どこゆきカウントダウンー2020ー

2020年7月24日、東京オリンピック開会のファンファーレが鳴りわたるとき…には、《3.11》震災大津波からの復興を讃える高らかな大合唱が付いていてほしい。

<テーブル醤油>デラミボトル容器と…刺身醤油は「むらさき」のはなし

-No.1705-
★2018年05月23日(水曜日)
★11.3.11フクシマから → 2631日
★ オリンピックTOKYOまで →  793日

*00年度は8万トン弱だったのが、17年度には19万トンに達する勢い、というパックご飯の生産量。なんと2.4倍増。なにしろ忙しい以上に忙しがることに馴らされた現代人、単身者や高齢者の自然増が進めばとうぜんでしょう。けれども、しかし…とくに目立って伸びたのが11年、東日本大震災があってからだ…と業界関係者にいわれると、思わず首をかしげたくなってしまう。あの未曽有の天災騒ぎがあってから、パックご飯を食べるチャンスが増えて味わいのよさ認知され、<非常食>から<日常食>になった…のがホントなら、はたしてそれを、素直に喜んでいいのかどうか。だって、あれ以降、<最低3日分の非常食の用意>をした人(家庭)がどれくらい増えたものかは、正直ワカリマセンし、ね。製造法も進化して、たしかに美味しくはなりましたけど。でも、上手に釜で(電気釜でもいいじゃないですか)炊いたご飯とはチガイますもん。食文化ですからねぇ。なんか寂しいというか、どこか歪んでる気がしてなりません。*





◆悩ましき味わい…醤油

 小豆島の「ヤマロク醤油」から、再仕込み(原料2倍になる濃厚なコク味・香り)の「鶴醤〔つるひしお〕」4本と、正統派の濃口醤油「菊醤〔きくびしお〕」2本、いずれも145mlのテーブルボトル入り。
 これに、同サイズの瓶であれば詰め合わせは客の好みで自由(近ごろは杓子定規でない、こういう選択ができるのがウレシイ、いい時代になった)ということで、「ぽん酢」と出汁昆布の効いた「だし醤油」も1本ずつ入れてもらって、計8本を宅送してもらった。

 こんど、この蔵の醤油を味わってみようと思ったのは、「仕込桶」が決め手。
 現在は、日本酒にしても味噌・醤油にしても、仕込桶の近代化(?)が進んでおり、つまり、ホーローびきの桶が主流で、昔ながらの木桶は段々に姿を消しつつある。
 その趨勢のもとは、じつは桶作りにもあって、木桶職人の数が減り、桶屋も減っていた。

 ここで、先におことわりしておけば、ぼくは、なにがなんでも「木桶にかぎる」と頑固なだけの人間ではない。ホーローびきの桶(タンク)の清潔もまたよし、とする者だ。
 けれども(……)

 ぼくは、かなり腰の据わった「酒好み」を自負しており、かつては越後長岡の蔵におられた大杜氏(この人にぼくはなんと〝酒豪〟と呼ばれてしまったのだ)のもとで、吟醸造りのワンクールに特別参加、寝食をともにさせていただいたこともある。
 そのとき、麹菌の繁殖に、また醪〔もろみ〕の熟成に、木造りの蔵と木桶の効用がどれほど大きいかということを、すっかり、この身に沁みこませてしまっている。
 したがって(……)

 できることなら醸造元には、木桶仕込のよさを可能なかぎり伝えのこしてもらいたい。
 そんな思いに応えてくれている蔵の一つが、醤油ではこの「ヤマロク」さんだったからだ。
 ついでに、この蔵の半端じゃないところは、その木桶を蔵主みずからが先頭に立って自作してしまった、意気込みと剛直な精神と、だった。なかなかできることではない。https://www.facebook.com/yamaroku

 コクのある、中味の濃い、さすがの極上醤油だった。

 ところで、さて(……)
 この醤油という調味料には、つかわれる場面ごとの相性というのが介在するので、その評価、なかなかに難しく、いちがいに決めかねるところがある。

 ……………

 ぼくの記憶するところで、いちばん大きなチガイをつきつけられたのは、
「東京の人は、醤油で煮しめたような汁の蕎麦を、よう食べはりますなぁ」
 関東の<こいくち(濃口)醤油>文化を、なじって言う。
 関西の人方の、正直なおどろきに、蔑みのひとあじ垂らした証言でもあった。
 
 いわれてみればなるほど、関西系の<うどん>の汁は品がよろしい。
 出汁との相性も、よろしおすな。
 しかしながら、その<うすくち(薄口)醤油>文化、じつは塩分が濃い、それも結構きつい。

 その間、中京圏には古来<たまり>醤油の文化がのこる。
 味噌煮込みの名物料理<おでん>は<たまり>の精華といってもいい。

 ……………

 これではキリがない、ので。
 ここではひとまず、大雑把に、東日本と西日本の醤油文化にわけて見ておきたい。
 <西の醤油文化>は、主産地<兵庫>を中心にひらけたもの。
 <東の醤油文化>は、主産地<千葉>を中心にひらけたもの。

 そのチガイを、あえて、つきつめて言うなら。
 <うすくち>の<解釈>と<色あい>にある。
 その前に、いまの<うすくち>は「薄口」ではない「淡口」、(さすが、まこと日本的な)これがまず基本。

 これは、江戸時代に始まった新しい醸造法によるもので、これまでの<つよすぎた=熱帯系>の醤油の色を、日本人好みの<おだやかな=温帯系>の醤油にかえた画期的な製品。

 さらには、好んで鮮度のいい生の魚を<刺身>で味わう日本人特有の食美意識から、淡麗かつ味わい深い<再仕込み醤油>が、別に「刺身醤油」と称されて登場。
 そのルーツとされる「甘露醤油」はいまも、山口県柳井にあり、ぼくもその味わいを知っている。
https://www.sagawa-shoyu.co.jp/item/itemshoyu/

 そこで、ちなみに(……)
 ぼくん家は、江戸っ子庶民の流れながら(もとは西国、軽輩武士の末ともいう)、醤油を「〝お〟したじ(すまし汁の下味つけの意)」、また卓上醤油を「むらさき」と呼んでいた。
 日常の卓上醤油は、いうまでもない「刺身がうまい」醤油でなければならなかった。

 まさに、その「むらさき」なのであった、ぼくにとっての醤油は。
 「むらさき」は、ごく粋で品もいい<淡い赤紫色>。
 陶器の小皿に垂らして、その肌理〔きめ〕や絵柄に極くあっさりと紗をかけるほどのものでなければならない。隠してしまってはゆきすぎ、なのだ。 
 これ、江戸っ子の言う「侠〔きゃん〕」にほかならない。

 いまは、どこの醤油蔵でも「淡口醤油」や「再仕込み醤油」を造るが、その味わいと色あい、まさに千差万別の様相を呈して…しかし、ぼくのこれまでの吾が舌体験で言えば、「刺身醤油」に関するかぎり、総じて<東日本>に軍配が上がる。
 決め手は「キレ」だ、色あいでも、味わいでも。
 (いっぽう「煮物醤油」はさすが<関西系>がおしなべて上等)

 これはフシギ、だがゲンジツ。
 ぼく、若い時分には、西へ旅するときにはわが家の「むらさき」を小瓶につめて持参した。いまとなっては、もう、そんなことをするほどのこともない…のだが、それでもたまに…極上の刺身に出逢ったときなど、無性に「むらさき」が恋しくなる。
 味わい好くても、(赤紫の濃すぎる)色あいが…刺身のよさ、鮮度といったものを艶けしにしてしまうからである。

 これについては、どう考えても、文化のチガイとしかいいようがない。
 西日本の、刺身にうるさい料理人はもちろん、食べ幸人たちにしても、なかなかそこまではワカッテもらえない。
 やっぱり「侠」というやつは、「江戸っ子の文化」ってことらしい。





◆現代の「醤油文化」は「正油さし文化」でもある

 ついでに、その話しにも言及しておきたい。

 わが家の醤油さしが、ガラス製から押し出し式の「デラミボトル」になってひさしい。
 それは「液だれしない」清潔指向から、「醤油を食べすぎない」健康指向への推移といっていい。

 「刺身好き」のボクは、もともとが「醤油好き」であって。
 子どもの頃は、コロッケとかの揚げ物なんぞでも醤油さえあればそれでヨカった(ソースなんか要らない)。
 まさか、ドボドボ湯水のごとく…ではなかったにしても、つい注ぎすぎることは多く、垂らして垂らしたりない分を垂らしくわえることがよくあった。
 自覚症状としてはなくても、小さい頃から<塩分過多>だったろうことは察しがつく。

 それが、長ずるに及んでさまざまな体調不良をきたし(もちろん醤油だけの所為ではなかったが…)、ついには動脈硬化から心筋狭窄にまでいたる事態があって、いまは心がけて「減塩」を念頭にする日々。
 塩味からの脱却、素材のもちあじで味わう食意識の構造改革は、おかげさまで進んだけれども。

 なにより、嗜好のうえで大転換を迫られたのが<醤油づかい>であった。
 それは卓上、醤油さしの傾け方、「注ぐ」のではなしに「垂らす」意識改革から始まった。
 醤油さしのあれこれ、容器の大小もふくめてずいぶん試行をかさねたことだった…けれども。

 あるとき、それもつい近ごろ、「デラミボトル」なる革命的な容器の登場で、ついに一気に解決をみた。
 醤油の品質劣化と、注ぎすぎを同時に防止するこの容器の、もっとも優れた点は、すでにそれが製品に施されていること、つまり「醤油さし」そのものが不要になることだった。
 かたちにも気をかける必要がある料理屋ならいざ知らず、家庭にとってはなによりの福音であった。

 フシギなのは、「デラミボトル」を卓上に置くようになってから、醤油の味わいがいっそう鮮明になったこと。極論するなら、その態度「喰う」から「いただく」へ、というほどもものだった。

 さらに、その後には「プッシュ(スプレー)ボトル」まで登場して、ぼくもすぐに試みてみたわけだが…これはザンネンながらいただけなかった。
 なぜ? せっかくの「むらさき」醤油がセツない霧となって散るために、うっかりすると小皿のまわりを汚すことになるからだ。

 ちなみに、「スプレーポンプ」の場合はワンプッシュ約0.1cc、「ドロップ・ポンプ」だとワンプッシュ約0.5ccだそうな。
 減塩の目的はよいわけだから、これはむしろ料理を供する側にこそ、ふさわしいもの…というより。
 (このプシュッてやつは、やっぱり、化粧品なんかにいちばんお似合いなのであった)

 ……………

 そういうわけで、わが家の、いま現在の常備醤油は「弓削田醤油」(埼玉県坂戸)。http://yugeta.com/

 卓上には、デラミボトルの「吟醸純生しょうゆ」200m入りがのっている。

 甘露醤油にもデラミボトルがある…が。
 「ヤマロク醤油」にはまだデラミボトル容器の用意がないようなのが、ちとザンネン。
 木桶の次にはぜひ、デラミボトルを採り入れてほしいと思う。