どこゆきカウントダウンー2020ー

2020年7月24日、東京オリンピック開会のファンファーレが鳴りわたるとき…には、《3.11》震災大津波からの復興を讃える高らかな大合唱が付いていてほしい。

「東京マラソン2018」/           ようやくニッポンの男子マラソンに復活の兆し

-No.1626-
★2018年03月05日(月曜日)
★11.3.11フクシマから → 2552日
★ オリンピックTOKYOまで →  872日








◆スポーツも〝仕掛け〟しだいで流れができる

 平昌オリンピック閉会の25日、日曜日に「東京マラソン」があった。
 2月末に開催されるこのイベント、すっかり、ぼくにとっても〝春迎え〟のレースとして定着している。

 …のだけれども。
 ことしは、風邪っぴきがすっかり長びいて外出を控えてきたせいか。
 (おっといけねぇ)
 うっかり寝すごした駆けあし自慢のウサギが、カメさんに追い越されてしまった気分。

 ちょうどこの日は、地元町田市、市長・議員選挙の投票日でもあったから、朝起きるとすぐに身支度をし、投票をすませたその足で観戦にむかった。

 東京マラソン都心部の、それも目抜き中の〝めぬき通り〟を選りに選って繋ぎあわせた、曲折は多いものの総体に平坦な、好記録の出やすい、よくいわれる「高速コース」である。

 観戦のポイントもしたがって数多く、どこを選ぶかに迷うのも、毎度のこと。
 ことしも迷った末に、第1ポイントに選んだのは、日本橋

 新宿の東京都庁をスタートした選手たちは、皇居の北側をまわって神田から日本橋へ。この辺りで10km。
 前半のコースはここから北へ、浅草-両国-門前仲町を折り返して中間点を迎え、隅田川を渡り返して浜町から、ふたたび日本橋交差点に戻って中央通へ左折、いよいよ勝負どころの30km地点、銀座を目指す。

 ぼくが第1ポイントに選んだのが、中央通、八重洲2丁目と日本橋2丁目の間の、およそ28km付近。
 選手たちを迎える背後には高島屋デパート、という構図。
 中央通の向かい側を選べば、背後に洋書の「MARUZEN」という構図だったが、なんとはなしにマラソンレースには似あわない気がした。

 交差点からわずかな距離の場所だが、観衆は目に見えて少なくなり、大口径のレンズを装着したカメラマンが目立つ。
 アングルのいいところに陣取りをして、ひたすら待つ間に、冷気が沁みてくる。

 この日の天候は、あいにくの、低く雲の垂れこめる寒空。
 勝負はもちろんだが、記録への影響が懸念される。

 選手たちにとってはふつう、気温が上がって暑くなる方がイヤとされるが、あわよくば「世界新」「日本新」のダブル達成をも目論む注目のレースである。
 世界のマラソン界をリードするアフリカ勢の〝ひっぱり〟効果を期待するには、この日の天候は「まぁまぁ」の部類かと思われた。

 寒空のもとながら、観衆の熱気は大したものだった。
 市民ランナーもあわせて3万6000人が駆け抜ける大会は、年々、運営にも磨きをかけ、いよいよ活気をましている。
 地下鉄からはきだされた観衆たちが、ボランティアや係員の誘導にしたがって地下道を急ぎ、地上への階段を駆け上がる。各選手のサポーターたちがその群れを追い越して行く。
 宣伝・広報の対策も、もちろんバッチリぬかりない。

 ぼくは、これほど大規模のスポーツ・イベントとなると、大都市でしか運営できない現実に溜息ものだ。
 「やむをえない」とはいえ、東京一極集中、地方との格差拡大、これでは大きくなるばかりダ……

 事実、「東京マラソン」には、いまの時代と日本スポーツ界の現状を反映した意識と対策が見てとれる。
 まず、「東京マラソン財団」という運営組織のなかに、大会の魅力度アップを演出する「レースディレクター」という存在がある。いわば仕掛け人。

 国内外から有力選手を招待して集め、賞金を提示して、選手のヤル気と観衆の期待と熱気を煽る。
 ちなみに、ことしの場合。

 男子の招待(エリート)選手は、海外から前世界記録保持者を含む強豪アフリカ勢、記録2時間3分台から5分台までの7人。国内招待選手も、昨年も活躍した設楽悠太(ホンダ)くん・井上大仁(MHPS)くんなど11人。女子も同様。
 成績上位者には、1位1100万円から10位10万円までの賞金もでる。これも、女子も同様。

 本番では好記録をひきだすため、3段階のペースメーカーがレースを引っ張る。
 第1ターゲットが「世界記録ペース」の1km2分54~56秒。第2ターゲットが「日本記録ペース」で1km2分58秒。第3ターゲットが「2時間6分台後半から7分台ペース」で1km3分。
 それで男子の場合、「世界記録(2時間2分57秒以内)」がでれば3000万円、「日本記録(2時間6分16秒以内)」なら500万円、「大会記録(2時間3分58秒以内)」なら300万円のボ-ナスがつく。
 それだけじゃない、「日本記録」がでた場合には、その上に「日本実業団陸上競技連盟」からの報奨金1億円まで、おまけが付く。

 つまり、それだけ、全オリンピック競技・全陸上競技のなかでもマラソン(その下地として駅伝ファンが多い日本特有の事情もある)の注目度が高く、にもかかわらず、このところずっと成績が低迷している深刻な背景がある。

 以上のようにトクベツずくめの環境のなかで行われる「東京マラソン」。
 とうぜん、沿道の熱気も年々ヒートアップ、半端じゃないものになっている。

 さて。
 レースは待つことしばし、まず日本橋の交差点を曲って、車椅子マラソンの先頭集団がやってくる。
 「車椅子」といっても、その実態はレーシングマシーンといっていい車輪群が、スピードにのって走りすぎて行く。が、深い前傾姿勢で車輪を操作する選手の表情までは見えず、パラリンピックの映像表現法にはまだまだ工夫の余地があることを痛感させられる。

 遅れること30分ほどで、男子マラソンの先頭集団が近づく。
 先導の記録車に見られる計時は、1時間24分55秒(28km付近)。

「キプサングが棄権したから、世界記録はむずかしそうだ」
 観戦のマラソン事情&情報通が言う。こういう熱いファンが近ごろ、多くなってきている。
 ウィルソン・キプサング(ケニア)は自己記録2時間3分13秒の前世界記録保持者で今大会の優勝候補ナンバー・ワン、その彼が16kmすぎでリタイアしていた。

 しかし。
 …ということは、レースは日本新記録ねらいの第2ターゲット・ペースというところだろう。

 先頭集団には、設楽・井上、期待の両君がくらいついていたほか、つづく第2・第3グループ内には、木滑良・大石港与・宮脇千博のトヨタ自動車勢、神野大地(コニカミノルタ)、市田孝(旭化成)、佐藤悠基・村沢明伸(日清食品グループ)、鈴木健吾(神奈川大)くんらが入っていた。
 まずまず、いいところではないか。

 ぼくは、ここまで見とどけて、第2ポイントの日比谷公園へ地下鉄で移動。
 車内にも、日比谷駅にも、観衆は多かった。

 日比谷交差点が往きは勝負どころの30kmすぎで、エリート選手たちはすでに通過したあと。
 ペースメーカーが外れたこのあたりから、優勝したディクソン・チュンバケニア)がトップ集団から抜け出したらしい。ついていけたのも、同じケニア勢の2選手だけ。
 やっぱり世界は、アフリカ勢は断然つよい。

 日比谷公園の向かい側に出たぼくは、品川まで折り返した選手たちが、東京駅前・行幸通りのゴール目指して戻ってくるのを、日比谷通り越し、公園の緑をバックに迎えるつもりだった、が。ヨミ違えがあった。
 このあたりの道幅が広いことはこころえていながら、道路中央の分離帯に点々と植栽があったことを忘れていた。これが観戦の視界をさえぎる。

 道を向こう側へ渡り返そうかとも思ったが、交差点は通行規制中でグルリと地下を潜り抜けるほかない。
 そうこうするうちに先導の記録車がすぎ、トップのチュンバ選手らしい人影がすぎ行く。足どりは確かなものだ。
 しばらく…2分くらいだったろうか…待って、白い上下のランニングウエア、見覚えのある設楽くんの姿が見えてきた。彼の足どりもしっかりはしている、が、逆転を期するまでの勢いはない。

 勝負どころの30kmすぎで動いたレースは、35kmあたりからチュンバの独走。
 同じ30kmすぎあたりから設楽くんは、ライバルの井上くんに一度は離されながらも踏ん張ったそうな(これもレース事情通の情報による)。
 レース後のインタビューによると彼、スタートまもないレース前半10km付近からですでに右足ふくらはぎを痛めていたようだが、「踏み込むだけでズキズキしたが、よく頑張ってくれた」という。
 もうひとつこれには、「あのシューズがないと走れない」と語ったほど愛用の厚底シューズの効用も大きかったらしい。
 いまのアスリートたちにとっては、ウェアや用具も即成績に響く存在、これもタイヘンなことだ。

 設楽くんは35kmすぎで井上くんを逆転すると、さらにケニア勢2選手をかわしてきたことになる。
 つづいて、3位アモス・キプルトケニア)、4位ギデオン・キプケテル(ケニア)を見送り、5位井上くんまでを見とどけ、ゴール地点と思しき方角からは遠く観衆の歓声が聞こえてくるなか、ぼくは家路についた。

 結果。
  優勝、ディクソン・チュンバケニア)2時間5分30秒。
  2位、設楽悠太(ホンダ)2時間6分11秒(日本新)。
   *レース賞金に加えて、実業団陸連からの報奨金1億円もゲット。
  3位、アモス・キプルトケニア)2時間6分33秒。
  4位、ギデオン・キプケテル(ケニア)2時間6分47秒。
  5位、井上大仁(MHPS)2時間6分54秒。
   *レース賞金にプラス、日本歴代4位の記録および7分をきったご褒美、実業団陸連からの報奨金1000万円を得た。

 なお、2020TOKYO大会マラソン代表選考会「グランドチャンピオンシップ(GC)」への出場権が懸ったこのレース。設楽・井上の両君につづいて、以下の4選手が条件をクリアして出場権を獲得。
  7位、木滑良(MHPS)2時間8分8秒。
  8位、宮脇千博(トヨタ自動車)2時間8分45秒。
  9位、山本憲二(マツダ)2時間8分48秒。
 10位、佐藤悠基日清食品グループ)2時間8分58秒。

 これでGC出場権獲得選手は、すでにすんでいる選考レースの、
  〇大迫傑(ナイキ・オレゴンプロジェクト)、〇上門大祐(大塚製薬)、〇園田隼(黒崎播磨)、〇竹ノ内桂樹(NTT西日本)、〇村沢明伸(日清食品グループ
 以上の6人をあわせて12人になり、まだのこり2つの選考レースもあるから、どうやらカッコウがついてきた感じだ。
 
 だって、「グランドチャンピオンシップ」なんて大見得きった選考レースが、出場選手10にもならないようだったら(あんまり情けない)じゃありませんか。

 やっぱり、なんてったって「馬にニンジン選手にはおカネ」ですかネ。

 ……………

 おカネ…といえば。
 オリンピック選手たちのふところ具合も、帰国してから次々に明らかになり。

 ぼくの知りえた情報だけでも、スピードスケート女子の高木菜那選手に勤務する会社からのご褒美も含めて計6,000万円という、このあたりが最高か。

 いっぽうで。
 同じスピードスケート女子500m連勝中の小平奈緒選手には、相沢病院という地元長野の企業(?)からの心温まる支援(給与・遠征費用など一切を提供、勤務も無し、ひたむきな姿を見せてくれればそれでいい)、イイ話しがあった。

 もう一方では。
 銅メダルのカーリング女子選手5人。ご褒美は1人100万円の報奨金(競技連盟からはなし)と報奨米100俵(6,000kg、1人あたり20俵1,200kg)というのもあって。

 はたして「どれが、どう」と評したらいいのか。
 それぞれの競技団体の財政的土台や台所事情なんかも知れたりして、なにしろ、いろいろと考えさせられたこと、デシタ。