どこゆきカウントダウンー2020ー

2020年7月24日、東京オリンピック開会のファンファーレが鳴りわたるとき…には、《3.11》震災大津波からの復興を讃える高らかな大合唱が付いていてほしい。

東北‐海洋生態系‐調査研究船

★2013年10月23日(水曜日)
★《3.11》フクシマから →  957日

★オリンピック東京まで → 2466日

*『広告批評』の天野祐吉さんが亡くなった。享年80。広告が批評の対象になること、新しい時代の訪れを知らせてくれた。消費者目線の根はやさしいコラムニスト。晩年は“原発国民投票”を文化人としてではなく(これがなかなかできにくい)、一市民の立場から訴えてきた。よき人生の先達に感謝*




◆海の復興に期待される最新鋭船

 10月19日、土曜日。
 “海の森”を訪れた翌日、こんどは晴海へ出かけた。吾ながらマメなことだ。
 「新青丸」の完成披露一般公開が晴海埠頭で行われ、研究室などを含め船内を一通り見学できるというのに魅かれた。

 被災地東北の沿岸部を繰り返し訪れながら、肝心の海の中の様子を知れないのが、なんとしても心のこりなことだった。フクシマの汚染はもちろんだが、無類の魚好きなぼくにとって漁場、漁獲、漁師たちへの気がかりは計り知れないものがある。

 あの大津波で海に運ばれ沈み積った、厖大な瓦礫によって激変したであろう海底の様子など、海洋環境をさまざまな角度から調査し、漁場を復興させるために造られた船なのである。
 (名称が長くて覚えにくいので勝手にハイフンで区切って読むと…)
 東北‐海洋生態系‐調査研究船。全長66メートル、1629トン。埠頭に係留されているのを見ると小柄ながら、ピリッと緊った実用性を感じさせる。船籍は岩手県大槌町

 設備と機能は世界最新鋭という、船内を巡って見せてもらっても正直なところは(どれもみんな高そう)な感想がせいぜいだけれど、たしかに働き良さそうだった。
 素人にもわかりやすい注目の、まず第一は「クラムボン」とかいう名の(もちろん最新鋭)小型無人探査機。ハイビジョンカメラを搭載して自在に海中・海底を動きまわることになっている。
 さまざまなサンプル採取などに活躍するウィンチ群も、大層パワフルでしかも精密な能力を持っていそうだった。
 ソナー(音響測深機)はじめ、海洋・海底・生物・地質・水質・気象など観測機器システムにしても、モニター画面を見るだけでも高レベルがうかがい知れる。漁業復興への期待がふくらむ。おおいに貢献してほしい。

 研究室の一郭には大学の研究生たちがいて、「東北マリンサイエンス拠点形成事業」(これも名称が長くてわかりづらいナ)について熱心に話してくれる。
 説明によれば同事業は、東北大学東京大学大気海洋研究所と、この船を所有する海洋開発機構を中心に、震災直後から始まった調査研究活動。老朽退役した先輩研究船にかわる後継船が「新青丸」というわけだ。
 (ちなみに海洋研究開発研究機構(JAMSTEC)というのは、先ごろダイオウイカの生態撮影に世界で初めて成功した潜水調査船「しんかい6500」の所属するところでもある)
 彼らから聞いたこぼれ話のひとつは、海底に堆積した瓦礫がかならずしも邪魔な厄介ものとはかぎらず、それどころか魚類資源の温床になっているケースさえある、というものだった。
 このちょっといい話しにはホロリとさせられた。

 もうひとつ海洋研究と直接に関係はないが、〈沈まない溺れない救命ボート〉に目をうばわれた。簡単にいえばハッチを閉めれば潜水艦みたいな気密構造になるもので、乗組員(25名ほど)を全員収容して脱出できるという。
 これなども《3.11》大津波から学んだ教訓の現われだろう。まだ豪華客船クラスにしか見られない装備である。




 
◆南海地震が予想される高知の“津波救命艇”もおなじ

 その後すぐに、よく似た映像をぼくはテレビのニュースで見ることになった。
 いざ津波というとき、近くには高台も頑丈な高いビルもなく、避難したくてもできない人たちのための“津波救命艇”として紹介されているその船は、まぎれもないあの「新青丸」の救命ボートとそっくりのものだった。

 海岸部に低平地が広く存在して甚大な津波被害が想定される高知県。
 高知市に寄贈され、高知港に近い公園に置かれた救命艇には、25人から最大(立ち乗りを含む)34人までの人が乗り込め、床下や座席下に備蓄した食料や水で1週間は生活できる。

 前長8メートル余りの艇は発泡樹脂のクッション材で船体が覆われ、秒速10メートルの津波に巻き込まれ堅固な建築物などに衝突しても壊れない設計という。ふむ。
 1艇のお値段900万円なり。
 今後の課題は、7日分の食料や水をどう更新していくか。ふむ。

 ボクが思うに、それよりもはるかに重要かつ不可欠なテーマは、いざというときに、誰が収容と締め切り決断の責務を負い、無事救出されるまでリーダーとして、いわば烏合の衆の人たちを引率するのか、ということではないだろうか……。

*写真(上左)は晴海埠頭の東北海洋生態系調査研究船「新青丸」、(上右)は小型無人探査機「クラムボン」、(下)は「新青丸」装備の救命ボート*