どこゆきカウントダウンー2020ー

2020年7月24日、東京オリンピック開会のファンファーレが鳴りわたるとき…には、《3.11》震災大津波からの復興を讃える高らかな大合唱が付いていてほしい。

《11.3.11》被災地東北、18次<巡訪>/ ㊳10日目(3)北上高地〝らしい〟山地放牧場へ  今回のテーマ[つぎのステップにむけて]

-No.1531-
★2017年11月30日(木曜日)
★11.3.11フクシマから → 2457日
★ オリンピックTOKYOまで →  967日
















◆9月5日(火)、岩泉町「中洞牧場」

 龍泉洞から、いよいよ岩手・岩泉の「北上高地」山中深くへと分け入った。
 カーナビのありがたさが身に沁みた。

 ぼくは、2台前の自家用車までカーナビとは無縁でいた。
 「カーナビなんか付けたら地図がヨメなくなる」
 それは事実で、カーナビをうまく使いこなせるようになったいまでも、この持論にかわりはなく、かならず別にロードマップを持参、いつも確認しながらドライブの習いである。

 しかし……
 地元を遠く離れたとき、分かりづらい道を尋ねたいのに、その肝心の人気がない場合の難儀は以前から感じており。
 その傾向がいまは、ますますつよくなって、夜道になった場合などカーナビなしではほとんどドライブ不能といってもいい。

 カーナビに指示した位置情報は「中洞牧場」。
 所在地は、岩泉町上有芸水堀。
 ほとんど、人家など絶えてなさそうに(地図では)見える、山中もいいとこ。
 いちおう県道(宮古岩泉線)になってはいるらしいのだが、一部には未舗装のラフロードもあるようだった。

 いっぽうで、どんな田舎道にも道路整備の進んだいま現在、県道クラスと区別のつかない小道も数多あって、うっかりすればすぐ迷いこみ。
「えーと、いまボクたちは、何処にいますでしょうか…どうぞ」
 といった情けない状況に陥る。

 走った距離はたいしたことはなかったのだけれど、おそろしく時間をくう。
 道に沿った川筋のあちこちで、昨年の豪雨禍であろう、河道と道路の補修とが未だ行われており、それが道路情報がわりになってくれたりした。
 つまり、少なくとも〝通行不可〟ではなかったのが、せめてもの救いというか、慰めというか……

 きっと、もっとずっと以前、初心ドライバーの頃だったら、途中で前進をアキラメていたにちがいない。
 空が晴れていなかったら、にわか雨でもパラついてきたら、それが「やーめた」の言い訳になったことだろう。
 少し行って……またもう少し行って……ほんとアキラメる寸前に、それらしいところに着いた。

 出迎えてくれた、子牛たちと産後まだ間もないらしい母牛と、くらい。
 牧柵のなかに牛の姿はなく……

 なだらかというより少しきつめの草っ原を、向こうに広がる空の方へと目を仰向けると、その天辺あたりに1頭の牛、草を食んでいるらしい姿が見えた。
 北上高地の、大空をバックに、牛に後光が射してみえた。

◆山地〔やまち〕酪農…!?

 〝山の放牧〟を知ったのはテレビのドキュメンタリー映像。
 山地に牛を放牧して春から秋までを自由に育て、冬の厳寒期のみ麓の牛舎に戻す…たしか、そんなサイクルの話しであったと思う。
 ぼくには、その姿がよかった。牛のよろこんでいるのがわかった。

 それで、ネットで調べて、ここにやってきた。
 牧場スタッフの、その名も牧原さんにお話をうかがう。

 「牛舎のない牧場」をなのる中洞牧場の、広さは50ヘクタール、そのすべてが北上高地のうねり連なる山地。
 牛はジャージー種を主に80頭ほど。
 テレビで観た状況とちがっていたのは、年中昼夜をとわず自然放牧ということ。
 牧舎は搾乳のためにのみあり、それも牛たちが自主的(?)にもどってくる、と。

 ちなみに、牧場のスタッフはアルバイトも入れて現在16名とか。
 といっても牛は放し飼いがベースなので、スタッフの労力は牛の<世話>よりも牛乳の<加工・商品>化に向けられている。
 駐車スペースに並ぶ車のナンバーを見ると、ほとんど全国区。ぼくたちと同じ町田市の出身者もいた。

 なかでも近ごろは、女性の自然環境<現場>進出が目覚ましい。
 すでに<林業女子>があり、いま岩手では<牛飼い女子>グループの誕生がつづいている、ともいう。

 ぼくは、これはボクらの世代からあった自然志向の半端ではない一定層、それが連綿と絶えることなくつづいている事実と、それに<女子>のより積極的な参入があることが、もっと頼もしい。
 ケッパレ(がんばれ)、かがやけ、将来の<牛飼い母ちゃん>たち!

 牧場スタッフおすすめのビーフカレー、昼食のあと。
 牧場長の中洞正さんにもお逢いできた。

 数千万円の借金をしてとりかかった山地(やまち、と読ませる)酪農。
 「借金が力になった」と中洞さんは言うが。
 ともあれ2012年にオープンした牧場は成功をおさめ、いまは「牧場体験」のほか「山地酪農研修」、「企業農業研修」の施設を併せ持ち、中洞さん自身、全国各地へ講演に招かれる日々。

 その基本コンセプト。
  ➀牛舎不要
  ➁給餌不要(農薬使用の牧草によらず、牛は野シバを喰んで育つ)
  ➂人工授精不要(自然繁殖)
  ➃糞尿処理不要(糞尿はそのまま高地植物の肥料になる)
  ➄削蹄不要(よく歩くことで牛の蹄は自然に摩耗、あわせて運動による体力向上にも)
  ➅クスリ不要(健康でつよい放牧牛は病気にかかりにくい、それは牛乳の質も味わいも佳くする)
 ついでに、
  ➆牧場はエネルギー自給体制でもある。

 中洞さんの、会話をしながらの視線が、ときおりに窓外の牧野の上に向く、そのさきに北上高地の空が広い。
 (中洞牧場https://nakahora-bokujou.jp/

 ……………

 その後、宅配をお願いして送ってもらった牧場の牛乳やヨーグルトを東京で味わい。
 すると、山地放牧の、健康牛の美乳が澄んだ岩泉の空を彷彿とさせ。

 また、さらにその後、中洞牧場のfacebookページには。
 10月30日「初雪」、11月16日「積雪」の記事があった。
 もちろん、牛たちはいまも山地〔やまち〕にいる。