくは人知れずホッとした記憶もある。


 しかし日常の暮らしは、なかなか、全国各々の地元紙との縁は遠い。
 東京の地元紙、東京新聞の購読がせめてものところだった…。


 厳しい寒さつづきの日々から、いっきに怒涛の春到来…となった3月19日に、汗ばむ肌をはこんで行った。
 東北の地元紙4紙「岩手日報」「河北新報」「福島民報」「福島民友」の、折々の紙面や号外、報道写真の展示はまことに地味で、図書館の縮刷版を見るふうであった。
 それでいて、しかし、前に見た二つの写真展のように(整いすぎ)に感じなかったのは、新聞紙面事態のもつ整理整頓が断然クッキリと先頭にあったからかも知れない。
 紙面を克明に読んでいくことはできないから、見出し中心に追っていくことになる。
 〈簡潔〉でいく見出しの置き方や字句に、あまり違いはない…けれども、当時の全国紙表現とくらべて見るとき、
 「あの町角 消えた」
 「裂かれた町 命つなぐ」
 「懸命に生きる」
 など、迫真の熱い息を感じる。全国紙に、これほどの親身はなかった。
 ほんとうなら、あの大地震と大津波に太平の夢を破られ、度肝を抜かれたのは大都会の全国紙層であったはずだが、それでもなお地元紙のナマな皮膚感覚にはおよばなかった…ということだろうか。
 福島の原発の悪夢、宮城の都邑こもごもの悲嘆…。
 なかでも岩手日報の、「避難者名簿」「津波てんでんこ」「記憶 あなたを忘れない」の企画記事が魂を揺さぶる。
 同社の記録「○○○」は、ぜひ一読にあたいすることを申し添えておきたいと思う。
 
  *「再生への道 −地元紙が伝える東日本大震災−」日本新聞博物館(横浜情報文化センター内)3月9日〜6月16日http://newspark.jp/newspark/