-No.1387-
★2017年07月09日(日曜日)
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◆虫たちにゴクロウさま…
〽夏もちかづく八十八夜 野にも山にも若葉がしげる
ことしの、その日5月2日火曜日は、晴れて気もちのいい日和りであったと思うのだ…が。
たしか、その週末あたりからは暑いくらいの日、夏日が多くなって、水不足を心配するほどの空模様になった記憶がある。
ぼくは「お茶」というより、茶の木の「葉っぱ」、なかでも「新茶」と呼ばれる「若葉」の萌え黄を好む。
静岡など茶どころの生まれでもないのに、どうしてそうなったのかはワカラない…が、この若葉を見ると無性に噛んでみたくなるのは、やはりニッポン人だからだろう、としか思えない。
「月の雫」と呼ぶ、若葉が朝露をもらったようすも清清しくていい。
ごくゆ~っくりと揺らすようにするといい、あまいお茶の淹れ方を、これは朱泥に似た急須の産地佐渡、無名異〔むみょうい〕焼の里でじっくり教わったのだけれども、根がせっかちな性質だからついに身につかなかった。
茶のよしあしは抹茶もふくめ、こころしていただけばワカル…が、それよりも、なんの気なしにいただいてその佳さに気づく、くらいのさりげなさが好ましい。水だしのお茶が、いちばんそれに近い。食してうまい茶葉もある。
そんなボクが、「無農薬茶づくりの百姓」と称する人に出逢って、あらためて茶に目覚めた。
葉っぱから直に抽出する茶に農薬はマズかろう…ことに、ほとんど正面衝突だった。最高にうまい茶の「一煎め」にいちばん農薬が出る…事実に唖然であった。
その人の茶畑で、茶葉の収穫を手伝わせてもらった。
茶の木を植え並べた畝の土がフカフカやわらかだった。「茶草」と呼ばれる敷き藁ならぬ敷き草。このおかげで土を踏み固めてしまうことなく、乾燥もふせいで畑の生態系をも守れる。
虫が多かった。アブラムシやバッタなどなど。テントウムシが「ここだよ」とアピールし、蜘蛛の巣も張っていた。
無農薬にして数年は茶葉の虫喰いがひどくて飲めたものではなかった、話しを聴いた。
それからは、「茶摘み」の場面になると自然に目が吸い寄せられる。
八十八夜から1ヶ月以上がすぎて、茶屋の店頭にも「新茶」が顔をそろえた今年。
日除け帽子を被った女性たちが茶畑で、黒い手袋をしたような手で、茶の若葉を撫でるように、軽く叩くようにも見える按配に触っていく。
見るからにウマそうな茶の若葉には、たくさんの虫たちが集まる。その〝虫喰い〟を競う害なす虫たちを迎え撃ち、好んで食べてくれるカマキリやテントウムシたちも、とうぜん多い。
茶葉収穫の場面にナレーションがかぶさる。
これら益なす虫たちを茶摘み機から守るために、この作業はあるのだ、と。
人の手が近づくと、虫たちは茶の木の下枝の方に移り隠れる、それで茶摘み機に刈り捕られることがなくてすむ。
「これには、茶葉を守ってくれた虫たちにアリガトウと、お礼の意味のあるのです」
茶農家の方の口ぶりやさしく、ぼくはジンと身に沁みてしまう。
「知覧茶」と呼ばれる銘柄がある。
特攻隊の基地として知られた鹿児島県南西部、開聞岳を望み見る薩摩半島の知覧町(現在は南九州市)。
心あたたまる映像は、その町の茶畑からのものだった。
ちなみに、これはあまり知られていないかと思う、鹿児島県は静岡県に次いで第2位(市町村単位では南九州市が緑茶の生産量全国一)の〝茶どころ〟である。
郷士屋敷が集まる麓集落の町並みは、道にゴミひとつない清々しさであったことを、想いだして……ぼくは。
さっそくネットの、ふるさと通販ページに購入を申し込んだ。