どこゆきカウントダウンー2020ー

2020年7月24日、東京オリンピック開会のファンファーレが鳴りわたるとき…には、《3.11》震災大津波からの復興を讃える高らかな大合唱が付いていてほしい。

ちょっとヒトコト…フタコト…ミコト ~No.41~  「ミノムシ」クモを凌ぐ…〝強糸〟対決

-No.2008-
★2018年03月22日(金曜日)
★11.3.11フクシマから → 2934日
★ オリンピックTOKYOまで →  490日
★旧暦2月16日、十六夜・立待月
(月齢15.8、月出19:17、月没06:35)


※昨日21日は、24節気の「春分の日」で、七十二候の「雀始巣(すずめはじめてすくう=巣をつくりはじめる)」頃。
 同時に満月。
 同時に東京では桜が開花。2月1日からの積算最高気温が、20日までの49日間で592℃、50日目の21日には612℃になりました。ピッタリ600℃を超えたら「開花」です。みごとな〝経験予報〟、地震予知にくらべたら格段にすぐれている、といえますね。




★こんどは…ミノムシだぞぅ!★

 前に、クモのお話をした。
 -No.1634-2018年3月13日(火)記事『クモの糸でバイオリン』
 blog.hatena.ne.jp
 驚くべき強靭さをもつクモの糸でヴァイオリン(名器ストラディヴァリウス)の弦をつくるという…理博で農博でもある大崎茂芳さんのチャレンジ著書を紹介しながら、クモにまつわるアレコレの話題におよんだわけだった。

 クモは、興味深く謎めいた生きものだけれど、まさか、クモの巣を張るあの糸が、それほどまでに、しなやかな強さを秘めているとか思わなかった。

 ところが、昨年末になって、また新たな研究成果が発表され、もういちどビックリさせられることになった。
 こんどは、医療品メーカー「興和」と農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)の共同研究、という。

 その成果とは、なんと「ミノムシから効率的に糸を採る技術の開発」。
 ミノムシから採れる糸の強度は、自然界で最強とされてきたクモの糸より強いことがわかり、このミノムシ糸で「繊維強化プラスチック(FRP)新素材」の実用化を目指す、とのこと。

 ミノムシの糸も、また、たんぱく質に由来する繊維。
 生分解性があり、廃棄しても環境に負荷が少なくてすむ。
 
 共同研究は、糸を吐く数10種類の昆虫(そんなにいる!)を分析した結果、巣づくりや移動するときに吐き出すミノムシ(日本在来種のオオミノガチャミノガ)の糸が、いちばん分子構造が整って強度も高いことが判明。
 切れにくさを数値化して、クモの糸の2倍以上の強度があることを解明した。
 糸を伸ばしたときの切れやすさは2分の1、引っ張ても元にもどる力は3倍近いとか。

 また、たとえば蚕〔かいこ〕は、一生に一度しか糸を吐かないが、ミノムシ(この点はクモも同じ)は生きるかぎり(寿命はおよそ1年だそうな)糸を吐き出せるから、採れる糸の量が多い…と。

 その糸の採り方というのが、また、興味深くて。
 農研機構は、ミノムシが移動するときに糸を吐き出す習性を利用、長い一本道の装置を用意することで、1匹のミノムシから100m~数100mの長さの糸を採り出す技術を考案し、量産に向けて特許を出願した、という。

 研究では、ミノムシの糸をプラスチックに加えると強度が数倍にまで高めることができ、シルク繊維に替わる素材(同程度の価格)として、自動車部品や電子部品、スポーツ用品などに応用でき、服飾用合成繊維としてもかなり有望だ、と。

★しかしヤルもんだな…★

 ぼくは思った。
 クモと同じく、ぼくは子どもの頃、ミノムシにも興味を抱いた時期があって。
 いうまでもない、それは、ミノムシが着ている(じつは袋に入っている…が正しい)<蓑>の出来がすぐれていたからだ。

 子どもの好奇心は、ときに残酷。
 ぼくも、ミノムシを木の小枝から毟りとり、<蓑>を下から搾り上げて中の虫(幼虫)を
捨ててしまったことがある。

 すると、<蓑>の出来栄えは人の作る<蓑>を遥かに凌駕して素晴らしく、なんと暖かそうな糸織ものにくるまれた温々〔ぬくぬく〕構造。
 ぴったりサイズの特注寝袋であり、ぼくは、ほとんど我を忘れてミノムシを羨んだ。

 …でありながら、ミノムシの糸が(なんとか優れモノにならんか…)とは考えもしなかったとは、ダメな奴。

 ぼくは、ミノムシの<蓑>の収集を思いたった…けれども、いざ集めだしてみると(これはイイ)と思うものは少なく、数も都市の住宅街ではかぎりがあって、いつのまにかヤメてしまい。
 中学生になってからだと思う、正倉院御物のなかに「玉虫の厨子」というのがあることを知って、ミノムシの<蓑>でナニか拵えられないか、考えてみたのも束の間のことにすぎなかった。
 
 ミノムシは、裸でいることはキケンだし、<蓑>の材料にコダワリはないらしく。
 その性質を賢察した人は、いろいろな材料を用意したなかに裸虫を入れ、好きな<蓑>をつくらせたりもしたようだが、ぼくにそんなアイディアは浮かばず。
 もうひとつ、ミノムシが小枝を移動することには気づいていながら、その移動と固定に糸を吐く(幾度も吐きつづける)ことまでは思い至らなかった…ダメな奴だった。

 ミノムシは、脱皮を繰り返して<蓑>を大きくしながら育ち、冬は<蓑>の口を塞いで冬眠する。冬、ミノムシを見つけやすいのは、枯れ枝で動かないからだ。
 
 それでも、いまでも、ミノムシに惹かれるものがあるのは、ぼくも含めて多くの人は<蓑>にくるまれた幼虫期しか知らず、成虫のミノガやチャミノガにはまるで関心が向かないことにあり。
 (ぼくも成虫のミノガを見た覚えもなければ、もちろん見分けられもしない)

 とくに、ほとんどのミノガの仲間のメスは、幼虫期のまま育っても蛾らしい姿にはならず、まったく幼虫期のままの姿で一生をおえる(羽化後は食餌をせず、オスも共に口が退化し、オスは蓑内でメスと交尾後は死に、メスは卵が孵化すると蓑の下穴から地上に落ちて死ぬそうな)らしい。
 じつに神秘的な、蠱惑的な生態ではある。

★しかしマイッタな…★

 ぼくは、文芸的な匂いが好きな性質〔たち〕だけれど、ときに、その文芸臭さに<うんざり>することもあって。

 高校に上がって、古文の時間。
 『枕草子清少納言の着想は(いいなぁ…)と思ったけれど、「蓑虫、いとあはれなり」でガクンときてしまったのを、覚えている。
「……ちちよ、ちちよ」と、はかなげに鳴く、いみじうあわれなり」

 (それはないでしょう)
 いくら科学的な考えの発達しない時代とはいえ、どういったらいいか…後頭をぽりぽり(まいったなぁ、くさいよなぁ)であった。

 それよか、松尾芭蕉の句。
   みのむしの 声をききにこよ 草の庵
 の方が断然、(蓑虫の微かなうごきを言ったものだろう)シンと深い。

 そんなミノムシを、近ごろ見ない。
 見えなくなったのは気のせいか、と思っていたら。
 ……じつは。
 オオミノガヤドリバエとやらいう外来種寄生虫>ヤドリバエによって、 ミノムシは体内から襲撃・破壊されて、絶滅に至るやも知れない危機に陥っているらしい。

 そんな、か弱な生命の機微さえも利用しようと企むヒトってのは、ナンだろう。
 生存競争の頂点に立つ者には、せめて、自然のもつ多様性への<愛>を忘れないでほしい、とオモウのだ、けれど……


もんしろちょうとみのむしの話 (幼年版 ファーブルこんちゅう記)

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みのむし―ちゃみのがのくらし

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クモの糸でバイオリン (岩波科学ライブラリー)

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