どこゆきカウントダウンー2020ー

2020年7月24日、東京オリンピック開会のファンファーレが鳴りわたるとき…には、《3.11》震災大津波からの復興を讃える高らかな大合唱が付いていてほしい。

マラソンの〝グラチャン=MGC〟はヨカッタ! / あとは最速ランナー分の代表キップ1枚づつ

-No.2189-
★2018年09月19日(木曜日)
★11.3.11フクシマから → 3115日
★ オリンピックTOKYOまで →  309日
★旧暦8月21日
(月齢20.1、月出20:40、月没09:41)


※きのう18日(水)は、旧暦8月20日。七十二候の「玄鳥玄(ツバメが南へ帰って行く頃」。あれほど酷かった暑さが、きのうは一転、肌寒いくらいの気温23℃でした。秋の始まりです。





◆「一発勝負」

 …のふれこみで陸上&長距離&マラソンファンの注目を浴びた、2020東京オリンピックの代表決定レース、日本選手権「マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)」が15日(日)、男女時間差スタートのオリンピックと同じコースで行われた。
 このレースで男女とも、1・2位が揃って代表に内定する。

  ……………

 戦前の予想では
 男子が出場30選手中、大迫傑(ナイキ=早大出、28)、設楽悠太(ホンダ=東洋大出、28)、井上大仁(MHPS=山梨学大出、26)、服部勇馬トヨタ自動車東洋大出、25、※写真・上右)の4人が「四天王」呼ばれて注目を浴び。
 あとは26人のなかから誰が勝負に絡んでくるか…。

 女子は、出場10選手中、鈴木亜由子日本郵政、27、※写真・中右)、松田瑞生ダイハツ、24)の2強に、くわえて好調の前田穂南天満屋、23、※写真・中左)、それにベテランの福士加代子(ワコール、37)あたりが絡んでくるか…。

  ……………
 
 さて、本番。
 男子のレース。

 直前の国家斉唱で、小渕健太郎コブクロ)さんの声が裏返るアクシデント?があって、選手たちの緊張していた顔に(えっ…)戸惑いがひろがる。

 つづいて、スタートの号砲が一発で鳴らず…2分くらい待たされる。
 選手ばかりか、観衆も、関係者も…みな、いちようにキンチョーの様子。

 このハプニングが(えぃ!)とばかり、一気にスウィッチ・オンにしてしまったのか(…どうか)、設楽悠太がスタ-ト直後から飛び出して、いきなり主導権をにぎる。このへん、いかにもマイペース男らしい。
 オール緊張状態のなかにあって、ひとりリラックスの笑みを泛べた表情に見えたから、前日、記者会見での発言どおり(きめていた)のかも知れない。

 5km、10km、15km、20kmと、東京の銀座・浅草といった目抜き通りを、日本新記録のペースでひとり旅。
 いい度胸だ、と思った。
 というか、これが彼の設定した〈世界と闘えるランナーの条件〉だったのだろう。
 だから、この代表決定レースを、まず、ぶっちぎりで勝たなきゃいけない。
 
 それでも、ぼくは、5kmくらいまでは状況(自分の調子やほかの選手たちの動向)をたしかめてから、「行く」のではないかと思っていた。
 設楽くんは、もともと、(もちろん先頭を)ひとりで走るのが好きなタイプだ。
 調子もヨカッタのだろう。 
 きっと、いい気もちだったろう。
 ぼくにも、これは(イケてしまうかも知れない)気がしてきた。

 ただ、スタ-ト時の気温27℃近く、湿度も60%以上。
 解説の高岡寿成(元マラソン日本記録保持者)さんが「選手にとっては(蒸し)暑い」と言っていた。
 気温はレース中、いうまでもない、もっと上がった。

 この設楽くんの飛び出しスパートが、ほかの選手たちに与えた心理的な影響も大きかったはずで。
 だれにも、(このままイカれてしまうかも…とすれば、のこる代表枠はあとひとつ)のプレッシャーがあったろう。
 走っている間は、(じぶんが勝つこと以外)ナニも考えないのが鉄則。疲労は脳から始まる。
 設楽くんは、おそらく無心。2位集団の選手たちには、余計な脳疲労。これはデカい。

 それが、とくにストイックなタイプの大迫くんには、響いたのではないか。
 どうも調子がよくなかったらしい、井上くんにもきっと……
 
 その後の展開は
 スタート直後から飛ばして独走、一時は2位グループに2分以上もの差をつけた設楽くんが、やはり暑さのせいか、中間点をすぎたあたりから徐々にぺ-スダウン。
 ここからが、後続ランナーの〈見せどころ〉だったが、神野大地(青山学大出=セルソース、26)、佐藤悠基東海大出=日清食品、32)、中本健太郎(拓大出=安川電機、36)ほか、いずれも十分な見せ場はつくれないままに後退。 

 設楽が30kmすぎから失速状態になるなか、勝負どころとされた37km付近、上り坂にかかるあたりで、ついに2位集団につかまり抜かれたときの表情には、もう余力がのこっていなかった(設楽2時間16分9秒の14位)。

 結局は、(設楽が脱落して)2つの代表の座をあらそうことになった、2位集団9人のなかから、最後にのこったのは、大迫、服部、中村匠吾(駒大出=富士通、26歳、※写真・上左)の3人。

 ラスト800mの最後の上り坂を制して勝ったのは中村(2時間11分28秒)くん。人一倍、暑さにはつよいこと。くわえてノーマークに近い位置にいたことが幸いしたか、自身26歳最後の日をマラソン初優勝で飾ることができ。
 瀬古(陸連マラソン強化戦略プロジェクトリーダー)さんに「あの3段スパートはすごかった」と言わしめた迫力には、ほんとに目を瞠らされ。
 ゴール後、母校駒大の恩師、大八木弘明監督と抱き合う姿がさわやかでもあった。
 
「つよい気持ちで冷静に」、かじりついて2位に入ったのは、(間に合ったぁ)感じの服部(2時間11分36秒)くん。
 
「最低限の最低限…、最後の脚がのこっていなかった…、力負け…まだ心の弱さがある」
 大学の先輩、瀬古タイプのクレバーが持ち味の男、日本記録保持者の大迫くんが、〝代表保留〟の悩ましい3位(2時間11分41秒)。

 (いるとすれば…)勝負の神さまの〈匙かげん〉、なかなか…隠し味のシオがピリッと効いていた……

 勝負どころの最後の上り坂で、選手の蹴る足もとがクローズアップされるなか、目立ったのがピンクの厚底「ナイキ」のシューズ。
 男子上位3人にくわえて、女子2位の鈴木もこのシューズだった。

  ……………





 女子のレースは、20分後にスタート。
 気温は、すでに31℃を超えて…苛酷。

 こちらは、人数が少なかった分、波乱も少なく。
 しかし…(まんがいち〝代表保留〟の3位になった場合を考えると、できるかぎりいいタイムで走っておきたい)思いが共通してあったのだろう。
 すでに気温28℃の暑さのなか、レースはハイペースで展開。

 …といっても、わずか10人。
 第1集団も第2集団もない、先頭グループからこぼれたら「はい、さよなら」みたいに寂しい。

 その1人に、前評判の高かった松田が入ってしまう。
 15kmすぎから遅れはじめたのは、緊張で自慢の筋肉が縮んでしまったのか、走りがギクシャクするばかりで後退。

 女子で、最初から仕掛けてイクとしたら加代ちゃん(福士)かと思っていたのだけれど…こちらも走りに冴えがない。トシかな(ゴメン!…)。 

 20kmすぎの銀座通りで抜け出した前田が、追う鈴木との差をじりじりと広げ、
「気がついたら誰もついてきていなかった…」
 好調そのままに行け行けどんどん、最後は独走でフィニッシュ(優勝タイム2時間25分15秒)。

 2位で代表内定の鈴木は、タイム2時間29分02秒と、4分近くも遅れ。暑さと終盤の上り坂に喘いだ。

 ドラマだったのは、3位で〝代表保留〟の小原玲天満屋、29)。
 最後の猛追も「もう足が千切れそう」で、鈴木に4秒遅れの2時間29分06秒。
「またやらかした、首の皮一枚つながる結果」と苦笑いのワケは、2016年名古屋ウィメンズマラソンで自己ベストの2時間23分20秒をマークしながら、2位の田中智美(第一生命、31)に1秒およばず、惜しくも五輪代表を逃していたからだ。
 
 (いるとすれば…)勝負の神さま、女子の場合はその〈匙かげん〉、ちと…サビが効きすぎた、といえる…が。

 闘い済んで、「すっきり」気分。
 アレコレ議論はあるようだけれど、いっさい依怙贔屓〔えこひいき〕なしの(コレでいい)のではないか。

◆のこり1枚の代表キップに賭ける

 さぁ、これで。
 のこる代表キップは、男女各1枚。

 このMGCでの2枚が「最強キップ」なら、もう1枚は「最速キップ」になる。
 選考条件は、来年3月まで陸連指定の各3レース「ファイナルチャレンジ」で、設定された〈タイムを満たして、かつ最速〉の選手に。該当者がなければMGC3位(男子=大迫、女子=小原)の選手に決まる。

【設定タイム】は
 〇男子2時間5分49秒大迫傑日本記録更新タイム)
 〇女子2時間22分22秒日本記録野口みずきの2時間19分12秒)

 はっきり言って、男子の方がハードルが高い。そのかわり、日本記録が出せれば1億円のボーナスとダブル獲得なのだから。魅力もデカい。

 MGCで結果を出せなかった選手の、ほとんどがチャレンジしてくるだろうし。
 実業団長距離界の雄、ここまで音無しできた旭化成勢も、まさか黙ってはいまい。
 すっかり「箱根駅伝」組に席巻された感のあるここまで、他の出身選手が巻き返すか、箱根組でキマリかも興味ぶかい。

 みずからの記録破りに挑むか、オリンピックへの調整をしながらひたすら待つか、ハムレットの心境は、大迫くんだろう。
 瀬古さんほか多くの関係者は「出ない方がいいと思う」らしいが、青学大の原監督は「大迫くんも、服部くんも、悔いのないよう走ったほうがいい」という。
 亡くなった『ゴールへ駆けたガキ大将』の小出義雄監督なら、さて、どう言うか。

 いずれにしても、考え方は人それぞれ。
 本人に「悔い」がなければ、それでいいと思う。
 (他人がごちゃごちゃ言うことはなかろう)

 注目は、むしろ、設楽くん。
 MGCのレースプランについて、後悔は「ないです」とキッパリ言ったのはいい。
 あとのことを「今は考えたくない」のも、正直なところだったろう。

 大方の見方は、「新記録をねらえる一番手、とうぜん走る」。
 彼は、実業団(ホンダ)の所属だから、その意味でもチャレンジしない選択肢はなさそうに見える。
 しかし……。
 
 設楽くんは、〝真夏〟の〝湿度も高い〟マラソンランナーにとって〝最悪のレース環境〟を、本心どう思っているか。
 マイペースの彼ならではの思考があるはずで…「走らない」選択もありそうな気がするし…それこそがサイコーに彼らしい気もする。

 たとえば、あえてオリンピックを回避、これからは「世界新記録のねらえるレースを選んで走る」宣言をするとか……
 この場合も、本人に「悔い」のない選択でいい…とぼくは思う。

 女子は、男子にくらべるとハードルは低いし、主要な選手たちはみんな、加代ちゃん(福士選手)も含めて「いっぱつ」ねらってくるんじゃありませんか!

◆それよりもヤッパリ〝暑熱対策〟でしょう!

 15日、MGCのレースで一番に痛感させられたのは、ヤッパリというかキッパリ、「なんとかならんか、この暑さ」だった。

 それでも男子の方は、スタート時間が早かったこともあって、まぁ…なんとか大過なくすんだけれども。
 女子の方は、スタート時点ですでに30℃。

 ほとんどの選手が暑さに苦しみ、ゴール後、優勝の前田は脱水症状で病院に運ばれ、2位の鈴木もインタビュー台に上がるとき段差に躓きかけ、3位の小原は頽〔くずお〕れて膝をつき、しばらくは立つことができなかった……
 
 このオリンピック・マラソンコースは、いうまでもなく話題の「遮熱性舗装」だったはずだが…「コースが走りやすくて助かった」という声を、ぼくは聞いていない。
 路面からの反射も軽減されることはなかったようで、多くの選手がサングラスを手放せなかったのは、気の毒だった。

 レースの翌日は、しのぎやすい曇りがちの天候で。
「きょうの天気なら、設楽くんの独走は成功していたかも…」
 関係者からは、そんな声もあったくらいだ。

 いまは、屋外競技の選手たち向けに、精細な気象の予報サービスもある。
 選手諸君には、暑熱対策にくわえて天候対策も、ぜひ、怠らないでほしい。

  ……………

 ところで
 2020TOKYOのマラソンで、日本にメダルのメはあるか?
 これ(KGCの結果)で「可能性はでてきた」とヨイショする向きもあるようだけれど、ぼくはアマイと思う。
 
 レース後、代表内定選手の口からそんなふんいきにつながる発言はなかったし。
 正直、まだ世界との差はあるよネ。
 地元の利で、やっと銅メダルに手がとどくかどうか…ってとこじゃないデスか。