どこゆきカウントダウンー2020ー

2020年7月24日、東京オリンピック開会のファンファーレが鳴りわたるとき…には、《3.11》震災大津波からの復興を讃える高らかな大合唱が付いていてほしい。

ちょっとヒトコト…フタコト…ミコト ~No.71~  麦藁のヒミツ

-No.2124-
★2018年07月16日(火曜日)
★11.3.11フクシマから → 3050日
★ オリンピックTOKYOまで →  374日
★旧暦6月14日、満月に1日
(月齢13.7、月出18:33、月没03:41)


※先週の土曜13日は、旧暦6月5日。お盆。また七十二候の「蓮始開(蓮の花が開き始める)」だった。蓮の花は、文句なしに〝いい〟けれど…その前に、このシツコく鬱陶しい梅雨空をなんとかしてほしい(身体のシステムにカビが生えそうでクサクサする)!








★麦わら帽子が恋しい★

  〽黄色い麦わら帽子の 女の子

 松崎しげるの、この唄が。 
 なぜか歌手本人の、漁師そこのけに陽焼けした顔と、ともに懐かしい季節だ……けれども。

 ことしはなかなか、そんな風情の空になってくれない。
 (気温が25度にもとどかない日がずいぶんつづいた!)
 いささか、待ちかねた…ので、話題を先行提供させていただこう。

  ……………

 まず、はじめに「ストロー」というのがあった。
 あれは、かつて、ほんものの「麦わら」だったのをご存じだろうか。

 ぼくら戦後すぐ世代まで、(都会生活者には…)幼児体験にのこっている。
 さすがに庶民の家にまではなかったが、しゃれたお店(レストランとか)で飲む清涼飲料水とかパフェとか、もっとざっくばらんなところでは「かき氷」に、スプーンとセットで添えられていたりした。

 いまのプラスチック・ストローしか知らない世代には、(信じられない)話しかも知れないが、その〈麦わら純正ストロー〉は、口あたりやわらかく、おまけに、ほんのり「お日さま」の匂いがした。
 じつは、「麦わら」にひそむ親和感のもとは、この「お日さま」のぬくもりなのであった。

「麦わらのストロー」が、いつ頃からプラスチック(ポリプロピレン)に替わったかは、ぼくにもハッキリした記憶はない。
 ものの本によると、1950年代後半までは、喫茶店やカフェで「麦わらストロー」は使われていた…という。そうだったかも知れない……
 たしか、ウェートレスさんがお盆にのせてきてくれる飲み物のコップに、袋入りの「麦わらストロー」が(コップの水滴を利用して)縦に吸い付けられてきたっけな……

 それから半世紀余の時を経て、いま地球はプラスチック汚染の脅威に曝されることになり、日本の大手外(飲)食チェーンなどにも脱プラスチックのうごきがある。
 代替品として、さまざまな素材が提案されているが、口あたり感でいくと、やはり「紙のストロー」がいまのところ後継一番候補であるらしい。

 ……でも、それならどうだろう。
 思いきって、元祖「麦わらストロー」に復活してもらうのが、最良の道ではないのだろうか。
 それが麦の増産にむすびつけられるようなら、食糧自給率のアップにも貢献できる。

  ……………

 それはさておき。
「麦わら」話は、いよいよ本格的な〈材料編〉に入る。

  ……………  

 真田の郷(長野県上田市)を訪ねたとき。
 真田家の旗印(家紋)「六連銭〔むつれんせん〕」を確認すると、すぐに、ぼくの興味は「真田紐」の工房を探すことに移った。

 諸国の物産には、だれもが魅かれるわけで、それじたいは珍しいことではない、けれども。
 いきなり「紐」というのが変わっている…といえば、なるほど、それもそうで。
 ぼく自身、何故かを考えると、理解にくるしむ。

 猿飛佐助に霧隠才蔵三好清海入道根津甚八…あの『真田十勇士』の物語世界から、一気に「真田紐」のそのわけは、きっと、母方のお爺ちゃんが遠因にちがいない。
 とうぜんのごとく昔気質であった、この人は、あれこれの智慧で孫を驚かせてくれた、わけだけれど。

 印象に深いそのひとつが煙管〔きせる〕掃除に使う「紙縒〔こよ〕り」づくりであり。
 もうひとつが、茶器だか装飾品だかを納める桐箱を、真田紐で魔法のようにみごとに十文字にきっちり括〔くくり〕りあげる術であった。

 そのときの語り草(種)が、「丈夫な真田紐の効用」であり、「むかしの武士は腰の刀の下げ緒〔お〕にしたもんだ」と、呪文のような託宣であった。

 以来、「真田紐」はぼくのなかで、日本人の肌に馴染んで緩みない最上のヒモ…として定着。
 産地を訪れる折あらば、よくよく確かめて吾が身に着けようと決めていた。
 そのときに購入した真田紐は、いまも手もとにある。

  ……………

 つぎに、親しく〈真田〉が登場することになったのは、結婚後。
 帽子づくりをするカミさんが、その材料に「麦稈〔ばっかん〕真田」というのを持っていた。

 「麦稈」というのは「麦藁」で、「麦稈真田」は「平らにつぶした麦わらを真田紐のように丈夫に編んだ紐状の材料」。これを渦巻き状に縫って仕上げる帽子が「ブレードハット」、和風にいえば「麦稈帽」、洋風にいえば「ストローハット」だ。

 「麦稈帽」と「ストローハット」。材料は一緒でも、まるで印象に天地の差が出る。
 「麦稈帽」のほうは、いまでも農機具店やホームセンターなどで売っている作業用、陽除け目的の「麦わら帽子」であり。
 一方「ストローハット」になると、たとえばブロードウェイなどスポットライトのあたる舞台で、エンターテナーたちがタップを踏みながら、片手でひらひら頭上にかざす、あの「カンカン帽」なのであった!

 いずれにしても、「麦わら帽子」というのが、いまだに廃〔すた〕れる
ことなく、それどころかサマーシーズン(バカンス)の定番帽子として人気高くありつづけるのは、ひとえに「麦わら(麦稈)」の黄味を帯びたやわらかな色艶と、幼なごころをゆさぶる素朴感にあることは、まちがいない。

 日本では、いまでも埼玉県(春日部市)と岡山県に専業メーカーが存在している。

  ……………

 もうひとつ、「麦わら」で想いだすのは、城崎温泉兵庫県)の工芸品「麦わら細工」。
 さまざまに彩色された麦わらを材料に、綿密な細工を丹念にほどこして仕上げる高級品から、ぼくらが子どもの頃から女の子たちによろこばれた「指輪」まで、いまも、ほのぼのとした味わいを訪客たちに伝えている。

 これら、「帽子」や「細工もの」の材料になる「麦わら」は、いずれも「はだか麦」と呼ばれる品種のものが、もっとも藁の艶もよいという。

 また、ちなみに、「麦わら細工」に使われる糊は「そくい」とも呼ばれる飯粒を練ったもの。
 そうして、麦わらの接着は「貼る」ではなく「張る」と表現するが、これは古来、表具などの世界でも用いられてきた技法上の呼称。「ゆるみなく、ひきしめる」意味合いをこめた、和の手仕事である。

  ……………

 話しを「麦わら帽子」にもどそう。

 かみさんは、ぼくにもいろいろな帽子を拵えてくれ、「ストローハット」もひとつ、プレゼントしてもらっていた(上掲フォト、左)…が。
 惜しむらくは、ぼくの(ホントに欲しい!)タイプではなかった。
 それは、ぼくに「似合う」自信もなかったので、じつはガマンしてきたものなのだ、けれど。
 
 本音を言ってしまおう。
 ぼくの小さい頃からの憧れ、ほんとうに欲しかったのは、暑い夏の日に〈被る〉というより、〈軽~くのせて〉外出する「カンカン帽」であった……
 (ただ、このカンカン帽、麦稈真田のブレードを硬く締め固める…女性にはかなりキツイ作業をともなうものでもあったのダ……)