どこゆきカウントダウンー2020ー

2020年7月24日、東京オリンピック開会のファンファーレが鳴りわたるとき…には、《3.11》震災大津波からの復興を讃える高らかな大合唱が付いていてほしい。

 牡蠣に復興のねがい託す三陸の海幸  −牡鹿半島の岬焼かき産直セット−





◆殻付き牡蠣…無上の醍醐味


 新聞記事に、牡鹿半島宮城県石巻市)からのカキ産直情報を見つけて、とびついた。
 宮城県は、広島県に次ぐ牡蠣の産地。北部の唐桑半島には、〈山に木を植える漁師〉として勇名を馳せた畠山重篤さんたち“森は海の恋人”の有意義な活動もある。
 寒流と暖流の混じりあう三陸沖は、プランクトン豊富な“世界三大漁場”のひとつ、あらためて識っておきたい。


 鮮度保持が命の、生鮮食品の産直は、いま享受できる幸せの一極地である。
 なかでも秀逸は殻付きの貝、とりわけ牡蠣にとどめをさす。
 たくまざる“ナマのうま味ナマのあま味”に舌が精気をとりもどす。


 牡蠣という貝は、厚く層をなして積み重なる殻がフィルターを想わせるからだろうか、(毒なこの世に)不思議な安寧感を抱かせる。
 天然のカキは岩に固くへばりついているのを、バールのような鉄梃子〔かなてこ〕で抉〔こじ〕るようにして掻き取り、積層フィルター状の欠けやすい殻から、身を掻き出して喰う…から「かき」なのだそうだ。
 外見はごつごつ手ごわい殻の、中はなめらかなパール・シルクのベッドに、濃厚な“海のミルク”がプルルンとしている。


 殻付き生牡蠣、ぼくの初手の産直は伊勢志摩の“的矢〔まとや〕かき”http://www.seijyoumatoyakaki.com/だった。
 真珠の海で、独特の養殖技術で生産される〈清浄牡蠣〉には、身の縁ぺらに黒ずみがなく、なんとも気品のブルーグレー。
 この清らかさに、ことにも女性はよわく、貝の身の黒ずんだびらびらが苦手なうちのカミさんもまた然り。
 養殖場で試食するなり「これはいいわ」と声をあげ、剥きたての生牡蠣を食べたい一心のぼくは、めんどうな軍手と殻むきナイフ使いも厭〔いと〕わなかった。


◆焼かき…俗に“がんがん焼”


 狐崎浜…という民話の舞台によさそうな名の地が、牡鹿半島の中ほど石巻湾側、半島周回道路からは外れた崎にある。すぐ南の海上には“ネコの島”田代島。
 いうまでもない《3.11》被災地のひとつ、養殖施設を津波で失った。
 「岬焼かき産直セット」は、ここの「狐崎水産六次化販売」http://www.kitsunezaki.com/から。
 殻付きかき(加熱調理用・M)15個が専用の缶に入って送られてくる。缶は方形の〈天切り缶〉と呼ばれるもの、ふたに蒸気を通す穴が開いていて、中に水を入れて直火にかければ7〜8分で蒸しカキになる仕組み。
 産地の浜では「がんがん焼」などと呼ばれ(缶々焼…だろうか)たりもしているようだ。


 卓上コンロひとつあればテーブルに浜の香りがファーっと広がり、ナマと違って殻むきも楽(軍手と殻むきナイフが付いてくる)。レモンでも添えれば口福ニコニコものだし、なくったっていっこうに、さしつかえない。
 またたくまに食べおえて…缶が、殻むきナイフがのこっているのを見ると(もういっぺん)やってみたくなる。
 もちろん「おかわり生かき」の用意もあって、リピーターの「お願い」の声がうれしく励みになっている、そうな。


 ところで……
 「牡蠣」の名に〈牡〉の字がつかわれているワケ。
 ものの本によれば――イタボガキという種類は雌雄同体、同じ個体に雄(牡)と雌(牝)の性が現れ、若い時はオスが成熟するにしたがってメスが多くなるらしい、それが「牡蠣」とされた理由は、たまたま獲れたものがみな〈牡〉でメスはないものと信じられたため――という。
 はて……
 また、そうだとして、カキの雌雄はどう見分けたらいいのか、ワカラない。


 いずれにしても「カキのシーズン」とされる「Rのつく月」も、もうじき4月まで。
 これは(Rのつかない)5〜8月が産卵期にあたって味が落ち、腐りやすからでもある…というが、“夏がき”呼ばれて賞味されるものもある。
 どうも、よくワカラない。
 そのせいか、ぼくは牡蠣を見るとつい“蜃気楼”を連想してしまうのだ…。