どこゆきカウントダウンー2020ー

2020年7月24日、東京オリンピック開会のファンファーレが鳴りわたるとき…には、《3.11》震災大津波からの復興を讃える高らかな大合唱が付いていてほしい。

ちょっとヒトコト…フタコト…ミコト ~No.70~  雛鳥…千仞の谷に転げ落ちる、カオジロガン

-No.2119-
★2018年07月11日(木曜日)
★11.3.11フクシマから → 3045日
★ オリンピックTOKYOまで →  379日
★旧暦6月9日
(月齢8.7、月出13:38、月没00:15)





★「獅子の子落とし」…ではないのダ★

 「獅子は吾が仔を千仞の谷に落としてその生命力を試す」
 …とする諺〔ことわざ〕というか、俗信のたぐいが むかし あった。

 これは、〈自分の子に苦しい思いをさせて力量・生命力を試し、そこから這い上がってきた者だけを育てる〉という……
 一見できすぎた話しのようで、じつは極めて乱暴でしかない、無責任きわまりないエゴイスティックな態度だ。

 現実のライオン(=獅子、という説じたい論考しなおす必要があると思う…じつは〝龍〟とおなじ想像上の動物ではなかったか)、メスは愛情たっぷりだし、じつは、オスにさほどの威厳もない。

 しかし、いまでも…まったくの死語とも言えない状況にある。
 ぼくら戦後うまれの世代でさえ、この俗信を聞き知っているし、各地の寺社の説話彫刻や庭園造作などにも、遺されてきている。

 でも、まぁ
 歌舞伎の見得〔みえ〕みたいなもん、ツミのないオーバーアクションだよネ。と思っていたら……

 -事実は小説より奇なり-

 そんな苛酷な、生存競争に賭けざるをえない生物がいるのを、知らされた。
 ネイチャー・ドキュメントのワン・シーン。
 話題の主は「カオジロガン」といって、ご覧のとおり、黒い頭部に白い顔が特徴の中型のガン(体長55~70cm、体重1~2kg)。

 白・黒・グレー3色の羽色もシックなこの鳥、繁殖地はバルト海から北極圏にかけての島々だそうで、スカンジナビア半島の国々では、ごくふつうに見られる鳥。
 グループでV字の編隊を組んで飛ぶ姿で親しまれてもいる、ともいう。

  ……………

 問題は、その繁殖地である北極圏。
 繁殖期は夏のおわりから秋のはじめ。

 苛酷の①は、「カオジロガン」の営巣場所。
 高い岩石の断崖上に巣をかけるのは、ホッキョクグマやホッキョクギツネなど肉食獣からの攻撃を避けるため、なのだろう(猛禽類に対してはどうなのか?…そこまでは知れない)。

 苛酷の②は、親鳥が雛に餌を持ち帰る習性がないこと。
 これは想像するに、草食主体の雑食ゆえに持ち帰るほど餌が豊富ではない(親が生きるだけで精いっぱい)からかも知れない。

 なにしろ、そんわけだから、生まれた雛はわずか生後2日で、地上へのダイビングという試練に立ち向かわざるをえない。餌は自分でとって食べるしかないからだ。
 どうナットクさせる…もなにもないのだろう、おそらく雛は以心伝心で察知するのにちがいない。 
 とにかく親鳥は、ひとあし先に巣を離れ、地上に舞い降りて、ぶじに雛が降りてくるのを待つばかり。

 雛はどうするか……
 飛ぶ…ほどの体力もまだないモフモフの塊にすぎないから、足もとの岩を蹴るしかない。
 蹴って空中に跳び出したら、あとはもう、風まかせ気流しだいに翻弄されながら、120mほども下の草地まで、ただ落ちて行くしかない。
 一気に下まで…行けるともかぎらないし、それがイイともかぎらない。
 途中の岩にぶつかったりしながら、毛玉のモフモフに助けられて草地に落ちて、わずかにバウンドする…これもパラシュート降下とおなじ、衝撃を和らげ助かる秘訣かも知れない。

 雛の数は多くて5~6羽くらいだろうか。
 度胸のいい(…あるいはただ能天気なだけか…)個体から順に飛び降りて、なかには、怖ごわ下を覗いてもどうにもならないことをやがて悟ってから、あきらめて飛び出す者もある……

 おそらく、雛のすべてが無事というケースは少ないのだろう、と思われるが。
 ともあれ、下で待ち構えた親鳥のもとにヨチヨチ歩きで馳せ参じることのできた者だけが、やっと親鳥のあとについて餌場へと移動できる。

 なにしろ、グズグズしている暇はないのだ。
 即死か、あるいはケガを負って動けない者は、やむをえない見捨てないことには、のこった生命さえ危ういこと(肉食獣の餌食)になるのだから。

 ぶじに地上へ降りられた雛たちが、自力で餌を食べ、飛べるようになるのは、およそ8週間後のことになる、そうな。

 まことに凄まじい……
 「カオジロガン」は結局、北極圏でも〈もっとも厳しい棲息エリアに追い込まれてしまった種〉ということになるのだろう。
 けれども、それでもめげずにガンバっている。

  ……………

 生物はいずれにしても、かぎられた環境の一部空間をえらびとって棲息し、かぎられて獲得できる食餌から栄養エネルギーを得るほかはない、のであった。
 この条件を免れえたのは、とりあえず吾らヒトだけ……か。

 (ボクは思わず、背筋をたださざるをえなかった……)