-No.1537-
★2017年12月06日(水曜日)
★11.3.11フクシマから → 2463日
★ オリンピックTOKYOまで → 961日
◆9月6日(水)朝、太平洋の朝陽が金色に燃えた
きのう10日目の宿りは、譜代村営の国民宿舎くろさき荘。
近くにキャンプ場もあったが、幕営地を移動してのテントの連泊はこたえる。
それに旅の空も長くなり、さすがに疲労が身体に浮いてきていた……
国民宿舎というのは、かつて「ディスカバージャパン」の一時代、庶民の観光旅行熱をささえたリーズナブルな宿泊施設だった、が。
その庶民の旅も、まだ未熟とはいえそれなりに成熟してきたいまになってみると、さすがに「お疲れ」が正直な感想。
経営形態もサービスも考えなおさないとイケナイ存在。
それは、ともかく。
観光ホテルにつきものの「おみやげショップ」コーナーもない、食堂の入口脇に、簡素な白いシーツ掛けのテーブルがひとつ。
そこに、三鉄(三陸鉄道)銘菓「赤字せんべい」200円のささやかな陳列があって。
ふしぎな同情心をかきたてられて買い求め…(こんなのも有りか)思わず天井を仰いでしまった。
……………
翌朝。
いつもの癖で早暁に目覚めたぼくは、まだ暗い窓の外を眺めて、もちこみインスタントのコーヒ―タイム。
このいっときがスキだった。
黒崎は、北山崎(田野畑村)の大断崖台地の北の外れ。
高い断崖の縁ちかく建つ宿からは、距離感を曖昧にする太平洋の大海原と雲の広がりが、ある予感に充ちていた。
予感は、いうまでもない朝陽。
厚い雲の壁の一部が、ほんのり(カーテンのすきまのような)明るみをおびてくる。
朝早い鳥たちの影が、三々五々、餌場を目指してゆき。
やがて、赤みをおびた鬱金〔うこん〕色の陽が目覚めてくる。
まだ眠たそうに欠伸かみころす風情で、しかし、やがて思いなおして諸手をつきあげる。
「起きるゾ」
ぼくも、それにこたえて、朝一番のスタート・モードに入るのだった。
宿の朝食をすませ、少し黒崎を歩く。
この黒崎一帯にも「みちのく潮風トレイル」がつづいているのだけれど、ちょうど北緯40度に位置するというアンモ浦展望台へ。
断崖の高さは、およそ150mくらいだろうか、しかし…展望台へは急坂の階段を50mくらいも下ってたどり着く。
遥かに茫洋と開ける大海原を眺めて、吹きくる風にふと秋の匂いを嗅ぐ。
海景はすばらしかった…が…もどり道の急登に息が喘ぐ。
アンモ浦の「あんも」には、この地方の幼児表現で「妖怪」の意味があるそうだが、なるほどそんな感じに目眩〔めくるめ〕くような。
ぼくたち、きょうはこの先、青森県へ。
下北半島の下風呂温泉まで行って、津軽海峡に出逢う。
この旅も、いよいよ終盤の長駆であった。